Financial Times

中国とベトナムの衝突、観測筋が首ひねるタイミング

2014.05.14(水)  Financial Times

(2014年5月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

昨年10月、李克強氏が中国首相として初めてベトナムを訪問した時、この訪問は、南シナ海を巡って緊張が高まる中で近隣の東南アジア諸国との関係改善を図る中国政府の大きな取り組みの一環と見なされた。

 李首相は当時ハノイで、中国とベトナムは共同海洋開発について協議するグループを創設すると述べた。南シナ海に関する中国政府の研究機関「中国南海研究院」の呉士存院長は、両国は「南シナ海の危機を共同で管理することで合意に達し、海上摩擦を和らげるようになる」と述べた。

中国側の「挑発」で関係改善の流れが一転、南シナ海でにらみ合いに

南シナ海でベトナムに強硬姿勢、中国の狙いは 専門家が分析

5月2日、南シナ海でベトナムの船艇に放水する中国海警局船〔AFPBB News

 だが、それから6カ月経った今、中国政府がパラセル(西沙)諸島近くの係争海域に油田掘削装置を設置したことから、両国関係は再び暗礁に乗り上げた。

 米国は中国側の行動を「挑発的」と評している。ベトナムは声高に抗議し、問題の海域に数十隻の艦船を派遣。現地で中国艦船と衝突した。

 中国は多くの近隣諸国と領有権争いを繰り広げているが、専門家らは、最近の対ベトナム関係の改善を台無しにするような中国側の行為を理解するのに苦しんでいる。オーストラリア国防大学のベトナム専門家、カール・セイヤー氏は、掘削装置の設置は「完全に予想外だった」と語る。

 1974年の短い戦争でパラセル諸島を中国に奪われたベトナムは近年、対中関係とのバランスを取るために、米国に多少接近した。この姿勢の転換を浮き彫りにするように、レオン・パネッタ氏は2012年、米国防長官として30年ぶりにカムラン湾――ベトナム戦争の最中に米軍艦船の主要港だった場所――を訪問した。

 過去1年間で、中国と日本、そして中国とフィリピンの緊張関係が高まったが、ベトナムは中国政府を怒らせるような行動はほとんど取ってこなかった。

 「ベトナムがやったことで、今回の中国の行動を引き起こすようなことは何も思いつかない」とセイヤー氏は言う。「これは改善傾向にあった関係を後退させる行為だ」

米国の強硬姿勢に反発? ベトナムの反応を読み違えた? 

 ボストン・カレッジのロバート・ロス氏をはじめとした一部の中国専門家は、中国政府は、米国が最近、中国に対して言葉の上で強硬路線を強め、中国が南シナ海の大半の領有権を主張するために使う「九段線」の明確な説明を求めたりしていることに対応していると考えている。

 ロス氏は、ベトナムが昨年12月に日本の安倍晋三首相に対し、巡視船の供与を要請したことについても中国が怒っている可能性があると指摘する。日本の外務省は、日本政府はこの要請を検討していると話している。

 だが、ほかの人たちはそれほど確信を持てない。彼らに…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top