父子手帳:自治体が本腰「父親への啓発」 パパの本音満載
毎日新聞 2014年05月09日 09時33分(最終更新 05月09日 13時16分)
育児に積極的に関わりたいパパ、それを望むママが増えている。そんなパパたちの取っ掛かりにと「父子手帳」を作製する自治体が次々と登場している。手帳の広がりや内容の変化の背景には、地域の固有の子育て事情や育児環境の変化が見えてくる。
◇体験談など満載
さいたま市は今年3月、父子手帳を改訂した。以前は赤ちゃんの病気などを説明した教科書的なものだったが内容を一新。先輩パパたちの失敗談や苦労話など本音を満載し、育児を応援する地元の人たちの声も取り上げ、父親たちに外に出て人や自然と出合うことを薦めている。
市の委託を受け、手帳の企画・編集を手がけたNPO法人「ハンズオン! 埼玉」の西川正さん(47)は「自分が育児書で一番読んだのは体験談。家庭の事情はさまざまなので『こうすべきだ』というより、いくつか例があった方が参考になると考えた」と編集方針を明かす。
西川さんは、手帳に父親たちの生の声をいかすため、市内のパパグループ「さいパパ」に協力を求めた。
さいパパのメンバーは毎月1回、水曜日の夜に「しゃべりばナイト」を開いている。4月の会をのぞいてみると、十数人が集まり、悩みや本音を語り合っていた。
「『あなた0点!』って妻に言われたんですよ」「子どもの熱が下がらなくて。心配なんだけどどうしていいか……」「娘の幼稚園の卒園式で、妻にはちゃんと写真やビデオを撮れって言われる。ぼくは生で娘を見ていたいのに」−−。
参加者の一人は「ここに来ると仕事以外の人と会える。子どもをきっかけに世界が広がった」とパパ友の大切さを語る。
さいたま市は転勤族や「埼玉都民」といわれる都心への通勤者が多く、隣近所のことをよく知らない父親たちもいる。西川さんは「子どもと一緒に散歩に出て、地域の人たちと触れ合ってほしい」と手帳が地域に目を向けるきっかけになることを期待している。
◇漫画で解説も
「どぎゃんしたらよかと!(どうしたらいいのか)」。赤ちゃんがやってくることに対する戸惑いをお国言葉を交え、正直に表しているのは、熊本県が発行する「すきすきパパ手帳」。「遊びの中で『がまん』や『ルール』を教えることもパパの大切な役割」として社会性を身につけるための遊びを紹介している。
「まんが王国」を自任する鳥取県は、パパの存在意義や職業別の悩み、育児ストレスなどを30話の4コマ漫画で解説。それぞれの解決策を示している。