科捜研の女11 #12+京都地検の女8 #4 2014.05.14

(権藤克利)こちらです。
(土門薫)この部屋を調べてくれ。
これが通報があった時の状態だ。
だが…。
(宇佐見裕也)これは…!
(吉崎泰乃)血…ですよね?この部屋の住人は上原美帆35歳。
かばんや財布は部屋に。
靴は玄関に残されているが本人の行方がわからなくなっている。
(刑事)ではこちらに。
陽性反応が出ました。
人間の血で間違いないですね。
(権藤)あなたが通報されたんですね?
(押田珠美)今朝は美帆さんがゴミ出し当番だったんですけど起きてこないから起こしに行ったんです。
そしたら…あれが…。
あなた方は一緒にこの家に住んでるんですか?
(竹井静子)ここはシェアハウスなんです。
シェアハウス?
(富永加代)他人同士で共同生活する家です。
短期間でも入居できるから住人はその時々で入れ替わりますけど。
(静子)美帆さんは1か月ほど前に入居されました。
最後に上原美帆さんの姿を見たのはいつですか?おととい…土曜日の朝です。
(3人の笑い)美帆さん朝ごはん一緒にどう?
(上原美帆)いらない。
そのあと私たちはそれぞれに出かけてしまったので彼女がどうしていたのか知りません。
おとといの土曜日から現在まで丸一日以上美帆さんの姿を見なくて不審に思わなかったんですか?普段からあんまり部屋から出てこなかったから…。
共同生活といっても互いの行動には干渉しないのがここでのルールなんです。

(榊マリコ)ここにも血痕があるわ。
(相馬涼)はい。
美帆さんのは?あ…これです。
あとで皆さんの指紋とDNAも採らせてください。
はい。
シーツの血痕の血液型はAB型でした。
歯ブラシに付着していた唾液から上原美帆さんの血液型もAB型と判明したわ。
さらにDNA検査では歯ブラシから採取した口腔粘膜細胞ヘアブラシに付着していた毛根シーツの血痕すべて同一人物のものであるという結果が出た。
(泰乃)やはり被害者は上原美帆さん…。
(日野和正)裏庭にあった跡はZELTA社というメーカーが2005年に発売したT508というトランクのキャスター痕と一致した。
地面への食い込みの深さから推測すると40〜50キロのものが入っていた。
(相馬)犯人は遺体をトランクに入れて運び出したんですね。
ソファ脇に付着していた滴下血痕細胞が壊れていたためDNAは検出できなかったけどABO式検査では血液型はB型でした。
住人の中には…B型はいないね。
現場からは住人以外の指紋が検出されています。
部屋のドア周辺とこの時計にも。
その指紋に前歴はありませんでした。
それと外部からの侵入者のものと思われるゲソ痕がエアコンの室外機の上にありました。
サイズは26センチ。
靴は男性用の量産品です。
あ…あと雨どいに付着物がありました。
位置的にみて室外機に上った人物が…。
分析した結果万年筆のインクでした。
メーカーごとの成分表と照らし合わせてみたところ神戸の文具店がオリジナルで製造販売しているインクと判明しました。
僕神戸には詳しいんです。
その文具店僕が行ってきます。
そういう事は捜査課に任せればいいの。
私たちは引き続き遺留品の鑑定をしましょう。
あ〜じゃあ帰りに肉まん買ってきてって土門さんに伝えてください。
肉まん…。
神戸の南京町の。
肉汁がこう出てふわふわなんですよ。
ふわ〜ふわ〜。
そうなんですよ。
めっちゃくちゃうまい…。
京都の下鴨にあるシェアハウスご存じですよね?
(加藤達郎)え?あの家の雨どいにあなたが調合しているそのインクが付着していました。
室外機に上って窓から家の中に侵入しましたね?え…いえ。
し…侵入なんてしてませんよ!押田珠美さんあなたの娘さんですよね?あのシェアハウスに入居している。
前の妻との間の娘です。
珠美が役者になりたいと言うて大学を辞めたという話を母親から聞いたもんですからどんな生活してるのか心配になりまして…。
(美帆)何見てんのよ!
(美帆)白々しい事言わないでよ!それで何を見たんですか?
(加代)確かに彼女とケンカしました。
何見てんのよ!ごめんなさい。
別に覗いたわけじゃないのよ。
たまたま目に入っただけで…。
白々しい事言わないでよ!
(加代)はい?あなた私のお金狙ってんでしょ?そんなわけないでしょ。
見られて困るんだったらちゃんとドア閉めておきなさいよ。
はあ?
(ため息)彼女の部屋にそんな大金はありませんでしたが。
犯人が持ち去ったんじゃないんですか?仕事中なんです。
もう戻らないと。
怪しいですねえ…。
うん。
まずは上原美帆が所持していた金の出所だ。
血痕はありませんね。
血が移っていないという事は犯人は被害者が流した血が完全に乾いたあとベッドに毛布をかけた…。
かなり長い時間犯人は現場にいた事になりますね。
この枕カバーには汗の痕跡もない。
クリーニング?
