指揮者だって人間だ

晴れた日には洗濯を。

スコアを読む楽しみ

クラシック音楽館でやっていたN響の演奏がすばらしかったため、ドヴォルザーク交響曲第7番のスコアを買いました。
ドヴォルザークは民族楽派だけあってメロディーが耳に残りやすいですね。

気に入った曲はこうしてちょいちょいスコアを買っているのですが、楽譜って音楽の設計図なので、図面を読み取ることができる人にとっては発見の連続でめちゃくちゃ面白いです。
耳で聞いているだけでは到底わからない細かい指示とか、「え!そんな楽器使ってたの!?」とか発見がたくさん。
いつまでも見ていられます。

スコア ベートーベン 交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付」 (Zen‐on score)

スコア ベートーベン 交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付」 (Zen‐on score)

音楽をソフトウェアに例えるなら、楽譜はソースコード
コードと優秀な実行環境さえあれば、古いコードであっても再現することができます。
指揮者はさしずめコンパイラでしょうか。
コンパイラと実行環境がよくないと実行途中で止まったりしますけどね。
魅力的な作品を見つけた時に、その元となったコードを見ることができるってすごいことだと思うのです。

特に近代の作品は楽譜を眺めているだけで面白い。
ストラヴィンスキー春の祭典はどのページにも発見があると言われたりもしますが、本当に「ここでこう持ってくるのか!」と読み物としても最高です。
終盤の 5/16,4/16,2/16,3/16,5/16,4/16 と拍子がめまぐるしく変わるところなんか最高。
バストランペットなどの変態編成もいいですね。

ラヴェルもいい。
スイスの時計職人と呼ばれるほど計算され尽くした楽譜を書いたラヴェルですが、楽譜ももちろんグレート。
種種の楽器の限界を知っていたラヴェルだからこそ、ボレロ展覧会の絵であれだけ色彩豊かな音色を管弦楽から引き出すことができたわけです。
ラヴァルスでは「ヴァイオリンはここからひとりずつ弱音器を外していってここで全員外れる」とかの注意書きもあって、スコアを読み解くと精緻なオーケストレーションの裏にある細かい仕事が見てとれます。
楽しい。

あとCDじゃわからないだろーというのがチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」第4楽章。
メロディーとハモりを第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンが弾くのですが、それぞれがメロディーパートとハモりパートを一音ずつ交代しながら演奏するのです。
(この説明伝わるかな?)
当時のオーケストラは向かって左手に第1ヴァイオリン、右手に第2ヴァイオリンがいたのでメロディーが左右交互に聞こえる効果を狙ったのだとか、メロディーとハモりを1音ずつ弾くことで音の跳躍が大きくなり粘りのある悲壮感を出したかったのだとか諸説ありますが、これも楽譜を見ないとまずわかりません。

古い自筆譜をどう解釈するかなんていう問題もありますよね。
有名なのはシューベルトの未完成交響曲に書かれている、アクセントかデクレッシェンドか判別がつきにくい記号です。
もはやここまで行くと古文書とかダヴィンチコードのような話になってきます。
どっちが意図通りの指示だったのか、と。

古い楽譜は著作権が切れているから安いのか、と思いきや意外と高いです。
ポケットスコアでも交響曲であれば普通1500円くらいはします。
もっと安くてもいいと個人的には思うんですが。
著作権の切れた楽譜は、国際楽譜ライブラリープロジェクトのページから見れたりもしますので、ちょっと見たいだけのときはここを使うと便利かもしれません。

IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

ここはすごい。
有名な作曲家の作品で古いものはほぼ全て見れます。
著作権がまだ存在するものが勝手にアップロードされていることもあるそうですので、個人で楽しむ以外のご利用は慎重に)

ああ、久しぶりに完全に趣味に走った日記だった。
たまにはいいよね。

Stravinsky; The Rite of Spring (Dover Miniature Scores)

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No.256 ラベル/ラヴァルス (Kleine Partitur)

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