木曜時代劇 銀二貫(5)「最後の約束」 2014.05.14

(和助)わてはな店休んでも質のええ寒天にこだわりたい。
(松吉)どんな仕事でもやりまっさかいここに置いて下さい。
(梅吉)内職でも何でもしますよってお願いします!
(お里)旦さん…。
こら!手ぇ抜いてんとちゃんと押さんかい!すんまへん!
寒天問屋井川屋の松吉っとん今日は荷車押しで小銭を稼いどります
(真帆)これはなお父ちゃんの考えた料理や。
その名も琥珀寒や。
琥珀寒とはまるっきり違う!え?い…嬢さんだすか?あんさんなんか知りまへん。
(梅吉)松吉!ああ…。
何しとるんや?こんなとこで。
…うん。
また真帆家の嬢さんの事考えてたんか?あれはホンマに嬢さんやったんやろか。
夢やったんと違うやろか。
むごい!夢かもしれへんな何もかも。
あきまへんな。
(善次郎)そうだすか。
クヨクヨしてもしかたありまへん。
また次があります。
結構試してきたんだすけどなあ。
それだけ美濃志摩屋はんが質のええ寒天作ってくれてはったという事や。
京の大火事で寒天の仕入れ先美濃志摩屋はんを失ってしまいました。
残りの寒天を売り尽くしみんな遊んでる訳にもいかず子守やら虫かご作りやらよその店の手伝いやらでそれぞれ内職にいそしんだはんのだすけど…
(お咲)器用だすなあ!いや…。
梅吉っとんのとは大違いや。
何だすて?売り物になりまへんえそれ。
よう出来てますがな。
どっから虫入れるんだす?ホンマや!入れるとこ作ってへんわ。
ハハハッ!楽しそうやなあ。
わてちょっと買い物に行ってくるさかい…。
わてもそろそろ山城屋さんとこの薬もらいに行かな。
ほな一緒に行こか。
へえ。
松吉っとん後を頼むわな。
じき帰るよって。
へえ。
ほな行て参じます〜。
行て参じます〜。
お早うお帰りやす。
へえ!うちどこ行ってもうまい事いきまへんねん。
いっつも息苦しいて居心地が悪いんだす。
どこにいても心を開いてはらへんからかもしれまへん。
心?わてもそうだした。
なあ?へえ。
松吉っとんて誰ぞ…。

(松葉屋)ごめんやす!
(戸を開く音)え!?あっお咲!やっぱりここにおったんか。
何の用事だすか?今は誰もいてはりまへん。
誰もいてへんって2人っきり?へえ。
旦さんと番頭さんは商いの話で出ております。
なにが商いの話や!井川屋はんはいつから虫かご屋はんになったんだすか?これお咲さんが作られたんですか?いえ。
うちの女衆どす。
何や…。
うちが作るよりおいしいおます!正直やなあお咲ちゃんは。
ほなありがたく頂きまひょか。
(一同)頂きます。
おおきにな。
いろいろ手伝うてもろうて助かったわ。
いいえ。
あっそれよりお里さんさっき赤ん坊おんぶしてはったやろ?こっそり産まはったんかと思いました。
…あれ?うち何か変な事言いました?もうみんな気ぃ遣い過ぎだす!お咲ちゃんわてなだいぶん前にこの井川屋からお嫁に出してもろうたんだす。
けど子ぉが産めんかったさかい離縁されて出戻ってきましたんや。
嫁ぎ先もそれを心から待ち望んだはった。
けどあかんかった。
あかんかったんや。
まあしゃあないな!けど…何や悔しい。
おおきにな。
まあそれでなわてらは毎日お里はんのおいしいごはんが頂けるという訳だす。
いやこのカボチャもおいしいおましたえ。
そういう事だすな。
松葉屋はん怒ってはりまっせこない遅うなって。
大事おまへん。
ほなええけど。
松吉っとん。
へ…へえ。
うち…しんどないんだす。
居心地がええんだす井川屋はん。
なあ。
満月やで!うわ〜ホンマや!きれいなお月さん。
お月さんつかも思て跳んでてん。
つかんだんや!へえ。
ええから離して松吉!
