NHK短歌 題「ガス」 2014.05.13

ご機嫌いかがでしょうか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者斉藤斎藤さんです。
今日もよろしくお願い致します。
今日も冒頭の一首変わってますね。
パチンコに集中していたらいきなり隣に人が座ってきたというそれだけの歌ですけど。
でもそれ普通でしょ。
はい普通ですね。
パチンコ屋っていう歌にしては違和感のある言葉は下に持ってきた方がいいよというお話を「入選への道」のコーナーでさせて頂く予定なので。
結句が「パチンコ」で止まってるという事に何か深いお話が。
期待をしたいと思いますね。
どうぞよろしくお願い致します。
では今日のゲストをご紹介致しましょう。
すばらしいゲストをお迎えしました。
ご紹介致します。
クリエイティブディレクター箭内道彦さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
箭内さんは福島県ご出身です。
CMプランナーとして数々のヒット広告を生み出されフリーペーパーの発行あるいは数多くのイベント開催など多岐にわたってご活躍中でございます。
また現在東日本大震災後のNHKEテレの番組「福島をずっと見ているTV」にもご出演中ですがこうしてご紹介しただけでもご活躍のフィールドが大変ウイングが広いわけですけれどもね今力を入れていらっしゃるのはどういう事ですか?この瞬間はこの番組「NHK短歌」です。
「NHK短歌」に全力投球。
はい。
いや〜力入ってますね。
楽しみですね。
全部僕にとっては広告なんですよね。
CM作る事だけじゃなくここも広告なんじゃないかなと思って来てます。
斉藤斎藤さんは箭内さんの事をどういうふうに見てらっしゃる?広告のクリエーターの方というのもそうなんですけれども「福島をずっと見ているTV」とかあと猪苗代湖ズ。
バンドですよね。
ステージの上でテンションが高いところも見させて頂いてます。
箭内さんのファンなんですね。
無理やり言わせてないですか?短歌の番組にお迎え致しましたが箭内さんと短歌はてどのようなご縁が?ほんとに国語の教科書以来ですね。
でも広告の仕事ときっと何かの共通する部分があるんじゃないかなと思って楽しみにして今日伺いました。
いつもゲストにお迎えしてる方に短歌ってどんなイメージですかって短い言葉にして頂いてるという事なんですが箭内さんはどんな言葉になるでしょう。
実は…本当に申し訳ありません。
まだ言葉になっておりません。
「短歌は空白…」。
今日この時間の中で考えていけたらなとそれを自分自身楽しみにしています。
斉藤斎藤さんからもインスパイアされてどんな言葉がここに入ってくるか楽しみですね。
どうぞよろしく後ほど楽しみにしております。
それでは今週の入選歌のご紹介を致しましょう。
題が「ガス」または自由でございました。
斉藤斎藤選入選九首です。
一首目。
早速箭内さんいかがでしょう?この歌は。
好きですね。
まずガスコンロで線香って僕もやった事があるからすごくすっと入っていけたのとこの方は今はもういなくなってしまった人の小言を聞きたくてこのガスコンロで線香を毎日点し続けてるんだなと思います。
いない人の声を聞くってすごく大切な事だなと思います。
斉藤さんどう読まれましたか?線香をガスコンロでつけるっていうのが日常のちょっと雑な仕草なんですね。
普通はちょっと横着だよととられがちな事ですよね。
それが「今朝も」というところと亡くなられたんだけど家族としゃべってるような日常の感じが出てていいんじゃないですかね。
「今朝も小言を聞きぬ」いつも拝んでらっしゃるんですね。
では二首目です。
これは阪神の大震災を経験された方なんですかね。
自分の家がそこまで壊れたわけではないんだけれども自分の住んでいる親しんできた町が壊れてしまったという事ですね。
それが五七五七七からかなり外れたガタガタとしたリズムという壊れてしまった町の記憶が今もずっと残っておられるのかなという感じがしました。
それでは三首目にまいりましょう。
さあ箭内さんこの歌どんな感じでしょう?「そりゃおいしいね」ですよねやっぱりこの歌は。
