Updated: Tokyo  2014/05/14 12:35  |  New York  2014/05/13 23:35  |  London  2014/05/14 04:35
 

アベノミクスの夢から覚めた投資家、米欧経済への熱狂失わず

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  5月14日(ブルームバーグ):金融プロフェッショナルは世界経済について年明けほど熱くはないにしても楽観的。これは最新のブルームバーグ・マーケッツ・グローバル投資家調査からのメッセージだ。調査ではウクライナの混乱から欧州のデフレ脅威までさまざまなリスクへの懸念が浮き彫りになった。

ブルームバーグの顧客を対象にした今回の調査で世界経済が改善しているとの見方は40%を占めた。43%が安定していると回答し、悪化しているとの見解は12%にとどまった。ただ1月の前回調査で改善しているとの回答は59%で、世界がリセッション(景気後退)から脱却した2009年以降最高だったことを踏まえると、高揚感は後退した。

BMOプライベート・バンクのジャック・エイブリン最高投資責任者(CIO)は「投資家は神経質とは言えないが、懐疑的だ」と語る。

09年から3カ月ごとに実施しているグローバル投資家調査はブルームバーグ端末を利用するトレーダー、バンカー、資産運用担当者が対象。世論調査会社セルザーが4月22-24日に顧客594人から回答を得た。誤差率はプラスマイナス4ポイントで、顧客の地理的分布を反映するよう調整している。

経済や市場の動向を言い当てるという点で、ブルームバーグの顧客は一定の成功を収めている。米国について増税による景気への影響が懸念されていた12年1月の調査で、顧客はすでに楽観的姿勢に転じていた。

米国が人気

ブルームバーグ・マーケッツ誌6月号が掲載した最新調査では、約3人に2人が米国経済は改善していると回答。米国が世界の明るいスポットとの見方が示された。向こう1年間に最高の投資機会が得られる市場についても、米国が44%とトップだった。

欧州連合(EU)も景気回復が投資家から引き続き評価され、最高の投資機会が見込める市場として2位(32%)に付けた。債務危機が悪化し10年11月に7%まで下げた状況から大きく改善した。ただユーロ圏のデフレを懸念する見方は圧倒的に多く、約4人に3人がインフレより重大な脅威だとした。ポルトガルなど一部の国はすでに今年デフレを経験。域内の4月の消費者物価上昇率は0.7%と、欧州中央銀行(ECB)が目安とする2%弱の水準を大きく下回っている。

投資家はアジアの2大経済大国に神経をとがらせている。日本に対しては景気改善をめぐる疑念が強まっている。今後1年間に日本が最高の投資先の1つに入るとの回答は13%にとどまり、1月の23%から落ち込んだ。アベノミクスへの興奮度が高かった13年5月には33%に達していた。

中国経済に課題

調査によると、中国経済は12年9月以来最悪の状態だ。経済が改善しているとの見方はわずか9%で、悪化しているとの見解が47%に達した。安定しているは41%。中国指導部が取り組むべき課題の上位には腐敗や問題を抱える金融業界が挙がった。現時点で中国より順調でないと見られているのはロシアだけだ。

今後1年で最も高いリターンが期待できる資産については、株式が46%を占めた。ただこの比率は1月の前回調査(53%)から低下し、12年11月以来の低さとなった。インターネットやソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)関連株の上昇は行き過ぎとの見方が調査にはっきりと表れた。バブル状態との回答は50%、その目前との見解は36%に上った。

顧客は自分たちの業界に対し意外にも批判的だった。さまざまな市場の公平性に関する質問で、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の設定は不正操作されていると49%が回答、株式取引が一般投資家に対して不利となるように不正操作されているとの見方は38%に達した。

米利上げの時期

株式、それに債券への投資家の熱意が冷めた背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が超緩和的な金融政策を縮小していることがある。約4人中3人が来年末までの利上げを予想。その時期をもっと具体的に見ると、来年1-3月(第1四半期)が19%、4-6月(第2四半期)は20%だ。イエレンFRB議長に好感が持てるとの回答は約66%で、好感を持てないの20%を大きく上回る。

一方、日本銀行の黒田東彦総裁の好感度は56%で、1年前の64%から低下した。安倍晋三首相の政策が投資に与える影響については楽観的が54%。悲観的との回答のほぼ2倍に相当するが、12年12月の首相就任以降で最も低い首相の好感度の数字と一致する。

野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストは「グローバル投資家の間でのアベノミクスに対する期待は高過ぎた」とし、「今後安倍政権に対する熱狂を取り戻すようなものは出てこない。アベノミクスのお祭り騒ぎはもう終わっている」と述べた。

グローバル調査を見ると、日本経済への励ましの声は勢いを失った。だが米国と欧州に対する熱狂は、たとえトーンが3カ月前より幾分落ちたとしても続いていると言えそうだ。

原題:Europe Deflation Seen by 74% in Poll as 31% Say MarketsRigged(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Rich Miller rmiller28@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.netRobert Dieterich, Joel Weber

更新日時: 2014/05/14 07:30 JST

 
 
 
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