(相馬)マリコさん。
犯行現場から採取した微物の中に猫の毛がありました。
猫…。
うちのデータベースでは具体的な品種までは特定できないんで動物研究の専門機関に鑑定を依頼しました。
猫ですか?このシェアハウスはペット禁止です。
美帆さんのまわりに猫を飼ってる人はいませんでしたか?刑事さんにも話しましたけど私たちは美帆さんの事は何も知らないんです。
彼女はここへ来てまだ1か月でめったに部屋からも出てきませんでしたのでほとんど話す機会もなくて。
シェアハウスに入られる方は人とのふれあいを求める人が多いと思っていましたが美帆さんは違ったんですか。
私たちと関わるのを避けてるって感じでしたよ。
そうかな?入居して間もないから戸惑ってただけなんじゃない?あ…私はここに入って6年になるんですけどその間いろんな入居者がいました。
すぐに打ち解けられる人もいれば時間がかかる人も…。

(静子)最初は赤の他人。
それが同じ家の中で暮らしてるうちに自然と仲間意識が芽生えてくるんです。
美帆さんともいずれは打ち解けられると信じていたのに…。
こちらの家では家具やベッドは備えつけだそうですがシーツや枕カバーもなんでしょうか?いえそれは各自で。
私はこの家にあるものを使っています。
これです。
現場にあった枕カバーには美帆さんが使用した痕跡はなくクリーニング直後の状態だった。
犯人があの家の納戸にあった新しい枕カバーと取り替えたんじゃないかしら。
なんのためにだ?わからない。
犯行の痕跡を隠すためならむしろ血痕がついたシーツを取り替えるわよね。
納戸には新しいシーツもあったのに。
(権藤)土門さん。
おう。
上原美帆は京都に逃げてきたようです。
以前は大阪市内の飲食店で働いていたんですが方々に借金を作ったままです。
2か月前には闇金融にまで手を出しそこで借りた200万を持って行方をくらませました。
(携帯電話)はい土門。
ご苦労さまです!あれです。
ああ…。
ZELTA社のT508…。
キャスター痕から割り出したものと同型です。
お願いします。
泰乃さんALS。
はい。
(シャッター音)オーケーです。
遺体を運んだトランクですね。
これが凶器のようね。
近くに遺体があるかもしれん。
応援を呼んで捜索する。
(相馬)マリコさんこれ!シェアハウスにあった猫の毛と似てます。
トランクは裏庭の物置に置いてました。
ずっと使ってなかったからなくなってるなんて気付かなかった。
(ノック)はい。
土門さん。
ハサミから指紋は検出できなかったけどネジの部分に白い糸片が挟まっていたわ。
素材はシルク。
硬くハリのあるこういった厚手のチュール生地に使われている糸だった。
あなたのハサミですよね?この生地もあなたの仕事場で使ってますよね?このハサミは先週珠美に貸したんです。
まだ返してもらってませんでした。
(珠美)劇団の衣装を作るために加代さんにハサミを借りました。
リビングに置いておいたんですけどなくしちゃって…。
いつなくしたんですか?土曜の朝にはあったと思うんですけど…夜見たらもうなくて…。
(日野)猫の品種回答が来たよ。
ノルウェージャンフォレストキャットという長毛種の猫だった。
トランクのそばに捨てられていたこのキャリーバッグにも同じ猫の毛が入っていました。
付着してた指紋が被害者の部屋から採取されている身元不詳の指紋と一致しました。
(宇佐見)指紋が…。
このキャリーバッグはペット用品の専門店が販売しているものでこの色はネット通販の期間限定のものでした。
今購入者リストを取り寄せています。
凶器のハサミに付着していた血痕はAB型とB型が混ざった状態でした。
混ざった?はい。
わずかですがB型と判定される部分がありました。
犯人は被害者を刺した時に自分も怪我をし出血をした。
その血が凶器に付着し床にも落ちたんです。
遺体はまだ見つかっていない。
犯人はあの家の納戸にクリーニング済みの枕カバーがある事を…。
裏庭の物置にトランクがある事を知っていた。
犯行後に偶然見つけたというのは考えにくいわよね。
うん。
この事件は内部の人間が関わってる可能性が高い。
だが彼女たちはB型ではないし怪我もしていない。
あの3人をポリグラフ検査にかけてみてくれないか?なんで私たちが?お願いします。
中指をお願いします。
それでは始めます。
すべて「いいえ」で答えてください。
上原美帆さんを殺害した犯人は男ですか。
いいえ。
上原美帆さんを殺害した犯人は女ですか。
いいえ。
上原美帆さんを殺害した犯人は男ですか。
いいえ。
上原美帆さんを殺害した犯人は女ですか。
いいえ。
上原美帆さんを殺害した犯人は男ですか。
いいえ。
上原美帆さんを殺害した犯人は女ですか。
いいえ。
ありがとうございました。
3人ともなんの反応もありませんねえ。
事件とは無関係か…。
ただいま。
マリコさん!キャリーバッグの購入者リストが届いたんですけど京都市内で購入した人がいました。
鳥谷亜沙子さんはいらっしゃいますか?
(鳥谷壮太)もうここにはいません。
(権藤)ではどちらに?知りませんよ…。
離婚したんです。
このあいだの土曜日に出て行きました。
土曜日…亜沙子さんはノルウェージャンフォレストキャットという品種の猫を飼っていませんでしたか?ああ…ノエルね。
亜沙子が連れて行きました。
このキャリーバッグに入れて?…はい。
何調べてるんですか?下鴨にあるシェアハウスをご存じですか?殺人事件のあった…?マスコミは血痕が見つかったとしか発表してませんが。
ち…違います。
あの…勝手にそう思い込んでただけです。
部屋の中を見せていただけますか?どうぞ。
(権藤)引っ越しでもされるんですか?
(鳥谷)いいえ。
亜沙子が勝手にリサイクル業者に売ってしまったんですよ。
ベッドもソファもテレビも!
(鳥谷亜沙子)はいノエル〜お引っ越しだよ〜。
はい。
よいしょ。
はいいい子だね。
(鳥谷)おいおいおいおいおい…!俺はこれからもここで暮らしてくんだぞ!私と出会う前に戻りたいんでしょ。
だから戻してあげたのよ!待て待て待て…!ノエル置いてけおいおい!結婚の記念に俺が買った猫だぞ!ノエルは私の子供よ。
その鍵を見せていただけますか?
(シャッター音)鳥谷亜沙子さんをご存じですよね?不動産屋に確認したところ鳥谷亜沙子は2年前まではここの住人だったそうですね。
(静子)ええ。
結婚が決まって出ていかれたんです。
その後彼女がここに来た事は?ありません。
上原美帆さんの部屋にあった指紋は亜沙子さんの指紋だと判明しました。
2年前に亜沙子さんがあの部屋に住んでいたからじゃないですか?あの部屋には亜沙子さんが飼っていた猫の毛が落ちていました。
猫を飼い始めたのはご結婚されてからです。
鳥谷亜沙子が今どこにいるのかご存じありませんか?なんで私が?彼女の携帯は現在電波が途絶えていますが最後に通信した相手はわかりました。
土曜日の午後3時10分通信先はあなたの携帯電話だ。
すみません…。
ずっと嘘をついてました。
土曜日の午後買い物中に電話がありました。
(静子)亜沙子さん!久しぶり。
え…?
(亜沙子)今シェアハウスにいるの。
私…人を殺しちゃった…。
え?何言ってるの?亜沙子さん?