そうそう言い忘れてましたわ。
松吉っとんが何で手拭いで顔を隠すようにしてるかっちゅうと井川屋の者が店以外で働いてる事が知れたら店の信用に関わるさかいだす
あれっえ?ワ…ワワッワン!?松吉っとん!松吉っとんて!ウワッウワッウワッ…ワオ〜ン!
半兵衛さん!?すんまへん。
ちょっと…。
あ!松吉!へえ!半兵衛さんがご自分の寒天場を作りはりましたんだすか!へえ。
わての郷里は島上郡の原村というて京と大坂のちょうど真ん中辺りですねん。
あの辺りやと…芥川だすな?へえ!伏見の水にも負けてまへん。
出来たらいの一番にわてに確かめさせてもらえまへんか?それをお願いにあがりました。
おおきに。
首を長うしてお待ち申し上げております。
へえ!・「舟に積んだらどこまで行きゃる」いい子いい子いい子。
・「木津や難波の橋の下」ご苦労さんだす。
番頭さんすんまへん行かせて頂きます。
行っておいでやす。
へえ。
わても仕立てあがりましたさかい届けてきます。
ご苦労さんでございます。
フフフフフッ。
何だす?子守歌歌うてあげる時はもうちょっと優しい顔で歌うてあげておくれやす。
何べんも言うてまっしゃろ!
(泣き声)子どもの時からこんな顔だす。
(泣き声)ほな行て参じます〜。
ハハハハハハッ!
(泣き声)お早う…お早うお帰りやす!
(泣き声)あ〜よしよしよし。
(泣き声)大丈夫かいな?あっ大丈夫だす。
いやいやあんさんがやないがな。
赤ん坊がやがな。
引き付けでも起こさへんか?どういう事だす?あっ山城屋はんのご寮はん悪いんやて?へえ。
あこは旦さんとご寮はん2人暮らしやさかい梅吉に手伝いに行かせたんだす。
ああそらようならはるまで何べんでも行ってもろたらよろし。
へえ。
(与平)それでめどはついたんかいな?旦さんの納得いく寒天が見つかるまで休業だす。
そうか…。
へえ。
すまんかったなあ。
掃除から炊事みんな甘えてしもうて…。
いやいや。
山城屋さんにはえらい迷惑かけとるんですさかい。
ほなまた明日寄せてもらいます。
おおきに。
お大事に。
(多佳)梅吉!
(せき)ほれ寝とかんかいなもう。
梅吉にこれ。
ああ忘れてた!何だす?団子。
おいしいて聞いたさかい。
え〜!?おおきに!うちの旦さん甘いもんに目がおまへんのだす!
(善次郎)旦さんお先にどうぞ。
あかん!あかん!これは皆に食べさせられへん。
私一人で始末します。
そないにまずいんだすか?ううう…。
甘いなあ番頭はん。
まずいんやおまへん。
な?旦さん。
バレたか。
へえ。
メチャクチャうまい!
(お広)おおきに。
しばらく見かけんかったのう。
へえ。
ここ半年ほどうちが体悪うしてましたんで。
ほうか。
また寄せてもらうわ。
おいしいし。
おおきに!すんまへん。
団子6つ下さい。
毎度。
団子6つ!団子6つ。
おおきに!嬢さん…?夢やない…。
ホンマに…ホンマに嬢さんだすな?何してはるんだす?こんなとこで。
嘉平さんはどこにいたはるんだす?おじいさんは?嬢さん?嬢さんあれからどないしはったんだすか?なあ!うちの娘に何のご用だす?え?この子はてつというてうちの娘だす。
違う。
この人は真帆家の…。
何を言うたはんのやあんさん!嬢さん!ねえどないしはったんだすか!?何か…何か言うておくれやす!この人は勘違いしてはるんや!帰りまひょお母さん。
松吉っとんどないしたん?ごっつぉさんでござります。
すんまへん!団子…。
松吉!どないしたんや?その団子屋のおばちゃんの養女にならはったんか?分からへん。
