「NHK俳句」第2週の選者は小澤實さんでいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日の兼題は「卯の花」ですけれど小澤さん最初の冒頭の句は?いつもの葉書はいつもはボールペンで書くんですけれども万年筆で書くというとちょっと丁寧な感じになりますね。
卯の花の白でインキの色が映えるんじゃないかなと思います。
そして卯の花には辺りを清めるという効果があるので自分の気持ちが相手に届いてほしいというそんな思いも込めて取り合わせてみました。
今日もよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
ゲストをご紹介致します。
今日は歌人の穂村弘さんにお越し頂きました。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
穂村さんは今最も注目を集めてらっしゃる歌人なんですが短歌だけではなくてエッセイ小説そして絵本の翻訳と多岐にわたって活躍してらっしゃいますけど今はこちら去年刊行されましたこの絵本「えほん・どうぶつ図鑑」話題です。
横尾忠則さんの絵に僕が文章をつけさせてもらった絵本なんですけど。
結構絵を切り抜いて遊んだりもできる面白い絵本です。
いかがでした?おやりになって。
先にもう絵があったのですごく緊張しました。
ホントにすてきな絵本ですけれども。
ホントに幅広く活躍してらっしゃる穂村さんでいらっしゃいますが小澤さんとはプライベートでも親しいんだそうですね?ある会でご一緒して短歌とか現代詩とかいろんな詩型を作り合うという会だったんですけれども斬新な作品を作られてそして鑑賞も非常に明確で引き付けられたんですね。
そして親しくして頂きたいなと思って。
一緒にごはんとか食べたりも。
小澤さんのおうちでごはん頂いた事あるんですけど器がみんな金継ぎされていて全てそうだったので衝撃を受けた覚えが…。
全部金継ぎって不思議じゃないですか。
1つ2つなら分かりますけれどね金継ぎお好きなんですよね?金継ぎ好きです。
骨董もお好きですし。
今日はそういうお二方に…。
実は小澤さんは穂村さんに俳句と短歌の違いについて伺いたいと?そうですね。
その辺りを明確にしたいと思ってゆっくりお話伺いたいと思っております。
長さはもちろん違ってそれはみんな知ってるんですけどそれ以上に何か自由になるスペースが違うような気がするんですね。
俳句は季語がありますでしょ。
季語がいるともともと短いのに季語を入れて更に残りの部分も季語との関係で書かれる事になりますよね。
だから全く自由に書いていい部分ってないと思うんですけど。
少ないですよね。
有季定型の場合。
短歌は基本全部好きに書いていい訳なのでその違いってすごく大きいなと思います。
それ以外にも多々あるという事でまた後ほどよろしくお願い致します。
それでは入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
白い花と白い割烹着を取り合わせているというのが大胆です。
その白と白の取り合わせによって微妙な白の違いが見えてくるのがすばらしいと思いました。
お互いを白を引き立て合ってる感じですよね。
そして微妙な違いも確かに出てくるとじんわりと出てくると思うんですよね。
今度は2番です。
卯の花の見える縁側で茉莉花茶を飲んでいるという優雅な句なんです。
「卯の花」「茉莉花」という2つの植物を出すというのはちょっとルール違反なんですけれども一方は生きている花で一方はお茶にしたものだという。
それで一句に入れているというのはなかなか巧みだと思いますね。
香りも両方してきますね。
そうですね。
これは香りの取り合わせにもなっています。
卯の花の香りも茉莉花茶の香りが引き出してますよね。
今度は3番です。
「赤ちゃんコンクール」という長い言葉をうまく入れましたね。
七五に折り込めました。
そして卯の花には魔を祓う力があるんですけれども。
この「卯の花」によって赤ちゃんの顔がちょっと照り映えて見えるような赤ちゃんの未来に栄えあるようなそんな気がする句ですね。
「赤ちゃんコンクール」という言葉がいきなり出てきてすごく新鮮な驚きがありますね。
今お話聞いてやっぱり「卯の花」じゃないとほかの花じゃ駄目なんだなというのが分かりました。