(静子の声)とにかく戻らなければと思いました。
亜沙子さん?なんでこんな事になったのか…。
2年前に出て行った亜沙子さんと入居したばかりの美帆さん。
面識はないはずなのに…。
なぜ今まで黙っていたんですか?それは…。
亜沙子さんはあの家で一緒に暮らした仲間だから。
それにあそこで殺人が起きた事が知られたらシェアハウスが閉鎖になってしまうと思ったんです。
その後鳥谷亜沙子から連絡は?「ありません」「また連絡があったら自首を勧めるつもりでした」もし鳥谷亜沙子から連絡が来たら必ず我々に知らせてください。
はい。
離婚して家を出た鳥谷亜沙子は以前暮らしていたあの家に身を寄せようとした。
なんらかの経緯で上原美帆が大金を持っている事に気付き殺害。
金を奪って逃げた。
緊急手配しろ。
はい。
どうした?静子さんは鳥谷亜沙子の犯行だと知っていた。
なのにポリグラフ検査では…。
上原美帆さんを殺害した犯人は女ですか。
いいえ。
犯人は女だと知っていたのに…。
静子さんはあの質問に反応を示さなかった。
静子さん。
ああ…。
まだ何か?ベッドの血を発見したあと毛布をかけたのはあなたなんですね?ええ見ていられなくて。
では枕カバーを取り替えたのもあなたですか?え?あ…違います。
枕カバーなんて取り替えてません。
すぐに通報しなかった事はいけない事だとわかっていました。
でも…。
私の仕事はデスクワークです。
勤務中も昼休みも誰とも話さない日もあります。
だから家に帰ってみんなと他愛もない話をする事が私の生活で一番大切にしたい事なんです。
楽しくって居心地がよくって…。
いつの間にか一番長く私があの家にいて。
責任感というか…あの家をみんなの生活の場を守らなければって思ってしまったんです。
本当の事を隠していてすいませんでした。
まだ私たちに話してない事があるんじゃありませんか?いえもう何も隠していません。
(泰乃)マリコさんに言われてシーツの血痕を調べ直してみたんですけど…。
AB型の血の他にB型の血と判定される部分が検出されました。
凶器と同じように被害者と犯人の血が混ざったんですねえ。
(泰乃)でもハサミの時と同じように犯人のDNAは検出できませんでした。
できなかったの?
(泰乃)はい。
B型の血の白血球から犯人のDNAを抽出しようと何度もやってみたんですけどどうしても被害者の上原美帆さんのDNAと同じようになってしまうんです。
同じに…。
(泰乃)血液型を示すバンドは違うんですけどこの塩基配列が…。
鳥谷亜沙子の血液型は?いやご主人に聞いたんですけどなんかあいまいで…。
(風丘早月)まいど〜。
(日野)いらっしゃい。
ご遺体は?まだ見つからないの?はいみんなで!いつもどうもです!
(宇佐見)じゃお茶入れましょう。
はぁいどうも。
手伝いま〜す。
遺体が出ないと先生の協力も得られないねえ。
でも犯人はどうして遺体を運び出したりしたの?だって血痕は残したままだったんでしょう?内祝…?アハッこれね実は同僚の出産祝いのお返しなの。
双子を産んだのよ!男の子と女の子。
二卵性の双子!二卵性の双子…。
(早月)かわいいの。
見る?
(早月)ほら。
うわあかわいい!
(泰乃)かわいい〜!ひょっとして…。
(鳥谷)あの前にも言いましたけど亜沙子の持ち物なんてひとつもありませんよ。
全部持って出てったんですから。
どうぞ!マリコさん!「上原美帆さんを殺害した犯人は女ですか」この質問にあなたは反応を示さなかった。
その理由がわかりました。
あの部屋で発見されたシーツの血痕と凶器のハサミに付着した血痕はAB型とB型の血が混ざった状態でした。
AB型は被害者のものB型は犯人のものだと思っていましたが実は同一人物のものだったんです。
被害者はキメラだったんです。
キメラ?普通血液型は1人に1つですが1人で2つの血液型を持っている人がいるんです。
え…?そういう人をキメラと呼びます。
キメラになる原因は二卵性の双子や本来双子になるべき受精卵が母体で…もう片方の造血幹細胞を自分の骨髄に取り込んだ事により異なった血液型の血球が混ざった場合に起こります。
この事件の被害者はキメラだった。
だからAB型とB型2つの血液型が出てきたんです。
じゃあ美帆さんはそのキメラだったんですね?いいえ。
キメラだったのは上原美帆さんではありません。
鳥谷亜沙子さんの指輪の内側に付着していた皮脂からDNAを検出する事ができました。
そのDNAはシーツの血痕のDNAと一致しました。
この質問は被害者の名前が違っていた。
あの部屋で殺害されたのは上原美帆さんではなく…鳥谷亜沙子さんだった。
犯人は殺害した鳥谷亜沙子の遺体を外へ運び出した。
だが血痕がついたシーツはそのまま部屋に残した。
遺体がなければ血痕のDNA鑑定で被害者を特定する。
その警察の捜査方法を利用し死んだのが上原美帆だと我々に思い込ませた。
家を出てきた亜沙子さんは自分の身の回りのものを持ってここに来ていた。
この歯ブラシもヘアブラシも亜沙子さんのもの。
なのにあなたは…。
美帆さんのは?あ…これです。
(マリコの声)DNA鑑定の対象になるものはすべて入れ替えた。
でも枕カバーまでは亜沙子さんは持ってきていない。
だから…クリーニング済みのものに取り替えるしかなかった。
鳥谷亜沙子は夫が不倫している事が離婚の原因だと友人に打ち明けています。
その不倫の相手というのはあなたの事ですよね?違います!私は不倫なんてしていません!知り合いだった鳥谷さんから何度か亜沙子さんの相談を受けていただけです。
でも亜沙子さんは誤解していてあの日…。
よいしょ…はい。
ノエル〜。
ごめんね〜疲れたでしょう。
話って何?お〜懐かしい!勝手に入らないで!今は他の人の部屋なんだから。
ねえやめて。
人の部屋に入らないのがこの家のルールでしょう。
人の結婚生活に入ってくるのはいいわけ?
(静子)えっ…?あなたのせいで私は離婚するはめになったのよ。
彼と会ってたんでしょ?誤解よ…。
ここにいた時ちょっと仲良くしてあげたぐらいでいい気になって人の夫に手出すなんてあんた最低よ!あ…違う!
(亜沙子)なんで!?ねえなんであんたみたいに地味でつまんない女に私が負けなきゃいけないのよ!なんであんたなんか…!私のものを取るなんて許さない!
(静子)あっ…!いや…いや!
