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亀岡スタジアム  持続可能な運営策示せ

 京都府の山田啓二知事は、2万5千人収容の球技専用スタジアムの建設地を、JR亀岡駅に隣接する農地(亀岡市)と決めた。2017年度の利用開始を目指す。
 候補地はこれまで二転三転し、府の有識者委員会は亀岡市と京都市伏見区横大路、城陽市木津川右岸公園の3案に絞ったが結論を出せなかった。亀岡市の熱心な誘致に加え、府北中部振興の狙いもあって山田知事が政治判断した。
 球技場建設を要望してきたサッカーJ2京都サンガやラグビー、アメフットの関係者からは歓迎の声が上がっている。京都のスポーツ文化の新たな拠点として、地域に活気をもたらしてほしい。
 ただ、建設に踏み切る前にクリアすべきハードルが多い。
 まずは100億円以上と見込まれる建設費だ。府が負担する予定だが、サポーターや府民の協力を得ることも検討してはどうか。
 ガンバ大阪の場合、新スタジアム建設資金を市民や企業が募り、半年で目標額140億円の約半分を集めた。行政の負担を軽減できるだけでなく「わがスタジアム」の意識も高められるだろう。
 最大の課題は完成後の維持管理だ。全国の公設スタジアムの経営状況をみると、年数億円の維持費に対し、入場料や広告などの収入が1億円未満のケースが多い。赤字は自治体の持ち出しになる。
 後発の亀岡が同じ轍(てつ)を踏んではなるまい。カギは観客数と施設稼働率のアップだ。
 サンガの試合拠点が便利な京都市内から移ることで、まず懸念されるのは観客の減少だ。
 新スタジアムは京都駅から電車で20分ほど。京都第二外環状道路の供用開始で京都市内や府南部から車によるアクセスも良い。そうした利便性をPRし、亀岡への心理的距離感を縮める必要がある。
 試合がない日の収益確保も重要だ。Jリーグのホーム試合数は年30試合もなく、これだけで黒字化が無理なのは明らかだ。
 札幌ドームやホームズスタジアム神戸のように経営状態の良い施設はホテルやショッピングセンター、レストラン、ジムなどを併設し、多彩なイベントを催している。
 にぎわってこそ経営が成り立ち、地域も潤う。魅力あふれる施設にするには、規制緩和で民間活動の自由度を高める方法もあろう。
 府の財政状況は甘くない。採算性を詰め、持続可能なスタジアム運営モデルを府民に示す必要がある。それが「なぜ亀岡なのか」という疑問に対する答えにもなるだろう。運営の見通しが立たないなら、建設地や計画自体の見直しに立ち戻る勇気も持つべきだ。

[京都新聞 2012年12月28日掲載]

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