Jパワー(電源開発)が本州最北端の青森県大間町で建設中の大間原発について、函館市が4月、同社と国を相手取り建設差し止めと原子炉設置許可の無効確認を求める訴えを東京地裁に起こした。自治体による原発差し止め訴訟は初めて。「過酷事故が起きれば自治機能は壊滅状態になる」と、建設の同意に同市も含めることを求めている。原発と行政の在り方に一石を投じた。
大間原発は08年着工。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」だけを使う、世界初のフルMOX商業炉となる。11年3月の東京電力福島第原発事故を受けて進捗率37・6%で工事が中断したが12年10月に再開された。今秋にも新規制基準に基づく安全審査を原子力規制委員会に申請する見通しだ。
津軽海峡をはさんで対岸にある函館市と大間原発との距離は一番近いところで23キロ。福島の事故を踏まえて、国は防災計画の策定をそれまでの半径8~10キロ圏から同30キロ圏の自治体に義務付けた。しかし原発建設の同意は立地自治体以外は不必要だ。函館市が訴訟に踏み切った背景には、原発立地条件の蚊帳の外に置かれていることへの怒りがあった。
訴状で市側は「原発による不利益と負担は少なくても30キロ圏に及ぶ。建設の同意は30キロ圏内の自治体も含めるべきだ」と主張。大間原発は安全対策を強化した新規制基準の審査を受けておらず、事故前の旧基準での審査による設置許可は違法で無効と訴えている。さらに、フルMOX原発は「実験的とも言える操業で(燃料の)毒性も強い」と指摘している。
函館市は一地域の問題ではなく国全体の問題であることを主張するためにも訴えの舞台に東京地裁を選んだ。工藤寿樹市長は提訴後の記者会見で「事故が起きると地域が崩壊してしまう。自治体として原発に真剣に向き合う必要がある」と自治体が原告になる意義を強調し、「防災計画が義務付けられている危ない地域なのに、まともに相手にされていない。安全が二の次になっているのは明らかだ」と語気を強めていた。
一方、この提訴について青森県側の大間町や周辺自治体は静観の構えだ。30キロ圏内の隣接自治体には原発関連施設のオフサイトセンター誘致の動きがあり、電源3法による交付金や雇用などに期待する事情もある。
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