けどお母さんて言うてはったんやろ?普通に養女にならはったんやったらそない言うてくれはったら済む事やろ。
はあ〜。
どんな事情があるんや…。
嬢さん見てて下さい。
つかんだんや!へえ。
嬢さん明日も来ます。
せやからまた明日送って下さい。
ほなまた明日な!へえ!アホやうち…。
夢やない…。
ホンマに…ホンマに嬢さんだすな?嬢さんあれからどないしはったんだすか?おてつ?おてつ!え?何か言うた?お母さん。
心配事でもあるんか?何もあらへん。
団子5つ。
おおきに。
団子5つ。
へえ!団子5つ。
すんませんお団子下さい。
(お広)ちょっと待っててな。
なああれどないしたん?あんさんには関わりない事でっしゃろ。
見れば見るほど気色悪いなあ。
帰れ。
え?とっとと帰れ!お母さん?お母さん!客に向かって何や?その口の利き方は!あんたなんか客やない!お母さんもうええから!帰れ!アホんだら!帰れ!お母さん!お母さん!うちは平気や。
平気。
団子作ろう?うれしいなあ!また来て下さいね。
いつも食べんのを楽しみにしてんねん。
うれしいなあ。
おおきに!へえお待ちしてます〜。
いらっしゃい。
団子5つ。
団子5つ。
お母さんあとやっとくさかい休んでて。
けど…。
まだ本調子やないんやから。
おおきにな。
嬢さん!後生だす。
教えとくんなはれ!あれからどないしてはったんだす?嘉平さんは達者にしておられるんだすか?おじいさんはどこにいたはるんだす?嬢さん…嬢さんは今幸せに暮らしたはるんだすか?せやさかいうちはてつだす!うちは…真帆やないて言うてるやないの!真帆家の真帆さんが何でおてつさんなんだす!?お母さん!お母さん!この子はわての娘だす!おてつはわての娘や!わてがおなかを痛めて産んだんや!わての娘や!お母さん!どこにも行ったらあかん。
行ったらあかんおてつ!だんないだんない。
大事ない。
これでだんないだんない。
大事ない。
(泣き声)帰って下さい。
後生だす。
(泣き声)・「ねんねころいち天満の市で」・「大根そろえて舟に積む」おてつ!おてつ〜!・「舟に積んだらどこまで行きゃる」・「木津や難波の橋の下」おてつ!真帆家の真帆さんが何でおてつさんなんだす!?嬢さんは今幸せに暮らしたはるんだすか?・「ねんねころいち天満の市で」・「大根そろえて舟に積む」あの…?ご無沙汰しておりました。
真帆家の真帆でおます。
へえ…。
ま!ままま…!ホンマによう無事でいてくれはりましたなあ。
ご挨拶もようせんと申し訳ありまへん。
さぞ大変な目に遭わはりましたんやろなあ。
旦那さん。
へえ。
うちが真帆家の真帆としてお話しするのは今日限りだす。
今日限り…。
それどういう事でおまっしゃろ?5年前の火事で真帆家は焼けてしまいました。
(半鐘の音と悲鳴)お父ちゃん!
(嘉平)だんない!だんない!大事ない!大丈夫や!おじいちゃんは!?だんない!おじいちゃん!?おじいちゃん!どけ!あ〜!どアホ!子どもがいてるんやで!真帆〜!その時うちは目の前が真っ暗になって気が付いたら地面に転がってました。
あんた!お前大丈夫か!?おい!おい!お父ちゃん!早う…早う逃げ!嫌や!お父ちゃん!お父ちゃんは!?真帆…だんない。
だん…。
(泣き声)お父ちゃん!お父ちゃ〜ん!
(泣き声)地獄やと思いました。
お父ちゃんは柱の下でもうピクリとも動きまへなんだ。
その時声が聞こえたんだす。
「おてつ」って…。
おてつ!おてつ!おてつ!おてつ〜!
(泣き声)あんたしっかりしなはれ!残った子ぉだけでも助けなあかんやろ!じきに火が来るで!・「ねんねころいち天満の市で」おてつ!おてつ!おてつ〜!
