大阪市の土地信託事業で経営破綻した遊園地「フェスティバルゲート」(大阪市浪速区)の跡地開発は、事業主体のパチンコチェーン「マルハン」が計画を見直し、韓流テーマパークではなく、当初は禁じられていたパチンコ店を含む商業施設を建設することになった。
バブル期に市が手がけた見通しの甘い計画が、破綻から10年を経た今も市民を翻弄している。
◆「4度目の正直」
1990年の市議会。大阪の観光地・新世界にある市電車庫跡の活用策を問われた市の担当者は「若い層からファミリーまで楽しめる施設」と遊園地構想を披露した。
信託銀行3行と30年間の信託契約を結び、市は130億円の配当を受け取るという計画。議員は「新世界の雰囲気を継承・発展させた内容だ」と沸き立った。
ビルの中を縫うように走るジェットコースターという目玉もあり、97年の開業から1年間で830万人が訪れ、東京ディズニーランドに次ぐ集客施設になったが、次第に入場者数が低迷。市は一度も配当を受け取れないまま、フェスティバルゲートは2004年に経営破綻した。
その後、残された1万4000平方メートルの跡地の再開発は頓挫の歴史をたどる。再生計画の主体に決まったオリックスは、市と入居テナントの立ち退き交渉がこじれて撤退。続く再生計画公募も不調に終わり、市は土地売却に方針転換した。
しかし、1度目の入札で落札した韓国系開発業者とは契約に至らず、違約金の支払いを巡り訴訟に発展。09年の再公募に1社だけ参加し、落札したマルハンは「4度目の正直で最後の希望」(市幹部)だった。
◆「5年」のからくり
契約交渉をしてきた市交通局は終始、マルハンのペースに乗せられた格好だ。
市は土地の売買契約時、環境に配慮してほしいという地元の意向を受け、5年以内の事業開始とともに、5年間はパチンコ店などの風俗営業を禁止することを取り決めた。だが、逆手に取れば、5年が過ぎればパチンコ店の設置が可能になる内容でもあった。
5年以内に何らかの施設を建てなければ違約金が発生するため、市内部には「違約金を払ってまで、5年も土地を寝かしておくはずがない」と楽観論が多かったという。
しかし思惑に反し、マルハンは最初に掲げたボウリング場などの娯楽施設建設を早々に取り下げた。期限まで1年を切った昨年7月、ようやく韓流テーマパーク構想を正式発表したが、それも日韓関係の悪化を理由に変更を申し出る。
事業開始期限であり、風俗営業が解禁されるタイミングでもある今年3月。マルハンは、パチンコ店や量販店が入る新施設の建設を市に申し入れた。
◆異例の契約変更
市は計画変更を受け入れた上、4億円に上る違約金を請求せず、契約を1年延長することを決めた。マルハンからは、違約金代わりに市や地元に1億3000万円余りの寄付や出資が行われる見通しだ。「量販店も入り、地元にも配慮してもらった」と、市交通局幹部は契約変更に踏み切った事情を明かす。