(もみ合う声)
(刺す音)うっ…。
私の部屋で何やってんの?美帆さん…!死んでる…?警察に行かなきゃ…。
ちょっと待って!あなたを助けてあげる。
え…?遺体を隠すのを手伝う。
その代わり私が死んだ事にしてくれないかな。
え?死んだのは私で殺したのはこの女。
そう警察に思わせる事ができたらあなたは助かる!私も助かる!私借金取りから逃げてるの。
見つかったらかなりヤバイの!私が死んだとなれば向こうもあきらめる。
(静子の声)私たちは手を組む事にしました。

(猫の鳴き声)オーケー…オーケー…。
あっ!ちょっと…危ない!ねえシーツは今朝取り替えたばかりだから大丈夫だと思うけど枕カバーからもDNAって採れるんじゃないの?でも亜沙子さんの枕カバーなんてないよ。
納戸に新しいのがあったでしょ。
ありがとう。
(静子の声)それから亜沙子さんの遺体を埋めて…。
(猫の鳴き声)
(猫の鳴き声)じゃこれ私が使わせてもらうわ。
美帆さんはこれからどうするの?う〜ん…まあどっか遠いところで別人として生きるわ。
気をつけてね。
前にも言ってくれたよね。
ただコンビニ行くだけなのに。
(静子)美帆さん出かけるの?いってらっしゃい!気をつけてね。
(美帆の声)気をつけてね…。
そんなの言われたの何年ぶりだろ?ずっと1人暮らしだったから…。
嬉しかったよ。
同じ屋根の下に一緒に暮らしてる人がいる。
(加代)珠美はねえ…。
(珠美)私どれだろう?あ…でもこれかわいいこれかわいい。
お待たせ。
(加代)ありがとう!ほらちょっと飲んで飲んで飲んで。
これ超おいしいね。
(珠美)乾杯しよ〜!
(加代)では…。
(3人)乾杯〜!
(加代)あ〜最高じゃない?
(静子)飲んじゃいそう。
(加代)すごい飲んでる。
ってか珠美飲みすぎ。
(3人の笑い)
(美帆の声)家の中に笑い声がある。
(加代)嘘〜そんなんでいいわけ?ダメだよ。
短い間だったけど一緒に暮らせてよかったよ。
…じゃあね。
同じ屋根の下…一緒に暮らした仲間たち。
亜沙子さんもその1人だったんですよね。

(嗚咽)
(静子の嗚咽)発見された亜沙子さんの遺体を風丘先生が解剖したところやはり彼女は2つの血液型を持つキメラだったそうよ。
上原美帆は死体遺棄容疑で全国に指名手配中だ。
しかし俺にはわからんなあ。
あの家みたいに他人との共同生活を選ぶ人が増えてるなんて。
みんな…誰かとつながっていたいのよ。
うん?「気をつけてね」って声をかけてくれる。
そんな小さなふれあいが幸せを感じさせてくれるから…。
(谷垣泰治)人を憎む暇があったら仕事せい!仕事!
(望月友也)てめえが何を教えてくれた!掃除ばっかさせやがって!仕事は目で見て覚えるもんや。
(鑑識課員)この暑さから考えて死後1か月程度。
頭蓋骨の骨折が致命傷だと思います。
(佐々部健太)発見された場所がここ…。
という事は山を歩いていてあそこから転落したんですかね?
(成増清剛)所持品も持たずにこんな革靴で山歩きはしねえだろ。
(佐々部)事故ではないという事ですか?まずは身元の確認だ。
(鶴丸りん)おはよう…。
(鶴丸あや)おはよう。
(ため息)ちょっと何よ?朝っぱらからため息なんかついて。
(りん)今日の1限目のクラス授業態度がよくなくって。
全然私の話聞いてくれないの。
もうなんだか憂鬱。
ちょっとちょっと。
教師がそんな事言ってどうするの。
ビシって言ってやればいいじゃないの。
うるさい!静かにしろ!ってさ。
そんな事言ったらうざがられるよ…。
あのねりん教師なんていうのはねうざがられるぐらいがちょうどいいのよ。
ね?そんな通り一遍の付き合いだったらさもう生徒だってついてこれないじゃないの。
黙って俺について来い!俺の屍を越えていけ!よね。
教師もやっぱ職人気質じゃないと。
ん〜はい!本日の訓示終わり!ごちそうさまでした。
後片付けよろしく〜。
いいわよね〜迷いのない人は。
うらやましい。

(池内弘二)ガイシャの話じゃこっちに逃げたはずなんだがな。
(平林雅彦)右京北署は白骨遺体でてんてこまいなのにこっちはただの引ったくり犯。
なんだかめげちゃいますよね〜。
(物音)シッ…!ちょっと消せ。

(池内)あんたそこで何やってんだ?おい…。
(平林)あっ!ちょっと…待て!
(平林)おい待つんだ!おい!
(池内)はいはいダメダメ…。
(友也)離せよ!
(池内)「望月友也」。
盗品らしき物は持ってないみたいです。
こんな時間に何やってたんだ?
(平林)ちゃんと答えろ!
(友也)ああっ!あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
その前に聞きたい事があるんだけど。
なんでしょう?あんたら俺に偏見持ってるよね?偏見?傷害と暴行で少年院出たり入ったりのクズ。
池内だっけ?あいつがちゃんと調べてんだろ。
だから引ったくり犯じゃないってわかっても住居侵入罪とかいちゃもんつけて強引に逮捕したわけだ。
無断で他人の庭に入り込むのは立派な住居侵入罪ですよ。
非行歴とは関係ありません。
それにあなたの供述には疑問があります。
へえ〜。
どこが?あなたは警察でこう供述してますよね。
「たまたま近くを通りかかったら腹痛を覚え谷垣泰治さんの家でトイレを借りようとした」。
別におかしくねえだろ。
谷垣泰治さんは現在あなたが勤務している京都サンセイ製作所を去年67歳で退職している。
あなたと一緒に働いてたのは3年間。
その間あなたは谷垣さんから口の利き方や態度仕事について再三注意を受けていた。
注意なんてもんじゃねえよ。
人の事怒鳴りまくってよ。
半人前がいっぱしな口利くな!仕事を覚えて自分を変えるんや!当分は工場の掃除や。
顔を見るのもウンザリだったよ。
そんな谷垣さんによくトイレを借りる気になりましたね。
こっちは腹が痛くて死にそうだったんだよ!それとも何だ?嫌いなじじいには便所も借りんなって法律でもあんのか?
