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■「『西成』描いた映画…“上映辞退”はなぜ?」 2014/05/13 放送

 今回の特集の舞台は、大阪市西成区です。

 「あいりん地区」など日雇い労働者の街というイメージ、さらには生活補助受給者が多い、しかも増えているという福祉の町など様々な側面があります。

 そんな中、大阪・西成区の今をリアルに映し出した映画が制作され完成しました。

 ただ、この映画をめぐって内容や描き方をめぐって、ある騒動が起きています。




 <ステージ上>
 「世界最初のプレミア上映です、みなさん拍手ー」

 今年3月にあった「大阪アジアン映画祭」。

 台湾や韓国など、国内や海外、50以上の作品が上映され、華やかに開催されました。

 その晴れ舞台で上映されるはずだった、1本の映画があります。

 映画「解放区」。

 大阪市西成区の釜ヶ崎地域を舞台に、「友人を探して東京から来た若者が、街の日常に溶け込んでいく」というストーリーです。

 「解体屋どう?日当1万円」(映画のシーン)

 

 この映画はフィクションで、主なキャストは俳優ですが、釜ヶ崎に住む一般の住民の様子もドキュメンタリータッチで映し出されています。

 監督は主演も務めた、長野県出身の太田信吾さん、28歳。

 5年前、初めて西成区を訪れ、外からみた釜ヶ崎の魅力をありのままに描きたいと思ったといいます。

 <監督&主演 太田信吾さん>
 「危険な街という先入観だけがあったんですが、決してそうではない。むしろ、もっと人なつっこい人がいっぱいいて、その日その日を楽しんでいるような感じが僕にはすごく魅力的だなと思いましたね」

 

 釜ヶ崎地域は「あいりん地区」とも呼ばれ、元々は日雇い労働者が
仕事を求めて、全国から集まる街でした。

 そして、今は高齢化によって、生活保護の街という側面も。

 <あいさつまわりをする太田さん>
 「映画の方、完成しました…」

 太田さんは釜ヶ崎の人たちの協力を得て、映画を完成させました。

 50年以上続く大衆居酒屋「難波屋」のご主人も、その1人です。

 <「難波屋」店主 筒井 亘さん>
 「今の日本でいろいろ失敗しはったり、苦労しはったり、逃げてきはったりとか、なんか問題を抱えてきはったり、そういう人たちがお互いにわかり合えているから、温かみや人情味が出てくると思うんです」


 みんなの協力でできた映画。

 ところが、太田さんにとっては残念な展開になりました。

 去年9月、太田さんのこの「西成」企画は、大阪市の助成対象に(60万円)選ばれました。

 しかし、映画が完成した1月、大阪市などで作る実行委員会から、
「アジアン映画祭」で上映するためには、内容を修正するように求められたといいます。

 <監督&主演 太田信吾さん>
 「まずは西成という街を特定されては困るということで、一切の西成とわかるシーンはすべて指摘があったので、そこがなくなるということは、もう映画の核の部分がなくなるということなので」

 取材によると、経緯はこうです。

 大阪市文化課の担当者は、あいりんセンターや三角公園などで、俳優以外に個人が特定できる住民が映りこんでいることについて、「人権への配慮を十分尽くしているのか」と実行委員会に伝えました。

 実行委員会は、「映画で映された人には、書面で許可をとるように
監督に伝えていたが、その書面の提出がない」とこれらのシーンの修正を求めてきたのです。

 例えば、日雇い労働者などによる「越冬闘争」の様子は、現実のシーンです。

 

 太田監督は、「こうした人たちひとりひとりに、書面で許可をとることは難しい」と主張します。

 <監督&主演 太田信吾さん>
 「『おじさんに許可とったのか、許可証がないからだめ』という。その場で名前を語りたくない人、署名できない人、文字が書きたくても書けない人っていうのもこの街にはいて、その人たちについてはどうすればいいのかとか」

 太田さんは、「修正すれば、作品が成り立たなくなる」として、映画祭への出品を断念しました。

 一方、大阪市は取材に対し、「映画には『あいりん地域』への偏見があり、助成金を出している以上、市民に不快な思いをさせない作品にする必要がある」としています。

 今回の騒動の背景には、大阪市が西成区のイメージアップに取り組んでいることがあります。

 午前5時。

 これは西成区が、去年から始めた早朝の清掃作業。

 大阪市が始めた環境改善への取り組みの1つで、「学校の通学路のゴミを片付けることで、安全・安心をアピールし、若い子育て世代を呼び込みたい」考えなのです。

 

 (Q不法投棄?)
 <清掃担当者>
 「簡易ホテル、ドヤから出るけど、ごみは半分くらいに減っています。効果は出ていると思います」

 <保護者>
 「嬉しいですね。毎日キレイにしてくれているので、すごい助かっている」

 たしかに映画では、こうした西成の新しい動きについては描かれていません。


 映画祭への出品を諦めた太田さんは、自主上映会を釜ヶ崎で開きました。

 会場となった「難波屋」には、地元だけでなく遠くは東京から、約140人が集まり、立ち見も出るほどの大盛況となりました。

 

 <地元住民>
 「釜ヶ崎に42年いるが、(この映画は)何も間違いじゃないよ。この映画はいいよ。太田君はいい映画とったなと思ってね」
 <地元住民>
 「部外者的に西成の悪いとこだけ撮るとか、良いとこだけ撮るとかは嫌だなと思ったが、西成に来た必死さ(が描かれていた)」

 一方、こんな感想も…

 <地元住民>
 「10年ぐらい前の西成かなと」
 <地元住民>
 「住んでいる身としては、良いとこや明るい空気感も出してほしかった。見る人にこういうイメージだけが植え付けられたら、そこはどうかなと正直、思ったんですけど」

 <監督&主演 太田信吾さん>
 「議論やしゃべることでより深まる部分がある。そういう見せるだけじゃなく、話し合える場での上映をやっていきたいなと思ってますね」

 少しずつ変わりつつある西成の現在をどう見るかは、それぞれの目線次第。

 撮影手法も含め、映画には多様な描き方があることは認め合うべきかも知れません。




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