「ガスがボーと伸び縮み」っていうところで冷静に見ていて鍋じゃなくて「おなべ」って丁寧に言葉を選んでだけど最後の「そりゃおいしいね」ですごく自分の気持ちが前にストンと出てくるっていうのすごいすてきだなと思いました。
斉藤さんは?何かこう生き生きしてますよね。
「ガスがボーと伸び縮みして」っていう「ガスがボーと」というところも「おなべの底」も6音で字余り字余りなんですけど生き生きしたリズムが下の「そりゃおいしいね」にストンとつながってくる感じがしていい歌だと思いますね。
結句「そりゃおいしいね」とこれ非常に印象に残りますね。
こりゃもう1回こっきりの表現だと思いますけど。
このパターンってなかなかたくさん作るの難しいでしょうかね。
それでは四首目にまいりましょう。
仕事始めのピリッとした空気と誰もまだいない出勤したてのガランとした職場でとにかく火をつけるという仕事始めの緊張感と寒いからそのルーティーンを前倒しする感じというか下の句がとても良いと思いましたね。
社員食堂は広いんでしょうね。
だだっ広くて寒いという感じがよく伝わりますね。
さあそれでは次が五首目です。
今回お鍋焦がしちゃった系の歌がわりと多かった。
「ガス」という題でね。
この歌四句目がとてもいいですね。
「青くむくれて」というトロトロとずっと弱い火で豆を煮ていたと思うんですけれどもその火と豆のつながりが「むくれて」というところでつながってくるというところで火の描写がとてもいいと思いました。
大変な事になったでしょうねお鍋はね。
さて六首目です。
この歌は箭内さんどう読まれました?これはこれからの予定を話してるんですけど何ていうのかなだけど今に対する愛おしさも感じたんですよね。
不便だったり匂ったりというところとこれからの自分への期待とぐっと来ましたね。
斉藤さん。
引っ越して間もなくは旅先のような感じがありますよね。
この部屋大丈夫なのかという過敏になっている感じとか…。
この湯沸かし器大丈夫なのかしらとかちゃんと働いてるのかしらとかいろいろありますよね。
新しい生活が旅のように感じられる空気もとてもうまく切り取られてると思います。
それでは次七首目です。
これも箭内さん伺いましょう。
きれいですね。
ガスを熱や炎じゃなくて光というふうに捉えてて冷凍鍋焼きうどんのアルミの銀色って最初真っ白なんですよ。
凍っていて。
そこに青い光が当たって少しずつ銀になっていくんですグラデーションで。
何かその瞬間をすごく僕は感じますね。
かなり冷凍鍋焼きうどん食べ込まれてますね。
おいしいですよ。
これは相当観察してますね。
また食べたくなります。
色の変化もあるんですね。
この歌最初に読んだ時「ガスコンロの青い光に」とか鍋を火に掛ける感じの流れを出した方がいいんじゃないかと思ったんですがこの歌は「と」なんだと思うんですね。
それは何でだろうって思ってたんですけど今おっしゃったように凍ってる鍋がちょっととけて銀色に変わっていく一番美しい瞬間をこの歌は捉えているのかなと。
「と」の所にちょっとした時間が隠されてるんですよね。
やっぱりこの歌は「と」じゃないといけないのかなと今お話伺って思いましたね。
深いですね〜冷凍鍋焼きうどん。
秘められた深さがよく分かりましたね。
では次八首目です。
「スプレーガス」っていう言い方がいいんでしょうね。
あんまり使わない言葉だと思いますけれども「スプレーガスの威力に悔いぬ」っていうこの流れが自分が何の気なしに発射した殺虫剤の思わぬ威力自分の中の隠された暴力性みたいなのに気付いてしまったという事でしょうね。
さあではおしまいの歌九首目です。
何でガス台の下で生まれたのかちょっとした謎がありますけど「腹の白さよいよいよ白し」という4句目と5句目の間に繰り返し繰り返しおなかをなでてきたような信頼というか繰り返しの時間の長さみたいなものが含まれていていい歌だと思いますね。
この三毛ちゃんと過ごしてきた年月が感じられますよね。
以上入選九首でした。
ではこの中から斉藤斎藤さんが選んだ特選三首です。
まず三席の発表です。
鈴木直子さんの歌です。
では二席です。
南野真由子さんの歌です。
それではいよいよ一席の発表です。
齋藤とし子さんの歌です。
とにかく下の句がかっこよかったですね。