(井森幸三郎)その言葉遣いなんとかなりませんか?は?あんまりにも聞き苦しい!じゃあ出てけば?俺は検事のおばちゃんとしゃべってるんだよ。
おっさんもデブも必要ねえから。
出てけよ!
(川喜多夏帆)ちょっと…!いい加減にしなさいよ!川喜多。
事務官がいなければ取り調べは出来ません。
あなたがきちんと話が出来るようになるまであなたの身柄を拘留します。
なんだとコラ…!退出させてください。
おいふざけんな!おとなしくしなさい。
おい離せ!離せよコラ!あ〜!もうあのクソガキ!何が「トイレを借りに行った」よ。
谷垣さんの留守を狙ってお金を盗もうとしたに決まってる!ちょっと!2人とも聞いてます?ねえ井森さん。
望月友也1人暮らしよね?はいそうですが…。
それが何か?いや…さっきの乱暴な態度と裏腹に彼が犯行時に使ってた軍手使い古しではあるんだけど妙にきれいなのよ。
名前まで書いて…。
これ自分で洗濯してるのかしらね…。
それよりこの庭に侵入された谷垣泰治さん。
連絡まだ取れないのよね?はい。
いまだに留守のようで。
谷垣さんの事気になるわねえ。
私も悪い予感がいたします。
谷垣さんもまた1人暮らしです。
川喜多!京都サンセイ製作所行くわよ。
えー!でももうすぐ昼休み…。
それが何か?お昼は抜き!ええーそんなぁ…。
お願いします。
行ってきます。
京都地検の井森ですが…はいこんにちは。
12時きっかりにうな重一人前お願いします。
肝吸い付きで。
これがへら絞りですか。
(岡村)ええ。
職人が棍棒のようなもん握っとるでしょ?はい。
(岡村)あれがへら。
あのへら1本で金属をどんな形にも変えられる。
へえ〜!今作っとるのは街路灯パーツです。
谷垣のおっちゃんは飛行機のヘッドカバーやロケットのパーツまで作っとりました。
すごーい!
(腹の鳴る音)日本の最先端技術は職人さんたちに支えられてるんですね。
へらは谷垣のおっちゃんの体の一部やった。
あ…けど左手が痺れるようになって…
(岡村)退職の日におっちゃんそのへらをどうしても持って帰りたい言うて…。
おっちゃんにとってへらは勲章やったのかもしれません。
友也がここに来たのは4年前。
ここに金を盗みに入ったところ谷垣のおっちゃんに見つかったんですわ。
それで…。
コラ!お前何しとんねん!
(谷垣)おいおい…ほら…ほら離せほら。
わかった。
よしじゃあもう…。
はいご苦労はん。
離せ!おとなしいせえおとなしい!コラ!金がほしいんやったらなここで働け!寮もあるし飯もついとる!いやそんなアホな…。
いやいやまあまあちょっと待てや。
あのなあ…コラ!半年間給料なしや!それが嫌やったら警察に突き出す!
(岡村)おっちゃんなんであんなの雇うたのか。
いただきます。
あ…よかったら何か取りまひょか?どうぞお構いなく。
ほな失礼して。
でも少しだけ望月友也の事を見直しました。
4年間辞めなかったって事は根性はあったって事ですよね?他に行き場がなかっただけでっしゃろ。
友也には身元保証人もおらんかった。
親おらんのやないですかね。
食い物と寝る場所さえあればってわけや。
けどおっちゃんの事はほんま心配やなあ。
新聞はたまってないそうなんで旅行という事も…。
それはおかしい。
おっちゃん旅行嫌いや。
死んだ奥さんがなんぼせがんでも絶対腰上げんかった。
おっちゃん子供も付き合いのある親戚もおらん。
他に泊まりにいくようなとこもないはずや。
池内さん。
谷垣さんの事何かわかった?その事なんですが望月友也やっぱりただの住居侵入じゃなさそうですね。
こちらこの近くのアパートに住んでらっしゃる会社員の方なんですけど先月7月5日の夜谷垣さんの家を若い男がうかがってるのを見たそうなんです。
近所に聞き込みをしたところその日以来谷垣さんの姿を誰も見かけてないそうなんですよ。
誰もって…。
え…7月5日からならもう1か月以上も経ってますよね?それでその若い男がこの男に間違いないんですよね?
(高橋春美)はい。
それだけじゃないんです。
新聞販売所に確認したところ翌朝谷垣って名乗る若い男の声で今日から湯治に行くからしばらく新聞を止めてほしいって電話があったそうなんですよ。
そこまでわかっててなんでここでつっ立ってるのよ!我々もさっき覗いてみましたが争った跡はありません。
第一中にもし遺体があったら異臭がするはずですよ。
覗いただけで何がわかるの!すぐに捜査令状取りなさい!
(花岡)あれはいつやったかなあ…そや。
丹波に杉板運んだ帰りやから7月5日や。
夜中近くにな北嵯峨の山道を男がリヤカーを押しとってその上に青いビニールシートでくるんだもんが載っとったんですわ。
男の顔見ました?いや。
けどリヤカーには京都サンセイ製作所って書いてありました。
京都サンセイ製作所…。
(佐々部)ご存じなんですか?梅滝町にあるへら絞りの会社だ。
あ…ありがとうございました。
成増さん…!ルミノール反応がありました。
このリヤカーはだれが?よく使っとったのは友也かな?友也…?ええ。
ちょっと今すぐ呼んでください。
今三条署に捕まっとります。
1年前までうちの職人やってた谷垣っておっちゃんの家に忍び込もうとして。
そのおっちゃんと今も連絡がつかんのですよ。
この服に見覚えは?谷垣のおっちゃんがよう着てたもんや!
(佐々部)成増さん…!まさか…。
やっと令状が下りたんですよ!なのに谷垣さんの家の捜査を待てとはどういう事なんでしょうか?