(半鐘の音)おてつ!それから5年の間うちはお広さんに大事に大事に育ててもらいました。
実の娘てつとして…。
せやさかいうちはどんな事があってもお広さんを守ります。
ホンマのお母さんとして。
ようお話ししてくれはりましたなあ。
それで…お願いがあります。
何だっしゃろ?今日限りうちは真帆という名を捨てて団子屋のお広の娘てつとして生きていきます。
せやさかい通りでうちを見かけても声をかけんといてほしいんだす。
特に…松吉さん。
…え?あの時ヤケドしました。
これが今のうちだす。
てつだす。
それは…嬢はんが一生懸命生きたはる証しだすな。
おおきに。
ほなうちはこれで。
お里はんお見送りして。
へえ。
ホンマにこれでええんやろか…。
すんまへん。
大勢さんで見送ってもろて。
松吉。
嬢はんと天神さんにでも行ってきたらどうや?え?旦那さんうちは…。
おてつさんは明日からだっしゃろ?今日一日は真帆家はんの嬢はんでおまっしゃろ?おおきになお咲ちゃん。
いえ。
嬢さん!生きててくれはって…ありがとさんでございます!ホンマ…ありがとさんでございます!番頭さん…。
ありがとさんでございます!おおきに番頭さん。
おおきに。
番頭さんは昔大事に思てたお人を火事で亡くさはったんだす。
そやったんや…。
うち…火事に遭うてから今初めて生きててよかったて思えた。
「心づくしの神さんがうそを真にかえさんす。
ホンニうそ替えオオうれし」。
知ってるか?松吉。
知りまへん。
どうせ働いてばっかりなんやろ?松吉は。
へえ…。
天神さんはなあ毎月25日にお祭りがあるけど1月25日の初天神さんは別格なんや。
初天神さんはなうそ替えの行事があるんや。
う…うそかえ?鷽っちゅう鳥がいてるやろ?し…知りまへんなあ。
いてるんや!へえいてます!木彫りの鷽鳥をな一旦こないして袖にしまうんやけど次から次へ擦れ違う人と鷽鳥を取り替えっこしていくんだす。
何べんも何べんも替えていくうちに…今年のウソがまことに替わるんや。
真帆はてつになるんだす。
おてつさんになっても井川屋へ来はったらええやないですか。
それはでけへん。
何でだすか?何ででもや。
何で何ででもなんだすか?何ででも言うたら何ででも。
その何ででも…。
このアンポンタン!え!?松吉は昔鶴之輔やった。
けど松吉に替えたやろ?死にとうなかったからだす。
商人になるしか生きる道はなかったんだす。
同じやな。
うちはてつになるて決めたんや。
今は苦しいても寂しいてもいつかそれが…まことになるんやさかい。
すんまへん。
何や嬢さんに送ってもらうやなんて…。
やっと5年前の約束が果たせた。
よう覚えてます。
昔嬢さんわてを送ってあげられへんで堪忍やでって言わはりました。
お父ちゃん風邪ひいて店休んでたさかい。
せやのに嘉平さん料理作ったはりましたな。
そうそう!腰の強い寒天があったらなあ言うて。
そうだしたな。
それ使てもっともっといろんな料理作りたかったんやろなあ。
へえ…。
何の供養もしてあげられてへんわ。
もしそんな寒天が作れたら嘉平さんの供養になりますか?そらお父ちゃん喜ぶわ。
作ります。
え?わてが作ります!いや分かりまへんけど作りたいんだす!ホンマに?へえ!松吉が作ってくれたらうちもう寂しない。
ちゃんとてつとして生きていく。
約束。
さいなら。
どうしても腰の強い寒天を作りたいんだす!2人の夢をかなえたいんだす!何も知らんのは松吉の方やろが!どんな思いであんたを見守ってたか分かってるか?もう二度と帰ってこんでもええ!2014/05/14(水) 01:25〜02:11
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 銀二貫(5)「最後の約束」[解][字][再]

寒天の仕入れ先を失った井川屋では、皆が内職にいそしむ日々であった。しかし松吉(林遣都)は5年ぶりに再会した真帆(松岡茉優)のことが気がかりで仕事が手に付かない。

詳細情報
番組内容
京の大火事で寒天の仕入れ先を失った井川屋では、店を支えるため、みなが内職にいそしむ日々であった。松吉(林遣都)への恋心を抱くお咲(浦浜アリサ)も、持ち前の明るさで井川屋の手伝いに励んでいた。しかし松吉は5年ぶりに再会した真帆(松岡茉優)のことが気がかりで仕事が手に付かない。ある日松吉は、団子屋のお広(映美くらら)の娘「おてつ」として第二の人生を生きる真帆と偶然出会うが…。
出演者
【出演】林遣都,松岡茉優,芦田愛菜,いしのようこ,尾上寛之,板尾創路,ほっしゃん。,映美くらら,浦浜アリサ,渋谷天外,団時朗,塩見三省,津川雅彦,【語り】山口智充
原作・脚本
【原作】