J-WAVE「JAM THE WORLD」の2014年5月13日放送分よりピックアップ。
前回同様、今回もパーソナリティは津田大介さんです。テーマは「フルサトをつくる」ということで、現在「ナリワイ」を作ることで現代社会を生き抜いている、仕事レーベル・ナリワイ代表の伊藤洋志さんです。
最近は地方へ移住し、自分の本当にやりたい仕事をノマド的に実現している方も多く現れており、「働き方」について改めて見直そう、という流れが強まりつつあります。
実際に、「今のポジションに馴染めない」、「地方で働きたい」などのように考えている方にとっては超おもしろい話ですので、ぜひご覧ください。
友人宅の水害復興がきっかけとなった、「床張り」
津田大介:本当に伊藤さんのお話を聞くのが楽しみで、昨年9月にも出演していただいて。
1つの会社や仕事に縛られないで、身の回りから仕事を発掘して、自分でいくつも「ナリワイ」を作りだしていく、ということで新しいライフスタイルというか、そういう古くて新しいライフスタイルについてお話頂いたんですね。
あれから、半年が経ちましけど、新しい活動を始めたとか、トピックってありますでしょうか?
伊藤洋志:そうですね、前回出た時は単純に床張りだけをする「全国床張り協会」というとことで仕事をしていたんですど。
津田:それは、古い家の床を張り替える、ってことですよね。
伊藤:はい。その講座として、「みんなで床を張っていこう」って、半分ふざけて作ってた仕事なんですけど。
津田:はい。
伊藤:「床張り」しかできない(笑)、みたいな。ですが、思いがけず依頼が多くてですね。
津田:あっ、「床張ってよ」ってことですか?
伊藤:それも多いですし、「床を張りたい!」という声も多くてですね、10人くらいの定員なんですけど、だいたいオーバーしてしまって。
津田:じゃあ、かなり仕事としていペースで依頼がきている、という状況なんですね。
伊藤:そうですね。
津田:半年前にも伺ったんですが、床張りを仕事にしようと思った経緯をご説明いただけますか?
伊藤:もともと、ぼくの仕事の仕方っていうのは、ビジネスチャンスを見つけてアタック!というよりは、自分の生活のなかの支出って結構あると思うんですけど、それをどうやって面白く減らすか?みたいなところからスタートしていて。
津田:うんうん。
伊藤:で、一番大きいのは、「家賃」とか家の値段なんじゃないかな?というところで。
たまたま友人の家が台風の水害で水に浸かってしまって、家全体の床が壊れて、どうしようも住めなくなってしまったんですね。
津田:はい。
伊藤:「じゃあ、みんなで床を張るか」ってなって、こういう被害はいろんなところであると思いますし、家は放ったらかしにすると腐ってしまうので、「じゃあ、みんなで覚えようか」と。
ということで大工の先生を呼んで、10人くらいで床を張りまくって1軒直した、というところからですね。
津田:それって、お金は一応入ってきたんですか?
伊藤:そうですね。一応「講座」としてやるので。普通の大工さんに弟子入りした場合とかって、全く無言で作業して「見て覚えろ」みたいな感じですけど、こちらではひとつひとつ「この道具はこうやって使うんや」とか。
津田:あぁ、そうか「床張り講座」になるわけですね。
伊藤:はい。「床の板っていうのは、こういう種類があるんや」みたいなのを1から教えて、もう1回やったら自分でもできるようになりまっせ、っていう。
津田:ほ〜。
伊藤:授業料を頂く、という感じですね。
津田:なるほどね。
伊藤:やぱり、やらないと覚えられないし、家がないとできないから、ある種「床が壊れた家」っていい教材になるんですよね。
津田:あぁ、でもたしかに、ぼくも東北を取材している中で、お付き合いがある人が復興のためのゲストハウスみたいなのを作ってたんですけど、その仕上げをするときにモルタルでレンガをつくる、っていう作業を1日ぼくは手伝ったんですけど。
伊藤:あぁ、はいはい。
津田:なんか、それやったら「あぁ、俺結構できる!他の人より早い!しかも綺麗!」と思って、自分の意外な才能を発見して。
伊藤:わかります。
津田:多分、あれを1回覚えたから、そういう仕事もやろうと思えばできるなぁ、と思ったんですよね。
「床張り」なんて言葉初めて聞きました。まさに、身近なところが仕事に繋がるという好例ですね。
「全国床貼り協会」の公式サイトによると、6月28日~29日の間で床張りの講座を行うそうです。
■定員:12名
■プログラム:
0.自己紹介&主旨説明(全国床貼り協会 伊藤 NPO法人とやまホーム管理サービス中山)
1.コンクリの床に根太(角材)を設置
2.断熱材を貼る
3.床板を張る
4.時間に余裕があれば腰壁も張ります
※本職の大工さんが仕事の合間に時々見回りにきます。
※前日に墨付けと材料の搬入を行いますのでお時間のある方は参加しても勉強になるかと思います。墨付けとは、目印の線を引く作業です。
ほんとにしっかり張るんだ…。普通におもしろそう。
とりあえず、「床張り」やってみれば?