(高原純之介)谷垣さんの自宅は今成増君たちが調べてるよ。
どうして成増さんたちが?北嵯峨で見つかった白骨遺体の事は知ってるね?はい。
ですがそれが今回の事件とどういう…?京都サンセイ製作所のリヤカーからその白骨遺体と同じAB型の血痕が見つかってね。
年格好など全ての情報が谷垣泰治さんと合致するそうだ。
じゃあDNA鑑定のために谷垣さんの家を?鑑定の結果遺体が谷垣さんだと断定された場合成増君は望月友也を事情聴取したいと言ってきてる。
つまり望月友也が谷垣さんを殺害したと…。
まあ全ての状況を考えるとそういう事に。
部長失礼します。
ちょっとあやちゃんどこへ?もちろん谷垣さんの家へ。
だから今成増君たちが捜査を…。
令状が下りている以上私にも捜査の権限はあります!私にも部下の暴走を止める権限があるんだけどなあ…。
(ため息)
(鑑識課員)出ました。
ここが殺害現場という事ですね。
で毛髪のほうは?ダメです。
指紋も検出されませんし…。
犯人は相当念入りに証拠を隠滅しているようです。
ああよしわかった。
よろしく頼む。
谷垣泰治さんの兄貴が浜松にいる事がわかった。
その兄貴と白骨遺体のDNAを調べて兄弟だとわかれば遺体は谷垣泰治さんの可能性が高い。
これで望月友也引っ張れますね。
んーまだ推測だけどな。
多分友也は4年間うっぷんをためていた。
それを晴らすために1か月前の7月5日谷垣さんを殺害。
念入りに証拠を隠滅し遺体を北嵯峨の山中に遺棄した。
そう決めつけるのはまだ早いわ!だとしたら住居侵入罪で池内さんに逮捕された夜望月友也はここで一体何をしてたの?谷垣さんのサイフと通帳がタンスの引き出しの中に入ってた。
だけどなぜか何も取らずに逃げてんだ。
谷垣さんの遺体が発見されないのをいい事に改めて金を盗みに来たって事ですか?どうして2人ともそう望月友也を犯人にしたいの?そっちこそさ友也をかばう根拠はこれなんなのよ?軍手よ!えっ?使い込んだ軍手に名前まで書いてきれいに洗って大切に使うような人が殺人を犯すなんてとても思えない!これ主婦の勘!軍手か…。
ちょっとちょっと!逃げる気?ちょっと表で話そう。
ちょっと…。
状況証拠だけでなぜそこまで決め付けるの?望月友也に非行歴があるから?成増さんらしくもない!あんたねえ友也の何知ってんだよ。
そっちこそ!俺はなあ友也が16の時からの付き合いなんだよ。
えっ!そうなの?ああ。
父親は友也が生まれてすぐに水商売の女と蒸発した。
母親にも男がいてな友也はその男を…。
(由美子)あんた!しっかりして!
(由美子)この子です!この子がやったんです!あんたなんかもううんざり!あんたなんか産まなきゃよかった!友也が少年院から出てきた時には母親はアパートから消えていた。
別の男と一緒にな。
望月友也…母親にも捨てられたのね。
だから誰にでも牙をむくようになっていった。
(男)やめて…ああっ!文句があんならさっさとどこでもぶち込めよ。
何やけになってんだよ!お前そんな自暴自棄になるんじゃないよ。
(成増の声)何を言ってもあいつの耳には届かなかった。
それでもな俺も一度は安心した事もあったんだよ。
あいつが京都サンセイ製作所に就職したって聞いて様子を見に行った時に…。
(友也)何すんだよ!じじいこの野郎!洗濯機に放り込んだって汚れは落ちへん!ええか?こうやって…洗濯板使うて1枚1枚…気入れてこうやって洗うねん。
どーせまた汚れんだろうがよ!軍手もこれ大事に出来んようなら職人にはなられへんなあ。
当分は工場の掃除や。
はい。
なかなか手ごわそうなじいさんだな。
けど辛抱しろよ。
辛抱すりゃお前人間なんとかなるんだから。
わざわざ説教しに来たのか?そんな暇じゃねえよ。
ちょっと通りかかっただけだよ。
じゃあな。
俺がぶっ殺してえやつ教えてやろっか。
あん?あんたとあのクソじじいだよ。
そんな牙をむいたって無駄だぞ。
あのじいさんには通用しねえよ。
俺を甘く見んなよ。
軍手ちゃんと洗えよ!ほらこうやって。
あのおっちゃんがついてりゃ大丈夫だってな。
それが谷垣さん…。
うん。
でも甘かったよ…。
あの時俺が気抜いたせいでさもう谷垣さんは…。
いやまだ殺されたと決まったわけじゃないわよ!それに望月友也少なくとも4年間はひとつの仕事を続けて頑張ったのよ!そのうちの3年間は谷垣さんに厳しく叱られながらも頑張った!そんな彼が殺人なんて…!友也はねそういうやつなんだよ…。
ちょっと成増さん…!ねえちょっと…ちょっと!
(鑑識課員)すいません。
あ…あ…!それ証拠品?はい。
室内に落ちてました。
ランプの笠みたいね…。
へこんでる。
これって…!
(岡村)へら絞りでこさえたもんやがうちの製品やないなあ。
(堀内)谷垣のおっちゃんにしては出来が悪いしなあ…。
ひょっとして友也が作ったんやないかなあ?あいついつも遅うまで工場に残ってたんで。
やっぱり…。
望月友也これを使って谷垣さんの言いつけを守り軍手を1枚1枚丁寧に洗ってたんだわ。
ねえちょっとこれ見て!これ全部へら絞りの技術よ。
これ谷垣さんからこの技術を盗もうとしてたんだわ。
「おっさんのように」…。
あいつ本気で職人になる気だったんだな。
望月友也地に足をつけてきちんと生活してた。
彼は成増さんが知ってた頃の彼じゃない。
4年間で変わったのよ。
なら…誰が殺したんだ?谷垣泰治さんを。
この笠からあなたの指紋が検出されました。
これはあなたが作ったものですよね?この笠がなぜ谷垣さんの家にあったのか…。
もしかしたらひと月前の7月5日の夜あなたは自分が作ったこの笠を谷垣さんに見せに行ったんじゃないですか?あなた谷垣さんのへら絞りの技術を必死に書きとめた。
谷垣さんの言いつけを守り洗濯板で丁寧に軍手を洗い大切に使った。
いつかは谷垣さんのような立派な職人になろうと思って。
やっぱりそうなのね?あなた谷垣さんにほめてもらいたくて…。
そうだよ。
ちょっとは俺の事見直す気になるかなと思ってさ。
北嵯峨で白骨遺体が見つかったんだって?あれ谷垣のじいさんかもな。
俺切れると何すっかわかんねえから。
(電話)はい。
お世話になります。
あそうですか…。
わかりました。
右京北署からです。
谷垣泰治さんのお兄さんと白骨遺体のY染色体が一致したそうです。
男兄弟は父親のY染色体をそのまま受け継ぐ…。
白骨遺体は谷垣泰治さんとみて間違いないわ。
そういう事になります。
(友也の笑い声)ほらだから言っただろ?
