沈没した旅客船「セウォル号」の実質的な船主である兪炳彦(ユ・ビョンオン)前セモ・グループ会長(73)の長男・大均(テギュン)氏(44)、次男・赫基(ヒョクキ)氏(42)、長女ソムナ氏(48)、次女サンナ氏(46)の4人が、そろって行方をくらませたことが12日までに分かった。
検察はこの日、大均氏が午前10時に行う予定だった事情聴取に応じなかったため、大均氏が滞在しているとされる京畿道安城市の「クムスウォン」に捜査員を派遣したが、大均氏には会えなかった。クムスウォンは兪炳彦氏が指導者を務めるとされる宗教団体「キリスト教福音浸礼会(通称:救援派)」の施設だ。大均氏はセウォル号の運航会社・清海鎮海運などの系列会社の経営に携わる中で、背任や横領などの犯罪を犯した疑いが持たれている。検察の関係者は「系列会社数十社を私物化し、専横の限りを尽くしてきた兪炳彦氏一家が、社員や救援派の信徒らを動員し、法の執行をあざ笑っているようだが、相応の不利益がもたらされることを覚悟すべきだ」と話した。
検察はこれに先立ち、米国に滞在している赫基氏やソムナ氏に対しても3回にわたり出頭を要請したが、これまで応じていない。赫基氏とソムナ氏は現在、連絡が付かない状態で、メキシコなど第3国に逃亡したとのうわさも流れている。
一方、検察はこの日、兪炳彦氏の系列会社であるタパン社の幹事キム・ドンファン容疑者(48)と、ヘマトセントリックライフ研究所代表のオ・ギョンソク容疑者(53)を逮捕した。検察の関係者は「側近らはおとなしく逮捕される一方、子どもたちは事情聴取に応じず、連絡もつかないというのは、何か筋書き通りに動いているように思える」と話した。
この日午後、ソウル市瑞草区瑞草洞の大検察庁(日本の最高検察庁に相当)の庁舎前には、兪炳彦氏の会社関係者や救援派の信徒約500人(警察の推計)が集まり、大規模なデモを行った。会社関係者や信徒らは「何かを隠すために魔女狩りをしているのか」「宗教弾圧であることは世界中が知っている」などと書かれたプラカードを掲げ、大検察庁に向かって「戦おう」と3回ずつ叫ぶのを数十回繰り返した。
検察は事情聴取に応じない大均氏に対する逮捕状を請求し、強制捜査に乗り出した。
一方、検察と海洋警察の合同捜査本部は、セウォル号の乗客たちを船内にとどまらせ、救助を行わなかったイ・ジュンソク船長(69)=逮捕済み=らに対し、殺人罪を適用し起訴することを前向きに検討している。
また、海洋水産部(省に相当)はこの日、清海鎮海運が独占的に運航してきた済州-仁川航路の旅客運送事業免許を取り消した。