クローズアップ現代「介護からの“卒業式”」 2014.05.13

おめでとうございます。

81歳の春。
介護保険から卒業です。
今、介護サービスを使う状態から卒業し自力で生活しようという人たちを支援する動きが広がっています。
元気な高齢者が先生になってご近所どうしで体力作りをする介護予防。

すでに地域にある施設や人材を生かした生活支援。
こうした取り組みの背景にあるのは保険制度を揺るがす介護財政の悪化です。

自分らしい暮らしを全うするために大切なことは何か。
どうすれば制度は持続できるのか。
地域の模索を伝えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
2000年に導入された介護保険制度は今、大きな転換期を迎えています。
国民の4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎え介護保険にかかる費用はご覧のように上昇を続けていまして10年後には20兆円を突破する見通しです。
制度を支えるために40歳以上の人々が負担する保険料も、ご覧のように現在平均5000円。
10年後には8000円に上昇する見込みです。
こうした中で国が進めているのが過去最大規模の制度の見直しで目指しているのが効率化と重点化です。
サービスを受ける対象を絞り込む一方で介護の必要性の高い人には集中して提供するという方法です。
今夜お伝えするのは比較的症状の軽い要支援の人たちを対象にした介護予防の見直しです。
いったん要支援と認定されたお年寄りが、もう一度自立した暮らしを取り戻すことができるようにするためにはどうすればいいのか。
生活機能の回復を重視した積極的な取り組みによって要介護認定が下がったり自立できるようになって認定の対象にならなくなった人が次々に出ている自治体から見えてくるのは新たな制度の可能性です。
国の見直しでは介護予防の一部を市町村が主体となる事業に移管しようということが検討されているだけに自治体の姿勢が問われることになります。
自治体の財源が乏しい中安易なサービスの削減や支援の切り捨てにつながらずにお年寄り一人一人の生活の質の向上にどうやってつなげていくのか。
地域の積極的な介護予防の取り組みをご覧いただきます。

東京のベッドタウン。
およそ8万人が住む埼玉県和光市です。
この日、市内のデイサービスで毎月恒例のあるイベントが行われました。
木絢子さんです。
皆さん、拍手お願いします。

81歳の木絢子さんです。
去年3月、自宅で転倒し左足を骨折。
歩行が困難になったため要支援2の認定を受けてデイサービスやヘルパーを利用してきました。

市の支援プログラムで念願だった買い物に再び1人で行けるまでに回復した木さん。
その結果、先月要支援の認定がなくなりました。

取り組みを始めた市の保健福祉部長東内京一さんです。

和光市では今後10年で介護を必要とする人が倍増すると見られ何も手を打たなければ制度を維持できなくなるおそれがありました。
そのため市では状態の改善が見込まれる人たちを積極的に支援。
毎年およそ4割の人が要支援の状態から卒業し自立への復帰を果たしています。

和光市では、卒業に向けてどのような支援を行っているのでしょうか。
ことし3月新たに要支援2に認定された松田洋子さん、80歳です。
3年前、頭の病気で入院。
その後、足がふらつくようになり家事のほとんどを夫の嘉次さんに任せています。
市が行う取り組みの第一歩が聞き取り調査です。
この日市の委託を受けた相談員が松田さんを訪問しました。

よろしくお願いします。

相談員で保健師の冨岡さんです。
松田さんから今の暮らしぶりを聞き取りながら自立の可能性を探ります。

冨岡さんは歩く力を強化できれば介護保険のサービスに頼らなくても自立した生活が送れると考えました。

相談員が調査して作った支援計画は市役所で徹底的に議論されます。
毎月2回開かれるコミュニティケア会議。
ここで新たに認定された要支援者全員の計画を検討し磨き上げます。
メンバーは市内すべての包括支援センターのスタッフと看護師や理学療法士そしてヘルパーなどです。
通常、支援計画は地域包括支援センターの相談員が作成して実行に移されます。
しかし和光市ではほかのセンターや専門家を交えて徹底的に検証。
よりよい介護方法をアドバイスしたり事業者側の思惑でサービスを過剰に設定してかえって自立を妨げていないかチェックし合うのです。
この日は、冨岡さんが松田さんの歩く力の強化を中心とした支援計画を報告しました。