そうですね。
ひまわりじゃ駄目だというところがありますよね。
今度は4番です。
卯の花を眼前にしていて懐かしい父の厳しさと母の優しさを思い出しているという事だと思います。
「卯の花」の投句というのは卯の花の唱歌を思い出すという。
あの・「卯の花の」そうですね。
それをすぐ皆さん思い出されてその事を直接詠まれた句がものすごく多かったんです。
でもやっぱりそれは生であってこういうふうに一つひねって表現されないと作品にはならないという事だと思います。
きっとお母さん歌ってらっしゃるんだもしかしたら。
卯の花の。
この歌を歌ってらっしゃったんでしょうね。
それも出てきますよね。
「げんこつ」と「唄」というのが飴と鞭みたいな感じで面白いなって思いますし。
やっぱりこれどこにも思い出とか書いてないのに懐かしい感じがすごくしてこの花は何か記憶の中に咲いているそんな花なんでしょうか。
そうですね。
現実の花であり記憶の中の花であり。
二重に。
重層的に存在してるんでしょうね。
すごいすてきですね。
今度は5番です。
「発光す」という所に驚きました。
ちょっと異様な特別な「露地」というものが出たんじゃないでしょうか。
あの卯の花の持っている不思議な力というものを見せてくれてると思います。
今度は6番です。
「どかつと活けて」このどかっとという形容が相撲部屋にふさわしいと思って。
楽しい句ですね。
全く予想外の最後何が出てくるのかと思うと…。
何かお花とか見てる余裕がないのかと思ってたけどちゃんと飾ってあったんでしょうかね。
相撲部屋にね。
お相撲さんの体もまた想像されるんですよね。
あの卯の花の質感から。
どかっと活けてある。
ふわっとした感じで。
今度は7番です。
雨の日に書架を整理している訳ですね。
そして卯の花が見えているというそんな句だと思います。
静かな生活で憧れる句ですね。
これも切れ字が使われてるんですけど僕らふだん短歌しかやらないので切れ字って出てくるとちょっと身構えてどう読むんだろうって思っちゃうんですよね。
この句なんかでも卯の花は実際にはどこにあるのかが分からないんですけどこれはどこにあるものとして読んだらいいんですか?書斎に活けてあるというふうに読んでもいいと思うんですけれどもこれは書斎の窓から見えている雨に打たれている卯の花と読みたいと思いますね。
実際にある?実際にある。
雨に打たれて動いているあの卯の花が室内の静けさというものを強調しているようなそんな気もします。
さっき「げんこつ」と「唄」の時も記憶の中だけに咲いてるんじゃなくて現物もあるっておっしゃってましたけどこの「や」がくる時って必ずその実物を意識されて使われるものなんですか?はい。
眼前にあるという事が句を強くしていると思います。
「今」というものを「卯の花」で表現しているという。
「現在」?「現在」という事ですね。
「や」の効用?「や」の効用の一つですね。
「今」という事を強めて打ち出すという。
さあ次は8番です。
鎌倉へ入っていく切通しに卯の花が咲いているという句なんですけれども「いざ鎌倉」という言葉が立ち入れられている事で深みが出ました。
かつて鎌倉時代武士たちが何か一大事があると「いざ鎌倉」と言って集まってきたという。
それが背景に見えてきますよね。
「いざ鎌倉」がその時間感覚で「切通し」が多分現在の空間性だと思うんです。
という事はこれも「卯の花や」で「や」だから今も目の前にあってその鎌倉の武士が駆けつけた卯の花が思いの中にあるそんな読みでいいですか?そうですね。
そのとおりだと思います。
二重の?二重の卯の花ですね。
今度は9番です。
旧家をちょっとのぞいてみたら蔵に美容院が営業されていた。
それではっとしたという事ですね。
卯の花は変わらないんですけれども蔵は美容院として利用されているというところで。
この「美容院」を出してくるというのもなかなか自在な下五だと思います。
よく和食処とかお食事の所はありますけど美容院。
美容院は初めて見ましたね。
以上が入選句でした。
では特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧頂きます。
我が家にも樹齢100年ぐらいの老木がありますが人と同じでさすがにこのごろはあまり花をつけなくなりました。
「ほたえ死」とは遊び暮らして死ぬ事をいいます。
