『「流域地図」の作り方: 川から地球を考える』(岸由二著、ちくまプリマ−新書)
担当:鶴見智佳子 ちくまプリマー新書編集部
今日私が絶賛したい本は『「流域地図」の作り方――川から地球を考える』(岸由二著)です。
雨の降る生命圏の大地は、どこでも流域という地形、生態系を単位として出来上がっています。それは、アマゾンのような大きな川でも、私たちの近所に流れる小さな川でも同じ仕組みです。
身近な川から始まって、大きな世界を見られるように、地球規模で環境をとらえられるようになるために、まずは「流域地図」なるものを作ってみよう!
身近な川がどこへつながっているのか、yahoo!地図の水域図でも辿れます(便利な世の中ですね!)
産業文明に生きる私たちは、大地の凸凹も循環する水の様子も、川辺でにぎわう生き物たちなどのリアルな姿をすっかり忘れています。それを思い出すきっかけとして「流域地図」が活躍するのです。
え? 自然のことは忘れていないって?? では質問です。
「あなたはどこに住んでいますか?」
自分の居場所を肌で感じる
○○市△△区××町……と答えたあなた! 是非ともこの本を読んでください!(笑)
行政区分で人為的に作られた地図からは、地球の凸凹も水の流れも読み取ることができません。
『「流域地図」 の作り方――川から地球を考える』の著者である岸由二先生は、例えば慶應大学日吉校舎を次のように言い表します。
「鶴見川流域・矢上川支流流域・松の川小流域・まむし谷流域・一の谷北の肩」
川を中心とした流域で今いる場所を考えると、小さな流域から支流、本流へと遡る川の流れが見え、大地の連なりや都市と自然の共存まで感じることができるのです。
河口には港があり、工場があり、そして住宅地が広がり、川を遡るうちに住宅地から田畑へ、そしてさらに自然が豊かになり、源流は動物たちの住まう山奥……。
こういうことを肌で感じることが少なくなると、いろいろなことがマヒしてきます。