別のセンターの相談員から生活に張り合いを持ってもらうため具体的な目標を示しては?と意見が出されました。

管理栄養士からは松田さんが大好きだった買い物を通じて歩行を促すことができるとアドバイスが続きます。

冨岡さんは会議のアイデアを盛り込んで作り上げた計画を松田さんに提案しました。

具体的な目標ができると松田さんは前向きに変わり始めました。
この日は初めてのデイサービスです。

こんにちは。
お願いします。

ここでは、ほかの人たちとただ時間を過ごすだけでなく足腰の筋力アップに取り組みます。

ばっちりです。
これをねぐっと押してみてください。
こう?
そう!せーの、1、2、3…。

理学療法士がスポーツジムさながらの機械を使って歩くために必要なトレーニングを行います。

すばらしい。
しっかり効いてます。
ありがとうございました。

さらに和光市では卒業後の受け皿も整えています。

せーの、よいしょ!いいですね!
4月に介護保険から卒業した木絢子さんです。
先週から、市が開いている無料の介護予防プログラムに参加しています。

さっきよりいいです。
できてる、できてる。

再び悪化して要支援に戻らないよう支援策が整えられているのです。
介護からの自立を支援する和光市の取り組み。
市の介護保険料と認定率は国の平均を下回っています。

今夜は新潟県長岡市で要介護の高齢者を支えを、地域で支える取り組みを続けてらっしゃいます小山剛さんにお越しいただきました。
1年後、お友達とお食事をすることを目標にされた松田さん。
そしてご自身で買い物に行けるようになった木さん。
本当に皆さん、いい表情をしていたのが、とても印象的なんですけども、やっぱり、自立支援の取り組みで40%の方々が卒業していったって、これは支えてきた立場からご覧になって、どうですか?
すごいすばらしいことだと思いますね。
要支援とかレベルの軽い人たちっていうのは、実はモチベーションというのかな、使う場所がだんだん減るんですよ、老後になって。
仕事がなくなって、家族の中の役割もなくなってきて、引きこもりに近いんですけれども、うちの中でほとんど過ごすようになる。
そうすると持ってる能力が使えない。
そういった中でこの取り組みは、本来持っている能力を、筋力もそうですけども、もっと使おうよという動機づけをしてくれたところがすごく意味があるんですよね。
皆さんはそのことによって、社会に出れるようになって自信を取り戻していったと思うんですよ。
私にはまだこんなことができる。
そういった意味で卒業ができるっていうのは、すばらしいことだというふうに思います。
卒業したあとも、公的な支援で、サポートが続いている木さんのケースがあると、これまた、安心ですよね。
そうですね。
こういうのはやっぱり、継続は必要で、一つの段階を越えたら、また次のステップを踏もうとか、その次のまた目標を作ろうとかっていう、すごい前向きな話ですよね。
だからそれを途中まで、行政が支援していただいて、そのあとはまたみんなのチームでというか、仲間内でともにグループを作ったりしながら、また続けていくっていうふうにつながっていっているところなんですね。
だから、自立支援をきちっと予防の方向へ、向けてやってみると4割の方が卒業できたってことは、今までのやり方は、要支援の在り方っていうのは、どうなんですか?これは。

これはたぶんに誰かに、いわゆる高齢者の皆さんに、何かをしてあげることがいいことというふうな評価を受けてたと思うんですね。
だから優しくしてあげるとか、何か手伝ってあげるとか。
でも、もしかしたら、それは本人が歩ける能力を、手を引いてあげるからとか、ごはんが作れるのに作ってあげるからとか、っていうことになると、持ってる能力は使えなくなることですから、逆にいうとそれみんな、隠れていった。
そういうことが今までの欠点だったかもしれないです。
それを今回の取り組みで、できることを、できることをというふうに引き上げていって、元に戻っていったということじゃないでしょうかね。
きちっと能力を評価して、そして、その事業を提供する側も、意識がないと、そういう方向には行かないわけですよね。
今までは、そういうなんでしょうか、事業者、あるいはサービス提供をする側にとっての、十分な動機づけはあったんでしょうか?
介護保険の仕組み自体は、それこそ、いいことをしてあげるといいという、皆さんの共通認識で動くわけだし、善意でやったはずなんですけど、そのことによって、もしかしたら低下していく、低下すると介護保険には上がるという仕組みになるんですよ。
だから事業者の側からすると、一生懸命、例えば訓練しなさいとかっていうと、なんかつらそうに思えるし、そのことで元気になると、実は収入は逆に減っていくっていう、そういう逆転の話になってたところに、今回、行政が責任を持ってやるということになると、行政がこの取り組みに手を出すということは、行政にとってインセンティブが働くんですよ。
いわゆる、元気になると保険料がいらなくなってくる。
それは保険者にとってはいいことですから。
利用者も元気になっていいわけですから、そういった意味では、非常にいい取り組みだというふうに思ってるわけですね。
そして、いろんな自治体の中の包括支援センターのいろんな方が一緒に集まって、そして職種の違う方々も集まって、きちっと評価をするっていうことですよね。
そうですね。
今まで評価の方法、どちらかというと、ケアプランを作るケアマネに任せているようなところが実際はあったわけですけど、今回の仕組み変更を予定しているのは、より多くの、例えば和光の実績で見られるように、大勢の専門職、いろんな職種の人が科学的に評価をして、大勢のチームで客観化する、そういったことによって、本当のサービスが、何が必要かっていうことが見えてくると思うんですね。
ただ一方で、自治体が簡単にサービスを減らそうとか、あるいはこの支援から切り離そうとしたときは、これはお年寄りにとって不利益になりかねない、きちっとした予防の取り組みもできなければ。
だから、本当にこうしたことがきちっとできるようになるためには、自治体には何が問われていますか?
これはもう完全に、マネージメント力とリーダーシップですよね。
先ほど言いましたように、本当に必要なのか否かということを、きちんと評価できるグループがいないと、個人の主観で動くわけじゃありませんから、この人にとって本当にハッピーは何かということをしっかり科学的に、客観的に評価をして、取り組むということだと思います。
そういう能力は自治体には備わってますか?
いや、あるところとないところがあって、今現在はそういう格差が出てるとは思うんです。
だけどこれから本当に自治体も性根を据えて、そういった人たちを自分の中に育てるということをやっていかなければいけないと思います。
続いてご覧いただきますのは、すでにある地域資源を活用して、要介護状態に陥らない、高齢者を育成するという、取り組みをする自治体の姿です。