仕事始めの日常の動作をちょっと前倒しするという仕事始めのピリッとした空気が伝わってくるような歌でした。
以上今週の特選でした。
今回ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」のテキストにも掲載されます。
是非テキストもご覧下さい。
それでは「うた人のことば」ご覧頂きましょう。
岡部桂一郎さんの歌は簡単な言葉による深い味わいが特徴と言われてきました。
自分の家から出ていった道がどっかへ入っていくと。
これは私の実際の話です。
続いて「入選への道」のコーナーです。
たくさん頂戴するご投稿歌の中から手を入れると良くなるという歌を取り上げますが斉藤斎藤さんは通常の添削とは違って改を生かした「改作」を試みられます。
どのように歌が変貌致しますか斉藤さん今日の歌をよろしく。
はいこちらの歌です。
ガスタンクってちょっと懐かしさのあるものでそれを故郷と結び付けたところはいいと思うんですね。
ただガスタンクっていうのがこの歌でいうとポイントというか言ってみればオチのようなものだと思うんですけどそれを前の方に持ってきてしまったので後ろがそのオチの説明みたいに聞こえてしまうところがあります。
入れ替えた方がいいと思いますのでこうしてみました。
上の句はふるさとの緑の街を思わせるような表現からガスタンクにちょっと切り替えて下の句で意外性を出してくると。
意外性のある表現オチは下の句にという事で気をつけて頂ければと思います。
「さみどりのガスタンク」ガスタンクが緑色になっちゃいましたね。
ちょっと塗らせて頂きました。
「さみどりの」ときたら何か匂やかなものが後ろに来るかなと思ったらガスタンクだよとひっくり返した。
そこに意味があるわけですね。
皆さんもどうぞ参考になさって下さい。
それではご投稿のご案内を致しましょう。
では選者のお話です。
斉藤斎藤さんのテーマ「初心者になるための短歌入門」。
今日は「思いが見えてくる」というお話です。
今回は短歌の参考になる歌の歌詞をご紹介したいと思います。
今読んで頂いた小沢健二の歌というのは実は以前ご紹介した佐藤佐太郎の短歌とかなり作りが似ているんですね。
さあどんな歌でしたか?こちらですね。
3種類の移動という事でご説明したんですがまず自分の身体が森を出て身体が移動してそして視線の移動空を見上げたところに対象の移動鳥がとぶと。
こういう流れでした。
小沢健二の歌もABの流れは同じです。
まず自動車に乗ってる私の身体が左へカーブを曲がる。
Aの身体の移動。
そして海が見えてくる。
視線を海に移す。
その時にCが違うんですね。
佐太郎は鳥がとぶんですけれども小沢健二の歌はこの瞬間は続くと思うという事なんですね。
ここがポイントで短歌において心の動き思いというのは自分の中にあらかじめあるものではなくて飛び込んでくる。
鳥のように視界をよぎるように描いてほしいんです。
自分が例えばあらかじめ今日は悲しい事があった。
空を見たら悲しい空に見えたというんじゃなくて歩いていって空を見上げたら悲しみとかこの瞬間は続くという思いが鳥のように飛び込んできたというふうにその時初めて思った事だというふうに描いて頂くとより新鮮な歌になりやすいので流れというのをちょっと意識して頂ければと思います。
今日の選者のお話でした。
どうもありがとうございました。
さてゲストにお迎えしているクリエイティブディレクターの箭内道彦さんにもお話をして頂きますが箭内さん最初に短歌のキーワード短い言葉をお願いしますと。
空白でしたよね。
空白でした。
ここまで時間が流れましたが何かインスピレーションが?こんなふうに僕は聞いてて感じたんですよね。
やはり広告で来ましたね。
「広告である」ってほんとは言い切っちゃいたいとこなんですけどなかなか思うようにできてない広告もたくさんまだ世の中にあるなって思うんですがものを買って下さいっていうだけじゃなくてその商品が人々の暮らしをどう豊かにしてどう幸せにしてくれるのかっていう事を広告はきちんと伝えなきゃいけないと思うんですよね。
ガスがある風景だったり鍋焼きうどんがある風景だったりああいいな〜そんな感じ自分も憧れるな〜だったり自分ももういっぺん感じてみたいなという事を広告がきちんと伝える事ができないと特に15秒っていう世界ですからCMは。
