くらし☆解説 「集団的自衛権を巡る国民の視線」2014年05月13日 (火) 

島田 敏男  解説委員

(岩渕)きょうの「くらし☆解説」の担当は島田敏男解説委員です。
 
kkk140513_00mado.jpg

 

 

 

 

 

 

テーマは「集団的自衛権を巡る国民の視線」ということで、安倍総理大臣が熱心な憲法解釈の見直し問題ですね?

(島田)
◇はい。集団的自衛権というのは「密接な関係にある他国に対する攻撃を自分たちへの攻撃とみなし、実力をもって阻止する権利」です。歴代の内閣は「それは憲法上許されない」としてきていますが、それをできるように変えようというのが現在の議論です。
◇きのうまとまったNHK世論調査をもとに、国民の皆さんがどう受け止めているのか見て行きたいと思います。
 
Q1)まず毎月見ている安倍内閣の支持率は、どうだったんですか?
 
kkk140513_01_1.jpg

 

 

 

 

 

 

 


◇こちらです。安倍内閣を支持すると答えた人は、先月より4ポイント上がって56%、支持しないは2ポイント下がって29%でした。
◇4ポイントアップは統計的には誤差の範囲内ですが、上向き傾向には違いありません。
 
Q2)上向き傾向の理由は何でしょう?
 
kkk140513_01_2.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

◇安倍内閣の支持率は積極的な経済政策に対する期待が支えになっていて、今月も「経済政策を評価する」が先月より2ポイント上がっています。
◇ただ、それだけではなく、先月下旬の日米首脳会談で、オバマ大統領が安倍総理の安全保障面での積極姿勢を評価したことも影響したと考えられます。
◇去年暮の安倍総理の靖国神社参拝で日米関係がぎくしゃくしていたのが、これによって何とか改善に向かい始めたと受け止めた人もいたと思います。
 
Q3)きょうのテーマの集団的自衛権についても、オバマ大統領は評価したんですよね?

◇はい。大統領は安倍総理が新たな検討を行っていることを歓迎しました。まあ、日本が集団的自衛権を行使して守る国と言えば、まずアメリカですから、当然と言えば当然です。
 
Q4)先月の調査と比べて、集団的自衛権に関する回答に変化はあったんですか?
 
kkk140513_02.jpg

 

 

 

 

 

 

 

◇ありました。先月の調査では、行使できるようにすべきだ24%、行使できるようにすべきでない
22%、そしてどちらともいえない45%でした。
◇それが今月の調査では、どちらともいえないが8ポイント減って、その分、行使できるようにすべきだが6ポイント増え、行使できるようにすべきでないは1ポイント増でした。
 
Q5)できるようにすべきだが増えましたが、一番多いのはどちらともいえないですね?

◇そうです。角度を変えて、今月の結果を男性、女性の別に、さらに年代の違いも併せて見るとこうなります。
  
kkk140513_03.jpg

 

 

 

 

 

 

 

◇男性では若い人たちから年輩の人たちまで、行使できるようにすべきだと答えた人が一番多いんです。
◇ところが女性では若い人から年輩の人たちまで、どちらともいえないが一番多いんです。
 
Q6)ずい分と対照的ですね?

◇国の守りですとか、武力の行使ですとか、勇ましい話になると男性が前のめりになり、女性が慎重になるというのは昔からよく言われることです。
◇でも、女性にどちらともいえないがこれだけ多いということは、この問題に熱心な安倍総理や自民党関係者の説明が届いていないことの表れともいえます。
◇男性より数が多い女性に理解されないようでは、無理な政策転換と言われかねません。
 
Q7)この問題で、最近「限定容認」という言葉を耳にしますよね?

◇それはこういうことです。「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」というのが、これまでの
政府の憲法解釈です。
◇これに対し自民党の中から「集団的自衛権の行使は範囲を限定すれば憲法上許される」という主張が出ているんです。
◇これが限定容認という憲法解釈の変更論でして、これを妥当だと思うが20%、妥当だと思わない22%、どちらともいえない21%、主張の内容をよく知らない31%でした。
 
kkk140513_04.jpg

 

 

 

 

 

 

Q8)何がどう限定なのかが、分かりにくいですよね?

◇例えば、他国の領土、領海に入って集団的自衛権を行使しない、つまり公海・公の海の上での
行動に限定するといった、いくつもの条件を付けるという考え方です。
◇今週中に発表される有識者懇談会の報告書や、それを受けた安倍総理の基本方針の表明では、この限定容認の考えが軸になります。それがどこまで理解されるかが焦点です。
 
Q9)それとこの問題では、憲法解釈の変更ということも議論になっていましたよね?

◇はい。4月の調査で「安倍総理は政府の憲法解釈を変更することで集団的自衛権を行使できるようにすることに意欲を示しています。あなたは安倍総理の考えに賛成ですか」と聞きました。結果はこうでした。
 
kkk140513_05.jpg

 

 

 

 

 

 

◇同じ質問に対し、今月の結果は、どちらともいえないが8ポイント減って、賛成が6ポイント増えました。プラス・マイナスの数字が合わないのは四捨五入の関係です。
 
Q10)賛成が増えましたが、僅かですが反対の方が多いですね?

◇集団的自衛権の行使に対する賛否と比べると、憲法改正をしないで、政府の解釈変更で基本政策を変えることへの疑問の声が存在しているということです。
◇どちらともいえないという4割近い人たちが、今後どう動くのかに注目です。
 
Q11)一方で、国会では憲法改正の手続きに関する議論も進んでいましたよね?

◇憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が、先週、衆議院で可決され、参議院に送られました。
◇その柱が、国民投票の年齢を、現在の選挙の20歳以上から、18歳以上に引き下げるという点でして、これに対する賛否を聞きましたら、全体で45%が賛成でした、
 
kkk140513_06.jpg

 

 

 

 

 

 

◇この改正法案は、与野党7党が賛成して可決していまして、与党支持者でも野党支持者でも無党派層でも賛成が多数です。
 
Q12)手続きが整うと、直ちに憲法改正が進むわけでもないですよね?

◇そうですね。ただ、手続きが整うと、憲法のどの部分をどう変えるかを巡って、中身の議論が具体的に交わされることになります。
◇集団的自衛権を巡る問題は、そうした将来の憲法改正の議論にも繋がるものとして見ておく必要があると思います。
 
Q13)最後になりますが、各政党の支持率はどうだったんですか?
 
kkk140513_07.jpg

 

 

 

 

 

 

 

◇今月も自民党が41.4%で一強は変わらず、これに民主党、公明党、共産党、他の各党の順で続いています。
 
Q14)大型連休が終わって、国会での論戦が再開されるんでしょうか?

◇そうあって欲しいですね。集団的自衛権の問題では、積極的な自民党と慎重な公明党の議論ばかりが注目されています。
◇でも、この問題では、野党でも積極的な政党、慎重な政党、反対の政党と様々です。
◇国の基本に関わる問題です。国会で各党の考え方をはっきりと示してもらいたいです。