TPP:日米協議難航は全体に影響 交渉は漂流の懸念も

毎日新聞 2014年04月24日 22時09分(最終更新 04月25日 04時12分)

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉を巡り、日米両政府がオバマ大統領離日ギリギリまで打開に向けた協議を続けるのは、日米の妥結こそがTPP交渉全体を動かすカギとなるからだ。経済規模が大きい両国が妥結できなければ、12カ国が参加するTPP交渉が漂流する懸念は高まる。

 「日米以外のTPP交渉10カ国は今、日米協議の行方を見守るだけで、まったく動いていない」。政府関係者は険しい表情でこう話し、TPP交渉のけん引役になるべき日米交渉の難航に危機感を隠さない。

 日米はTPP交渉参加12カ国の国内総生産(GDP)の約8割を占め、交渉全体に与える影響は大きい。交渉では知的財産権など、新興国が規制強化に抵抗している分野などでも難航しており、日米協議が妥結しない限り、ベトナムなどの新興国は知財などで米国に譲歩しない構えだ。逆に、日米さえ決着すれば、難航分野も動き出す可能性も大きい。

 関係者によると、米国が描いたシナリオは、大統領訪日を機に日本との間で一定の合意に持ち込んだうえで、5月中旬にベトナムで開く12カ国の首席交渉官会合で難航分野の打開を目指すというものだった。さらに遅くとも7月ごろまでに12カ国の閣僚会合を開き、昨年12月、今年2月と2度も続けて見送ったTPPの「実質合意」を実現したい意向とされる。オバマ大統領訪日は、日米協議進展の最大の節目と位置づけられていた。

 米国は11月に控える中間選挙が近づくほど、業界団体を刺激するTPP交渉は進めづらくなる。オバマ政権は、TPPを政権の成果とするためには、今夏までの実質的決着が不可欠と見ている模様だ。米国のシナリオ通りなら、中間選挙後、米議会が大統領に通商権限を一任する「貿易促進権限(TPA)」法案が成立に向けて動き出し、早ければ年明けにも12カ国がTPP署名まで至ることも可能だ。

 また、安倍晋三首相にとっても、TPPはアベノミクスの成果となりうる。米国への自動車輸出などにはずみがつけば、金融緩和、財政支出に続く「第三の矢」としての効果が期待できる。

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