それがやっぱり今日はねガスっていいな〜ガスを使いたくなるなって思うような歌がたくさんありましたね。
さっきから鍋焼きうどんを思い出していらっしゃるようですがもう一度見ましょうか?この歌ですよねこれ。
これが広告のあるべき姿とおっしゃる事は…?これはこのままコマーシャルになりますね。
このあと冷凍鍋焼きうどんの商品カットが入れば…。
なるほど。
一番最初の斉藤斎藤さんのパチンコ屋の歌もやっぱりあんなパチンコ屋のCMがあったらすごくいいなと思いました。
パチンコ屋に行くとどんな楽しい事があったりどんな感覚になるんだろうという事を教えてくれました。
この歌ですよね。
これにパチンコ屋の名前が入れば立派な広告と。
広告ってすごくね売らんかな買って下さいみたいに感じがちですけどやっぱり人の暮らしを豊かにする手伝いをきちんと僕らはしていきたいなと。
改めて今日この場に呼んで頂いて感じる事ができました。
斉藤斎藤さん確かに心の動きをふっとある瞬間捉えるというかキャッチするというような短歌はそういう側面ももちろんありますよね?今思ったのは自分はこう思うというよりも「ガスいいよね」っていうかガスを詠う事が大事なんですよね。
どうしても短歌って私ってこう思うんですよとか私ってこういう人なんですよっていう事を言いがちなんですけどそうじゃないんだと。
ガスを全力で歌って頂けるとそこに出てくるその人っていうのがあるんでそういうところにつながってくるのかなと思いましたね。
「広告のあるべき姿」ってキーワードにありましたがどうです?それは多分あれだと思うんですけど逆にここが違うなみたいなのってありました?そんなになかったですね僕は。
多分自分の広告の作り方にすごく短歌というものが僭越ながら近いのかもしれないなと感じる事ができました。
例えばもうちょっと踏み込むとどういう点?今斉藤さんがおっしゃったようにガスっていいよ。
だけどいいよって思った自分はなぜいいと思ったのか。
それをたくさんの人と共有していくっていう事が僕が作りたい広告の作り方なのですごくうれしかったですね。
短歌も書きたくなりました。
えっ?是非是非。
葉書で送ってみますね。
ご投稿下さい。
箭内さんのご本名で投稿ですかね?ちょっとドキドキしますね。
でもどんな作品になるでしょうね?クリエイティブなお仕事が多いわけですから斉藤さんどんな期待があります?そうですね…多分面白くなると思いますけどね。
斉藤さんが作ったCMも見たいです僕。
何か考え方の違いとかがあったら逆に聞いてみたいんですけどね。
画がある事によってどうなっていくのか?映像って事ですね。
そこは大きいですね。
画を自分で描くというものが短歌のすばらしさですからね。
鑑賞する人がその映像を。
いろんな画を浮かべてらっしゃると思いますよ。
皆さん今日の歌を聞いてね。
解釈にいろいろな事があるのもそういう事なんでしょうね。
今日は箭内さんに大変興味深いお話いろいろ伺いました。
本当にありがとうございました。
箭内道彦さんでございました。
では斉藤斎藤さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」時間でございます。
ではごきげんよう。
2014/05/13(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「ガス」[字]

選者は斉藤斎藤さん。ゲストは広告界の鬼才 箭内道彦さん。題は「ガス」。短歌には珍しい素材だが、料理の場面やガスタンクのある風景など様々な歌が寄せられた。

詳細情報
番組内容
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは広告界の鬼才 箭内道彦さん。題は「ガス」。短歌には珍しい素材だが、料理の場面やガスタンクのある風景などさまざまな歌が寄せられた。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】箭内道彦,斉藤斎藤,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0×0808)
EventID:2119(0×0847)