(笑い声)友也が自供したって?まだほのめかした段階なんですが。
今回ばっかりは主婦の勘も大外れですね。
そうか…。
あっそういえば成増さん浜松署から連絡ありました?いや。
実は…谷垣さんの甥も行方不明らしいんですよ。
(漆原さやか)うわぁ〜こんなぎょうさん!
(桜井麗子)そうなのよ。
本当男ってやつは物持ちがいいっていうかなんていうかもう…。
ねえあやさん!あやさんってば!
(吉川香織)ちょっとどないしたん?今日ずっと変やで。
心ここにあらずって感じやで。
ごめんごめん。
え…なんだっけ?
(麗子)だからうちの旦那がねキャバクラの名刺を隠し持ってたのよ!しかもこんなきれいにファイリングなんかしちゃって。
総数なんと108枚。
(柿野たまこ)まさに煩悩の塊。
(さやか)ほんまにひどいよね。
しかもこれをずーっと屋根裏に隠してたんやって。
あらららら…。
後ろめたかったんでしょうね。
な〜んか時々不自然に天井なんかチラ見しちゃって。
もうバレバレだっつーの!やっぱり犯行現場が気になるんですかね。
あやさんも気ぃつけたほうがええよ。
章ちゃんなんてもうなんでも隠したい放題よ。
章ちゃんに限ってそんな事はないわ。
男なんて単純だからね。
怪しい時は屋根裏か床下調べりゃいいのよ。
主婦の勘。
わぁ〜!えいっ!えい!ああ〜!もっといけ!もっといけ!
(携帯電話)
(携帯電話)あっ…。
(携帯電話)成増さん?おうおうなんだよ?この爽やかな格好は。
買い物の途中だったの。
何?ちょっとな気になる男がいるんだ。
えっ誰?谷垣泰治さんの甥っ子で名前は谷垣正雄。
50過ぎてもブラブラしてて75歳になる親に金をせびってたそうだ。
だがこいつがこの1か月一度も浜松の実家に姿を現してない。
住んでるアパートにも戻ってねえんだ。
それに7月5日以前に何度か泰治さんの自宅付近での目撃情報もある。
まさかこの谷垣正雄さんが叔父の泰治さんにお金を借りに行って…。
もめたあげく泰治さんを正雄が殺害。
でそのまま逃亡した可能性もある。
かあるいは…。
あるいは何?白骨遺体は本当に谷垣泰治さんなのか…?だってそれはちゃんとDNA鑑定で…。
調べたのはあのえーっと…。
何?Y…Yなんとか体なんだよ…。
何Y…。
何?なんだっけ?池内。
Y染色体です。
あそうそう。
Y染色体は確かに直系男子にそのまま受け継がれていきます。
だとすると正雄は自分の父親とその弟である泰治さんと同じY染色体を持ってるはずなんです。
じゃあ白骨遺体は谷垣泰治さんではなく甥の正雄さんかもしれないって事?今平林が正雄のアパートから採取した毛髪を科捜研で調べてもらってます。
(携帯電話)池内だ。
(平林)谷垣正雄さんのDNAと白骨遺体のDNAとが完全に一致しました。
谷垣泰治さんの自宅及びリヤカーから採取された血痕も谷垣正雄さんのものでした。
そうかわかった。
ビンゴです。
じゃあ谷垣泰治さんの自宅で殺害され北嵯峨に遺棄されたのは甥の谷垣正雄さん…。
でもだとすると…。
谷垣泰治さんは一体どこへ消えちまったんだ?おいちょっとどこ行くんだ?谷垣泰治さんの家よ!何か見落としてるような気がするの!ないわ。
やっぱりない!押収品リストにもない!谷垣さんが工場を退職した時大切に持ち帰ったはずのへらがどこにもない!おい池内。
お前友也を見つけた時あいつどこいたんだよ?確か…。
ここに潜んでいて我々が声をかけたらあそこから逃走しようとしました。
怪しい時は屋根裏か床下…。
まんざら嘘でもないかも…。
あれ?緩んでる。
ねえここ開けて!ん?あったよ。
こっちこっちここここ…。
なんで谷垣さんのへらを友也はあんなところに…。
(池内)これがもし凶器だとすると…。
えっ…?正雄を殺害したのはやっぱり友也か…?だとしたらこんなふうに大事にタオルで包んで隠す必要なんてないわ。
どっかに捨てればいいだけなんだから。
どういう事だ…。
これ…!?彼は守りたかったんだわ…。
北嵯峨で発見された白骨遺体は谷垣泰治さんではなく甥の谷垣正雄さんである事が判明しました。
だったらなんだよ?川喜多。
はい。
谷垣泰治さんが使っていたへらです。
正雄さんの遺体の頭蓋骨の陥没痕と形状が一致。
凶器と断定されました。
全部わかっちゃったんだ。
全て話してくれますね?つまりこういう事。
1か月前じいさんちに行ったら知らねえ男が1人で酒飲んでてよ…。
俺が持ってったランプの笠にケチつけてきて。
あげくに蹴っ飛ばしやがってよ。
だからそのへらでぶっ殺してやったわけ。
(井森)それが谷垣さんの甥の正雄さんだった。
それからどうしたの?へらを通風口に隠して遺体を北嵯峨に捨てた。
んでじいさんちに戻って掃除機をかけ指紋を拭いた。
そんなに念入りに証拠を隠そうとしたのに凶器のへらは捨てずになぜ通風口に隠したりしたの?夢中だったんだよ!指紋のついたランプの笠を置きっぱなしにしたのも夢中だったから?疑問はまだあるのよ。
正雄さんの遺体には泰治さんの衣服が着せられていた。
着替えさせたのはあなたですよね?一体どうしてそんな事をしたの?答えられなければ私が言いましょう。
あなたにはどうしても正雄さんを泰治さんだと思わせる必要があった。
それしか泰治さんを守る方法がなかったから。
なんで俺があのクソじじい守んなきゃなんねえんだ。
あなたにとって谷垣泰治さんはそれほど大事な人だった。
てめえ!ぶっ殺されてぇのかよ。
わしを殺しても世の中なんも変わらんぞ。
お前が刑務所で一生を棒に振るだけの話やで。
世の中なんかどうだっていいんだよ!俺は大人たち全員ぶっ殺してぇだけなんだよ。
人を憎む暇があったら仕事せい!仕事!仕事を覚えて自分を変えるんや!てめえが何教えてくれた!掃除ばっかさせやがって!仕事は目で見て覚えるもんや。

(泰治)人を殺すのはアホや。
人を憎むのもつまらん。
つまらん事はせんこっちゃ。
あなたはどんな大人も信じられなかった。
だから全ての大人に牙をむいてきた。
でも谷垣さんと会ってあなたは変わった。
