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桜の季節が訪れた高線量の浪江町~これでも原発事故は過去の出来事か?(鈴木博喜)

2014年05月13日

福島の山-2

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【目立つ除染作業員の姿】
 トンネルを抜け、昼曽根地区へ。南相馬市原町区に続く県道49号線の「原浪トンネル」の手前で、2人の男性が除染作業をしていた。軽く会釈を交わし「体調は大丈夫ですか?」と尋ねると、1人の男性が黙ってうなずいた。回収した草木や土をフレコンバッグに移し替えている。砂ぼこりが激しく舞い上がった。
 何度も訪れている同地区だが、東北電力の水力発電所前の土壌に線量計を近づけると、数値は160μSv/hを上回った。周囲の放射性物質が雨などで溜まるのだろうか。請戸川の水面は美しいが、川沿いは軒並み10μSv/hを超えた。これだけの汚染をどのように除染をし、人間が安全に暮らせる状態に戻すのか。「震災前は、秋になると多くの人がマツタケ狩りを楽しんだものだよ」。男性がさびしそうな表情で山を指さした。
 二か所目のバリケードで許可証を提示し、町の中心部へと入る。モニタリングポストが4.495μSv/hを示していた国玉神社は、3.11の激しい揺れで社殿が斜めに傾いていた。浪江駅前の店舗も、損壊したまま倒壊の危険を示す環境省のテープが新たに貼られていた。信号は黄色で点滅。一時帰宅した住民が出した廃棄物が、所々に置かれている。
 浪江町役場にほど近い六反田地区。雑草が伸び放題になった公園には、かつて東邦レーヨンの工場があったことを記念した石碑が建てられている。手元の線量計は0.25μSv/h。同じ浪江町でも汚染の度合いに大きな差があることを知らされる。では、線量の低い地区だけで町を再開させるのか。これまでの取材では、町に戻ると答えた人はほとんどいなかった。
 町内では、中断していた常磐道の建設工事が急ピッチで進められていた。除染作業員の車両も多く目にする。しかし、放射線量が低いとはいえ駅前で0.9μSv/h。わずか3年で状況が激変するはずもない。駅前ではカラスの鳴き声だけが響いていた。町民の苦悩はまだまだ長く続きそうだ。

【民の声新聞】
Eye Catch Photo by BehBeh, via Wikimedia Commons
The Ōu Mountains in Kōriyama, Fukushima

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