高齢者を地域で支える仕組み作りに取り組む長崎県佐々町です。
町は介護予防の担い手としてボランティアの育成に力を入れています。
参加者は全員65歳以上の元気な高齢者です。
佐々町は20%を超える高い要介護認定率が続きました。
そのため介護保険料は県内で最も高いおよそ6000円です。
そこで町は介護保険情勢の厳しさを伝え元気な高齢者にボランティアを呼びかけたのです。

ボランティアが担う介護予防のプログラムはさまざまです。
こちらは週1度開かれる男性のための料理教室。

栄養のバランスをとるだけでなく人との交流を保ち手足を動かして料理することが認知症の予防につながることを期待しています。

1、2、3、4。

体操教室の参加者の平均年齢は77歳。
最高齢は92歳。
元気いっぱいです。
先生は元看護師のボランティア宮島初枝さん、73歳です。
高齢のボランティアの存在は参加者の間に予想外の効果をもたらしています。
先生役の住民が元気に活躍する姿に自分も元気でいたいという意欲が刺激されるのです。

こうした取り組みの結果佐々町では認定率が4年で5%以上減少しました。

介護予防のため住民が率先して地域の課題や解決策を探っているのが三重県伊賀市です。
活動の中心になっているのが小学校の校区ごとに設置されている住民自治協議会です。
自治会や老人会民生委員だけでなく住民であれば誰でも参加できます。
協議会では介護サービスに入る一歩手前の見守りや外出支援など生活支援のニーズを掘り起こします。
そして企業やNPOなど解決能力を持つ団体に結び付け課題を解決していきます。
公共交通機関がないため高齢者が引きこもりがちになり認知機能の低下が心配されていた地区です。
ここでは介護施設の車が昼間、送迎の仕事がほとんどないことに目を付けました。
施設とは関係ない住民がスーパーや病院へ行くために無料で利用させてもらうことにしました。
こちらは認知症の人を見守るボランティア。
担当するのは認知症の親を介護した経験を持つ住民などです。

介護予防に、地域の元気な高齢者の方々をボランティアとして活用するっていう、これは本当に地域全体が元気になるんでしょうね。
大切なことですよね。
今、要介護認定というのが、大体高齢者の2割ぐらいなんですよ。
そうすると、8割は元気なわけですよ。
その8割の元気な人たちが、職場を退職されたあとの生活の中のモチベーションを高める方法として、そういった活動に入っていったら、残された8割の人たちの力って大変大きいですから、そういう人たちもすごく役に立つことだというふうに思います。
それを社会福祉協議会という地域の役割がありますので、ちゃんとまとめて支えてくれたらいいなというふうに思っています。
ボランティアを組織化したり、意識を変えたりするうえで、社会福祉協議会が大事だと。
2025年に向けまして、本当、団塊の世代が75歳になると、本当に大介護時代を迎えるといわれていますけれども、こうした介護予防、そして地域の力を生かせるようになることによって、どういう大介護時代という絵が描けますか?
冒頭にありましたように、予防することによって、介護から卒業する、その卒業することによって、介護費用がより重い人たちに、配分することもできる。
動いている人たち自身のモチベーションも高まって、自信もつく。
ただ、これから人材のことを考えると、高齢者の人になんでもかんでもやってくださいじゃ無理なんですね。
やっぱり、若い人がやる分担と、それから高齢者の人が受け持てる分担、そういったものをうまく使い分けて、全体でどうやって支え続けるんだというやり方に取り組むときに、やっぱり地域の中でっていうのは、すごい重要なことですし、それぞれのモチベーションを高めるということもすごく重要な話だと思いますね。
具体的に例えば、高齢者の方が介護施設の中で、何か、やっぱり役割を担うってことですか?
そうです。
高齢者の方だからできる、同世代だから分かる、あるいは軽介護のことはできる。
できることはいっぱいあると思います。
そういうふうに役割分担をきちっとしていくことで、人材も足りない、財源も不足して2014/05/13(火) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「介護からの“卒業式”」[字][再]

介護保険改革が進むなか注目を集める和光市の“介護卒業”。要介護認定を受けた人の介護プランを見直し、身体機能を回復させて自立を促す取り組みだ。可能性と課題を追う。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】高齢者総合ケアセンターこぶし園 総合施設長…小山剛,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】高齢者総合ケアセンターこぶし園 総合施設長…小山剛,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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