(友也)おはようっす…。
聞こえんな。
年寄りは耳が遠いんや。
おはようっす!おう。
あなたは初めて大人を信じようとした。
いい加減にしてくれよ!頭に血が上ってじいさんちにいた男をぶっ殺した!俺はなんも変わっちゃいねえんだよ!あなたの供述が事実なら一体谷垣泰治さんはどこにいるの?なぜ姿を現さないの?知らねえっつーの!あんなクソじじいの事なんか。
(電話)はい。
検事に代わります。
成増刑事です。
はい鶴丸。
やっぱりそうだよ。
姿を現さなかったんじゃなくて現せなかったんだ。
わかった。
すぐ行く。
望月友也を連れて…。
どこへ行くかはわかってるわね。
検事…望月友也を連れて行くというのは?まさかこいつをここから連れ出す気じゃないでしょうね?いやそれは絶対いけません!いいから言うとおりにして。
責任は私が取ります。
脳梗塞の手術のあとやっと意識が戻ったがまだ言葉が出ない。
体も動かせないそうだ。
谷垣さん京都地検の鶴丸です。
望月友也さんを連れてきましたよ。
ああ…。
なんですか…?なんですか?谷垣さん。
私が殺しました…。
(泰治)甥の…正雄を…私が…。
何寝ぼけた事言ってんだよ!ふざけた事言うとぶっ殺すぞ!クソじじい。
あなたわかってるんでしょ?知ってたでしょ?谷垣さんの気持ち。
見たでしょうこのへら。
知ってたんでしょ?谷垣さんの名前の横に新たに彫られたあなたの名前。
見たでしょう?谷垣さんにとってあなたは息子だったのよ!自分の勲章であるこのへらを託せるたった1人の息子。
そのあなたに自分の罪をかぶせて谷垣さんが喜ぶとでも思ってるの?そんな事をしたら一番苦しむのは谷垣さんなのよ!全部話せ。
な?それが谷垣さんのためなんだよ。
おっさん…。
(友也の声)おっさんが辞めてからも俺の耳にはいつもおっさんの声が響いてた…。

(友也)人を憎む暇あったら仕事せい。
仕事を覚えて自分を変えるんや…。
(友也)1年かかってやっと思うようなものが出来ておっさんに見せに行った。
けどなんつっていいかわかんなくてさ…。
(ため息)なんだよ…。
(谷垣正雄)これぽっちの金で帰れるか!
(正雄)そっちは年金ガッポリ。
けどなこっちはお先真っ暗なんだよ!
(友也)おい!
(友也)何やってんだよ!なんだてめえは!てめえ…。
なんだ?こりゃ。
(友也)触るな!おっさんも俺もそのへら絞りに命懸けてんだよ。
なんだこんなもんただのガラクタじゃねえか!な?この野郎!やめろ!友也!ぶっ殺してやるよ。
うああー!
(殴る音)ああ…。
おっさん…。
死んでる。
警察へ電話せい。
ええから…電話せい…。
(友也)おっさん…?おいおっさん!おい!おいおっさん!おい!どうしたんだよ?おっさん!おい!大丈夫かよ!
(友也の声)頭の中が真っ白で…。
けど遺体をどうにかしなきゃって思って。
どうしても…どうしてもおっさんを殺人犯にしたくなかった。
でも遺体をどこかに捨てたところでいつかは発見される。
遺体の身元がわかったら足取りを調べられ谷垣のおっさんが疑われる。
(友也の声)だから遺体を谷垣のおっさんと思わせようとした。
そのためには白骨化する前に見つかってはまずい。
だから北嵯峨の山中に遺棄したのか?
(友也の声)おっさんち戻って夢中で証拠を消しました。
ランプの笠をそのままにしたのは万が一捜査の手が谷垣さんに及んだ時あなたがその罪をかぶるつもりで…。
でも2人の名前の彫られたへらだけは捨てられなかった。
白骨遺体が見つかったってニュースで聞いて…。
へらだけは絶対に誰にも渡したくなかった。
(池内)あんたそこで何やってるんだ!
(池内)おい!おっさんは人殺しになんかなっちゃダメなんだよ。
人殺しは俺のほうが似合ってるんだよ!バカ言うんじゃない!谷垣さんはなお前を人殺しにしないために自分でやったんだよ。
谷垣さんは50年間へら絞り一筋に生きてきた。
あのへらは谷垣さんにとって勲章だったんだ。
そんな大事なへらを凶器に変えてまでお前を守りたかったんだよ。
俺は…どうすれば…。
笠を。
はい。
おっさん…。
まだまだや…。
褒めてもらうまでにはあと10年はかかりそうだな。
住居侵入容疑については不起訴。
死体遺棄と証拠隠滅容疑であなたを起訴します。
しっかりと裁判を受けてください。
はい。
でもあなたには未来がある。
谷垣さんが守ってくれた長い未来があるのよ。
あいつこれからは大人を信じる事が出来ますね。
うん。
きっとまっすぐ歩いていってくれるわ。
うぅっ…でも私は信じられなくなりました。
ん?今度の事件の最初の取り調べの日検事と私お昼抜きで捜査に行きましたよね?う…うん。
帰ってきたらくずかごの中にこれが入っていたんです。
百々楽って…これうなぎの老舗じゃないの!検事と私が炎天下のもと走り回ってる間に井森さん1人でうな重取って食べてたんですよ。
嘘!?検事外は蒸しますよ。
ちょっと井森さん!ねえ説明して!私たちがお昼抜きで働いてる間…。
うな重食べたんですよね?ねえ肝吸い付きだったの?松?竹?梅?いくらの?
(井森)3800円…。
(2人)高ぇ〜!2014/05/14(水) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
科捜研の女11 #12+京都地検の女8 #4[再][字]

科捜研の女11 #12「消えた死体!ポリグラフ検査の罠!!DNA鑑定の死角」
京都地検の女8 #4「死体なき殺人の謎!!DNA不一致の罠…」

詳細情報
◇出演者1
【科捜研の女11 #12】
沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美 ほか
◇出演者2
【京都地検の女8 #4】
名取裕子、寺島進、笹野高史、蟹江敬三 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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