そうですねちょっとあまり真面目じゃなかったんですね。
昔の人間としてはやりたい事を一応やって。
少し…舞踊の弟子入りしたりしましてね。
(文挟)三好達治の詩に「太郎を眠らせ太郎の屋根に雪降りつむ」というのがありますがこの詩を受けて太郎次郎は永遠に子どものままでこの詩の中に生き続けるという事を詠んだ句です。
あのね一番上に写真が。
それで何しろ博学でどういう事でも伺えばお答えして頂けるという最高の先生だと思います。
それでは特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?沼尻功さんの句です。
二席の句です。
瀬谷直明さんの句です。
一席はどちらでしょう?加藤いろはさんの句です。
この「割烹着」のまだ濡れている時の白と干して乾いてからの白の違いというのもあの「卯の花」を置いた事によって見えてくるような気がしました。
卯の花の匂いと干したお日様の匂いも…。
そうですね。
複雑な味わいのある句ですね。
そうですね。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらNHKの俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
それでは続きまして入選の秘訣です。
ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
今日は上五下五共に名詞の場合気を付けたいというお話をしたいと思います。
こちらの句ですね。
姉妹が同じランドセルをしょって小学校に行く。
その背景に卯の花が咲いているという句です。
この「花卯木」と「ランドセル」両方とも名詞になっていてこうして見ますと左右対称になっていますね。
両方とも名詞が中七を挟んでいると。
この形があまり喜ばないんですよね。
非対称にしたいところがあって。
俳句の場合は?はい。
それでこの上五「花卯木」を「卯の花や」とします。
そうすると左右対称が崩れて非対称になります。
更には「花卯木」「姉妹」という事で名詞名詞の間で名詞を並べる事によって切れを生まれさせていたんですが「や」を「卯の花や」という事でその切れが更に深まるといういい点もありました。
ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
では皆さんからの投稿のご案内です。
それでは続きまして小澤さんの年間テーマ「季語について考えておきたいこと」ですね。
前回は季語の連想させる場所についてお話ししたんですけれども今日はもう一つの大事な点の時間についてお話ししたいと思います。
季語の中に時間というものが含まれているものがあります。
子規はよく卯の花を観察されてます。
押し合って枝と枝が押し合ってそして咲きこぼれている。
まさに満開の卯の花の量感を捉えている句だと思いますね。
何か子規の身近な命みたいなものまで投影されてるような名句だと思うんですけれども。
この句の中には時間は全く書かれてないんですけれども私たちはこの時間から昼という時間を受け取る事ができます。
どうしてですか?それはこの描写を受け取るという押し合っているまた花が咲きこぼれているというのは昼の明るい時間でなければ見えないですよね。
という事からこの句は昼の卯の花であるという事が分かる訳ですね。
「卯の花」のみならずさまざまな花の季語がたくさんありますけれども。
俳句の「歳時記」には花の季語がいっぱい載ってますけれどもその花の季語というのは全て昼の時間というものを含んでいると言ってもいいと思います。
鑑賞する時とか作句の時には花の句を詠む場合には昼の時間を表すものを含んでるものとして詠みたいし。
例えば朝の花を詠みたかったり夜の花を詠みたかったりという時には改めて別の朝とか夜とかそういう言葉を入れて詠みたいですよね。
そんな事も季語を使う一つの大事な点ではないかと思っております。
時間の大切さ?はい。
季語に含まれる時間の大切さという事をお話ししました。
ありがとうございました。
さあここからは冒頭穂村さんに俳句と短歌の違いという事で少し伺いましたけど改めて伺いたいんですが。
詳しくお願いしたいですよね。
じゃあ例句をちょっと見たいと思います。
これ小澤さんの有名な句ですね。
「夏芝居」は季語で「物某」が人名なんですよね。
