写真・図版 5月12日、多くの米共和党員が否定し、一部の民主党員が触れたがらない話題とは何か分かるだろうか。答えは拡大する米国景気だ。写真は米議会の議事堂。昨年3月撮影(2014年 ロイター/Gary Cameron)

 [ワシントン 12日 ロイター] - 多くの米共和党員が否定し、一部の民主党員が触れたがらない話題とは何か分かるだろうか。答えは拡大する米国景気だ。

 今年の米経済は3.5%成長となる見通しで、先進国では高水準の部類となる。失業率は10%から約6.3%に低下し、消費者信頼感も6年ぶりの高水準となった。 

 政治専門家らによると、経済統計の改善は11月の中間選挙でオバマ大統領の低支持率や評判の悪い医療保険制度改革法(オバマケア)から有権者の目を背けさせ、民主党が上院での優位を維持し、下院での同党の敗北を限定的にとどめるのに役立つ可能性がある。 

 しかし、米国人にとって最大の関心事の1つである経済の実態をめぐる議論は選挙に向けて盛り上がらない可能性もある。

 多くの民主党候補に助言活動を行っているグリーンバーグ・クインラン・ロズナーのシニアアソシエイト、エリカ・セイファート氏は「経済が改善していると主張することは民主党にとって悪いことだ」と指摘する。

 実際、多くの民主党員は景気改善の兆候を無視し、最低賃金の引き上げや男女の給与格差解消といった景気改善策に重点を絞っている。同氏によると、これは統計上は景気上向きを示していても、長引く失業や賃金の停滞、個人債務の過剰な負担を背景に、多くの有権者にとって景気は依然さえないままとなっているためだ。

 <実態は依然厳しく>

 選挙戦で焦点となるのは、民主と共和のどちらが上院の過半数を握るかだ。

 例えば、接戦が予想されるルイジアナ州とニューハンプシャー州では、4.5%の失業率が上院民主党のマリー・ランドリュー議員とジーン・シャヒーン議員を後押しするように見える。

 しかし、ルイジアナ州のランドリュー議員は景気改善が再選の見込みをもたらす可能性について聞かれ、「それが私の選挙戦に変化をもたらすことはない」と指摘。「引き続き精一杯やり、何事にも思い込みは避ける」と述べた。

 シャヒーン議員も「人々から出てくる話題の1つは経済や仕事、学生ローン、退職後の生活への懸念だ」とし、選挙戦ではこれらの問題に取り組んできた実績に焦点を充てると付け加えた。

 中間選挙は野党に有利な結果をもたらすことが多く、共和党が下院での優位を維持し、党勢を拡大する可能性があると見込まれている。

 堅調な経済統計にもかかわらず、共和党は民主党への攻撃を緩めてはいない。

 下院予算委員長を務めるポール・ライアン議員(共和党、ウィスコンシン州)は、4月8日の記者会見で「オバマノミクスも5年が経つが、経済は改善していない」と述べた。

 上院共和党院内総務を務めるミッチ・マコネル上院議員(ケンタッキー州)は厳しい選挙戦に直面しており、オバマ政権下の「景気の哀れな状態」に何度も言及している。

 <レイバーデーまでに意識変化か>

 しかし、民主党候補にアドバイスするベネンソン・ストラテジー・グループのピート・ブロドニッツ氏は、今年の選挙戦で景気改善の話題を無視するのは「大きな過ち」になると指摘。「民主党が経済の進展について語るのは非常に重要なことだと私個人は考えている。われわれが語らなければ、誰が語るというのか」とし、景気が改善していないという共和党の主張を人々は信じ続けることになると述べた。

 ポトマック・リサーチ・グループのグレッグ・バリエール氏は4月21日付ノート中で「経済における生命の兆候が民主党にとって大きな後押し要因となる可能性がある」と指摘。「大半の米国人はまだ景気後退局面(これは2009年6月に終了した)にあると思っているが、レイバーデー(9月の第1月曜日)までに意識が変わり、民主党にとって極めて重要な援軍となる可能性がある」とした。

 共和党寄りのストラテジストで、シンガー・ボンジーン・ストラテジーズのパートナーを務めるロン・ボンジーン氏は、あまりにも多くの米国人は今のところ景気改善の影響を感じていないとみる。

 「全国及び地方レベルで3─4カ月の堅調な雇用の伸びが必要だ」と指摘。オバマ大統領と民主党が宣伝を開始できるようになるには「(労働力から)脱落する人の数が減速する必要がある」と述べた。

 (Richard Cowan記者 執筆協力:Lucia Mutikani 翻訳:川上健一 編集:内田慎一)