アダルト本やオカルト本も 復興予算の電子書籍化事業
書籍の電子化を通じて東北復興を支援する。そんな名目で国が2012年度に10億円の復興予算を付けた「コンテンツ緊急電子化事業」(緊デジ)に、不適当な本があったなどの批判が起きている。事業を進めた団体は、出版社に対して内容の再確認を要請中だ。
緊デジで電子化されたマンガの書影を載せたチラシがある。題名は『あぁん…極上の快感エロス&Hぜんぶ見せますっ!!』。チラシは、仙台市の出版関係者の団体「歩く見る聞く東北」が22日に市内で開く緊デジを考えるイベントのためのもの。「これも復興事業なの」と問いかける。
緊デジは13年3月末に6万4833点の電子化を終了。出版の業界団体で作る「日本出版インフラセンター」(JPO)が出版社に電子化したい書籍を募り、費用の半額にあたる10億円を復興予算でまかなった。
どんな本が事業にふさわしいのか。外部の審査委員会は目安を示した。「被災地の人びとの役に立つと出版社が考えるもの(娯楽的なものも含めて)を優先」「多様な試みがあって良いと思います。ただし、公費による補助であることは忘れないでください」
だが電子化した中に、アダルト本などが少なくとも100点ほど含まれていた。オカルト本や古い電子機器の解説本も。東北関連本は2287冊にとどまり、「本当にふさわしいと思った本が集まったとは思えない」と審査委員会委員長を務めたライターの永江朗さんは謝罪した。
JPOは7日、各出版社に20日までに内容を再確認するよう求めた。補助金の返還も視野に入れている。
JPOは12年6月に出版社から受け付けを開始。半年後を締め切りとしたが、11月の段階で集まったのは全体の1割だった。予算を使うには13年3月末に電子化を終える必要がある。JPOは大手に頼み、予算を使い切れる6万点を確保した。「予算消化という官僚的な常識に振り回された結果」と永江さんはみる。
朝日新聞デジタル | 執筆者: 高津祐典 投稿日: 2014年05月14日 08時21分 JST | 更新: 2014年05月14日 08時28分 JST