津田:改めて、そのあと梅農家で収穫のお手伝いをしたり、モンゴルのツアーを企画・運営したり、みたいな、
伊藤:はい、そうですね。
津田:なんか、脈絡のない仕事をたくさん持っているというのが伊藤さんの面白いところだと思ったんですけど、仕事自体は種類は増えてきているんですか?
伊藤:そうですね。10個近く仕事があって、まぁ季節ごとに違うことをしているのでバッティングはあまりしないんですけど。やっぱり、地方は特に雇用が少ないので「自分で仕事を作らないかん」みたいな。
津田:でも「仕事をつくる」といっても、前回放送の後のTwitterなどの反応を見ていて、「伊藤さんはすごい人だからできるかもしれないけど、僕らはなかなかできないよ。そんなに簡単じゃない」という意見もありますし、「なかなか自分の経験を活かした仕事が見つからない。ハローワークに行っても仕事がない」という悲痛な意見がありますが、これらに対してどういうアドバイスができますか?
伊藤:いろいろなアドバイスがありますけど、ひとまず唐突ですが「床を張ってみたらいかがでしょうか?」と思うんですよね。
津田:あぁ〜、床を。
伊藤:ある種唐突そうに見えるんですけど、さっき津田さんもおっしゃていたように「自分、結構できるんじゃないか?」っていう経験が重要だと思っていて。
津田:「手に職をつける」という言葉もありますもんね。
伊藤:はい。床張りも2日くらいやったら、明らかにうまくなるんですよ。
津田:となると、みんなノウハウを覚えていくんですね。
伊藤:学習するんですよね。初心者の方でも。
津田:そうですよね、そういうところの勤勉さとか、基礎能力って日本人はすごく高いはずですもんね。
伊藤:結構忘れてしまってるというか。
たしかに、「やってみたら意外にできた」みたいな経験って日常でもあり得ると思うんですけど、それが積み重なってその中から実際に仕事に繋がる、ということも可能性としては全然アリなわけですよね。ぼくもいつか床を張ってみよう。
伊藤流・仕事を見つけるプロセス
津田:それはでも、どういうプロセスで仕事を作っていくのかな?って、思うんですけど。
伊藤:簡単に説明すると、いきなり「ビジネスをやろう!」って思うと、「これって売れるんかいな…」みたいな心配事が先に来て、体が動かないと思うんですけど、まず自分の生活のなかで「なんか、コレ高いな」とか「もうちょっとうまくいく方法ないんか?」って考えて、自分の生活の支出を見つけて、面白いかたちでどうやって解消できるか?、ということを考える、と。
津田:うんうん。
伊藤:で、ぼくの床張りだと、普通なら業者に頼んで3〜40万円払って直しちゃうところを、先生にお金を払って、材料費を買って、自分たちで張ってしまおう、と。
そうすると、ちょっと安くて、しかもおもしろく直せます。かつ支出が減って自分の生活に余裕ができると思うので、
津田:はいはい。
伊藤:それをもしかしたら他人にも提供できるかもしれない、ということで。他人の支出をカットさせることができれば、それはもう間違いなく仕事になると。
津田:うん。
伊藤:そういう流れでやると、仕事にならなくても自分の支出だけは最低限カットできるので、収入は上がってなくても自分の生活には余裕ができてくると思うんです。その、心の余裕をどうやって生み出すか、っていう。
津田:支出を削っても文化的な生活は送りやすくなってますからね。
支出を徹底的に見直して、その中で不満に思うところや、改善できそうな部分をどうやって解消するか考えるところからスタートするということなんですね。
実体験からのお話なので、説得力がありますし、何より「自分もできるかも?」と思えてしまうところがいいですね。いやぁ、おもしろい。
今回の放送はあまりに面白すぎたので、こちらを【前編】として、次回【後編】を改めて書き起こさせていただきたいと思います。すばり、テーマは「限界集落で作るシェアハウス・シェアオフィスについて」です。