« 今年3回目の太刀魚釣り ようやく一匹釣った | トップページ | 猫砂ホワイトペレット購入 »

2011/12/06

福島の野菜販売に対して起こった「水俣病でも同じことが行われた」という批判の件。

福島の農産物を売ろうという運動に対してのネットの批判の中で、水俣病でも風評被害と言われて水俣地元の水産物が売られたという昔の新聞記事の引用がありました。
つまり、水俣病の時も同じことが行われたぞ!というわけです。

私はこれを先月末にどこかで読んだ記憶があります。
4月頃に出回ったようですが、最近かなり拡散してるようです。


その新聞記事の内容はこういうものです。何パターンかあります。

昭和35年 熊本日日新聞より

「新日本窒素肥料(現チッソ)が安全宣言で魚貝類を地元住民へ」
原因不明の奇病が発生したとされるこの地域で不安を抱えた地元漁民が安全を宣
言。
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。
海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできればと
同社幹部。
昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため新日本窒素
肥料が地元水産物を買い上げ
地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしやてもら
うのが狙い。
漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣産海産物の美味しさと安全安心を伝
えて欲しいと話している。

■新日本窒素肥料が安全宣言で魚貝類を地元住民へ

原因不明の奇病が発生したとされるこの地域で不安を抱えた地元漁民が安全を宣言。
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。

「海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできれば」と同社幹部。
昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため新日本窒素肥料が地元水産物を買い上げ
地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしてもらうのが狙い。
漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣産海産物の美味しさと安全安心を伝えて欲しいと話している。

昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より

熊本日日新聞に本当にこの記事があったのかどうか図書館で調べた人がいらっしゃいました。

「水俣病に関する熊本日日新聞のコピペ」について熊本県立図書館からいただいた回答
http://techpr.cocolog-nifty.com/nakamura/2011/12/post-521b.html

水俣病に関する書籍や水俣で発行されていたミニコミ誌の記事などを確認しましたが、関連した記事は発見できませんでした。  また、水俣病に関する昭和34年から40年代前半までの新聞スクラップブックを調査しました。しかし、関連がありそうな記事は発見できませんでした。


「昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より」と題するコピペがウソくせえ件
http://blog.goo.ne.jp/spoichi/e/21a91b001589459ab1fa19be22faaebf
では、ネットで転載されるたびに記事内容が変化していってることを指摘しています。
昭和35年の記事となっているのですが、中には昭和20年と無茶苦茶なものもあります。

「安全安心」と「安心安全」という言葉の間違いもひどいのですが、ネットへの書き起こしで失敗したと考えても
当時水俣病で深刻な地元の新聞が「地元の漁業は大ダメージ」という軽い表現を使うだろうかという疑問があります。

で、もっと内容について追求してるブログもありまして
疑わしいコピペ -今日も得る物なし
http://d.hatena.ne.jp/kyoumoe/20111129/1322541541

「海産物」と「水産物」の表記ゆれ
新聞記事で「皆様」なんて使うのか
・・・なるほど

このブログでは他にも指摘があって
記事の2年前の1958年(昭和33年)に「熊本県が水俣湾海域内での漁獲を禁止」していること。

熊本日日新聞の記者の方の講演の引用で1958年8月で水俣病という言葉が新聞で使われるようになったこと示して、1960年の記事で「奇病」などという表現をするだろうかと指摘しています。

また、新聞記事見出しによる水俣病関係年表
http://www.lib.kumamoto-u.ac.jp/suishin/minamata/5chronicle/index.html
から、「水俣近辺での漁業は自粛」「漁民と会社は対決姿勢」「魚貝類から水銀検出」と問題記事内容と相反することを指摘しています。
この年表のリンク先には新聞の切り抜き画像がアップされていて、読むと漁民が工場に乱入して投石して逮捕とか対決なんて生易しいものではないことがわかります。


さて「風評被害」という言葉がいつから使われ出したのか?
wikipediaではかなりあやふやだったので、外部リンク先のここが参考になりました。

「風評被害」の社会心理 ―「風評被害」の実態とそのメカニズム―
関谷直也(東京大学大学院 人文社会系研究科 社会情報学専門分野)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouka/files/031006cec2_7.pdf

によると、元々は原子力事故の補償問題に関連して用いられてきた言葉となっています。

「風評」という言葉が国会で初めて用いられたのが1956年(昭和31年)。第5福竜丸事件の2年後魚介類が売れなくなったことに対する質問で初めて使われたそうです。
「風評による被害、損失」などという表現は1974年前後(昭和49年)むつ事故で原子力関係者、当事者で使用されはじめたとしています。

そして、「風評被害」については1986年(昭和61年)に公文書で初出。

公文書で、「風評」と「被害」が連結した「風評被害」という言葉での初出は、1986 年北海道電力「泊発電所周辺
の安全確保及び環境保全に関する協定書」という安全協定で、「(風評被害に係る措置)第16 条 丙(北海道電力)は、発電所の保守運営に起因する風評によって、生産者、加工業者、卸売業者、小売業者、旅館業者等に対し、農林水産物の価格低下その他の経済的損失(以下「風評被害」という。)を与えたときは、補償など最善の措置を講ずるものとする。」と定義されている。

マスコミ報道で「風評被害」が使われだすのは1997年(平成9年)ナホトカ号重油流出事件以降。
現代用語の基礎知識に載るのが2000年(平成12年)。


しかし、水俣病の新聞記事まで捏造するというのは、良心なんてないんでしょうか。


|

« 今年3回目の太刀魚釣り ようやく一匹釣った | トップページ | 猫砂ホワイトペレット購入 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今年3回目の太刀魚釣り ようやく一匹釣った | トップページ | 猫砂ホワイトペレット購入 »