そうすると残りは五文字だけ。
この句の面白さってその五文字で何をするかで「出てすぐ死」。
「出てすぐ死」って物さんが死んじゃったというのを五文字の凝縮された中で形式と内容が一体化してるという感じがしますね。
その魅力だなと。
次の句を。
これも小澤さんの句なんですが名詞の漢字を除くと「の」と「に」しかないんですよね。
だからこれは文語なのか話し言葉の口語なのかは分からない。
これだけでは。
こういう事は俳句ではよくあると思うんですが短歌ではあまりないんですね。
短歌の例をちょっと見て比べたいんですけど。
16歳の女の子の歌ですけど。
全く違いますね。
あの凝縮された形式を生かすというやり方ではなくてリズムに乗って話し言葉でいくというのかな。
この違いがやっぱりすごく大きいなと思います。
話したままとにかく口語で書いてありましたよね。
今の文語だと思う人いないですからね。
若い子の話し言葉だっていう。
俳句は何も言えないですよね。
五文字…「物某」の方は下五で何かやるしかないし。
あそこですごい技を見せるしかないという。
「白鳥」の方は助詞をどう動かすかだけですよね。
だからそこにすごさと魅力を感じる人が俳句に引き付けられるんだろうし何か言いたい事がダ〜ッと言いたいという人は短歌向きかなと思うんですけどね。
短歌というのは自分自身というものが表現できる詩なんですよね。
あのスペース短いようで意外と長いんですよね。
俳句はやっぱり季語に対する意識を捨てられないし有季定型の場合。
そうすると何か違う…どんな喜びですか?そこにある…。
自分自身を表現しようというのは無理かもしれないですよね。
それよりも「季語」という謎であるとか先ほどもやりました「や」という切れ字という室町時代から使ってる言葉なんですけれどもその謎と向き合って自分なりに解きほどいていくというんでしょうかね。
そういう面白さを…。
その辺を面白いという楽しみ方になるんでしょうかね。
さっきの「物某」もあそこ字余りじゃないですか。
「物某」。
バ〜ッと膨らんでおいて「出てすぐ死」ってこう…。
そうするとカックンて効果がより出ますよね。
だから僕わざと字余りなんだなと思って読むんですけどね。
そういうホントに一音の技というかその辺にやっぱり俳句を読む時はすごく意識がいきますね。
大事でない言葉がないんですよね俳句は。
短歌もそうなんでしょうけども。
そして自分よりも言葉が大事だというところがあるんじゃないでしょうかね。
言葉の方がずっと長生きしている言葉を使っていく事が多いんですけれども。
生まれた時に季語ってありますからね。
僕それは何かすごい恐ろしいように感じるんですよね。
恐ろしい?やっぱり自己表現のイメージが表現にはあったので。
でも季語って僕なんかとは何の関係もなく昔から存在していてそれに対して「態度を決めろ」って言われる。
その恐ろしいものだという意識も逆に俳人は大事かもしれませんね。
無意識に使ってるところがあるので。
今日は歌人そして俳人の小澤さん穂村さんにそれぞれの魅力といいましょうか違いも一方で魅力ですよね…伺えました。
ホントにどうも貴重な時間ありがとうございました。
今日は歌人の穂村弘さんにお越し頂きました。
ありがとうございました。
小澤さんまた次回よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
2014/05/14(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「卯(う)の花」[字]
選者は小澤實さん。ゲストは歌人の穂村弘さん。短歌だけでなく、エッセイ、小説、絵本の分野でも活躍中の穂村さん。小澤さんと短歌と俳句の未来について語り合う。
詳細情報
番組内容
選者は小澤實さん。ゲストは歌人の穂村弘さん。短歌だけでなく、エッセイ、小説、絵本の分野でも活躍中の穂村さん。小澤さんと短歌と俳句の未来について語り合う。題「卯の花」【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】穂村弘,小澤實,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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