岡本玄介 - YouTube,ゆるい,キャラクター,特撮 09:00 PM
怪獣ブームに乗っかった、史上最も珍妙なSF怪獣映画9選
怪獣ブームの影には、子供を惹きつける奇想天外な発想が必要だったのです。
『ゴジラ』や『ガメラ』など、小さい頃から慣れ親しんだ大怪獣映画。私たちは子供の頃から観ているので、怪獣が放射能火炎を吐いたり、甲羅の中から火を噴いて空を飛んだりと、当たり前になっていますが...よくよく考えてみれば非現実的でおかしな設定ばかりですよね。
太古の昔に恐竜が地上を闊歩していた事実もあることですし、まぁ100歩譲って大怪獣たちが存在していたとしましょう。
そして遥か銀河の彼方に、地球上の生き物とは全く異なる生命体がいる可能性も否定できないと考えたとしても、やはりお手伝いロボットが物理法則を無視して巨大化したり、ハニワの石像に生命が宿ったり、ましてやフランケンシュタインまでもが巨大化したりっていうのは相当ブッ飛んでいると思わざるを得ません。
大怪獣映画そのものが、想像上のエンターテイメントだとしても、やはりそのジャンルから珍妙な方向に派生していった怪獣映画も在るワケで、今回は「io9」による選りすぐりの「史上最も珍妙なSF怪獣映画9選」をご紹介したいと思います。
特に順位はありませんが、色々とツッコミながら読んでいただければ幸いです。ではどうぞ!
■『ゴジラ対メガロ』(1973年)
人類が行った核実験により、シートピア海底王国にも被害が出てしまい、シートピア人は人類に復讐するために、王国の守護神メガロを地上に送り出します。
そこへ、元々は人間の生活をお手伝いするロボットだったジェットジャガーが立ち上がり、さらには人間サイズだったのが巨大モンスターと同じサイズにまで大きくなり、ゴジラを交えて大乱闘を繰り広げます。
「東宝チャンピオンまつり」で公開されたこの映画では、『ゴジラ』はもう人間の味方になっており、ジェットジャガーとタッグを組んでメガロ&ガイガン組とプロレスをするのです。
上の動画では、良心回路を持っているはずのジェットジャガーが、卑怯にもメガロを後ろから羽交い締めにして『ゴジラ』の空飛ぶドロップキックを待ち構える場面です。ふっ飛ばされたメガロを抱え上げ、さらなるドロップキックを浴びせさせるジェットジャガー...相手が悪い怪獣だとしても、正義のヒーローがそんな戦い方でイイのでしょうか!?
■『北京原人の逆襲』(1977年)
リメイク版『キングコング』の成功に憧れた香港ショウ・ブラザーズが、香港版『キングコング』を作りたいという発想から撮られたのがこの映画です。実際は特撮スタッフのほとんど全員が日本から呼び寄せられ、オリジナルの『キングコング』に似せないよう北京原人という体で作られたそうですが...。
上のトレイラーを拝見する限り、見世物として街にやってきた北京原人に、原人が想いを寄せる美女、街を破壊しビルの屋上に登るシーンなど、色んなところで『キングコング』を思わせます。
当時のスタッフたちの苦労話もなかなか興味深いので、詳しくはウィキペディアを読んでみてください。香港中から300人分の人毛を集めて北京原人に植毛したとか、金髪のスウェーデン人女優が一時帰国から戻ってきた際に太ってしまい、ビキニからよくポロリしていたとか、面白い話が色々書かれていますヨ。
■『ザ・ジャイアント・クロウ』 (1957年)
白黒時代に作られた特撮映画で、何億光年も遥か彼方からやってきたという、巨大なハゲワシが世界中を恐怖のズンドコに叩き落とすという、SFパニック映画です。
戦艦と同じサイズだというこの怪鳥は、戦闘機ですらクチバシでパクっとくわえられるサイズ。例えば『ゴジラ』であれば、一応は地球で生まれたモンスターなのですが、地球に存在するハゲワシにソックリなのに、宇宙から飛来したモンスターというのがいかにも古き良きSFパニック映画ですよね。
それでも、反物質バリアーを纏っているこのモンスター。通常の銃弾などはすべて跳ね返されてしまうのです。しかしながら人間は、ほとんど脈絡なく中間子原子を使えばそれを破壊できるのだと突如ひらめいたりするんです。おかげでこのジャイアント・クロウは撃破されましたとさ。めでたしめでたし。
■『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(1969年)
こちらは第1回目の「東宝チャンピオンまつり」で公開された、超低予算『ゴジラ』映画。
両親が共働きで鍵っ子の少年、一郎。いじめられっ子の一郎は、同じアパートに住む発明おじさんの部屋で、彼が作った発明品で遊ぶのが大好き。ある時、夢の中に行けるという発明品で遊んだ一郎は、憧れの怪獣島に行くことに成功し、ミニラと仲良くなり『ゴジラ』を含む9大怪獣たちが戦う姿を目の当たりにするのです。
物語の90%は一郎少年の夢の中の話であり、残りの10%は古い『ゴジラ』映画で撮影されたネガフィルムを継ぎ接ぎして編集したもの(以後、その手法が主流に...)。
■『大魔神』(1966年)
特撮映画でありながらも、戦国の世を舞台とした時代劇の『大魔神』。非常にこだわりの強い特撮技術と、強烈なインパクトを持つ武神『大魔神』のキャラクターから、後世に語り継がれる作品として日本ではお馴染みです。
しかしながら海外では、『ゴジラ』や『ガメラ』ほど有名ではないようです。「悪魔のような巨大サムライ」が町を壊す、シュールな映画としかうつっていないとか。
まぁ確かにあの血走った目に青くて怖ろしい形相をしていますし、名前に「魔」の字も入っていますからね。でも町民のために怒りを露わにしている、正義の味方なのです。
■『宇宙大怪獣ギララ』(1967年)
ギララは地球上から生まれ出た『ゴジラ』とは違い、宇宙からやってきた怪獣です。
東宝の『ゴジラ』と大映の『ガメラ』から起こった怪獣ブームに乗っかり、松竹が制作したのがこちらの映画。動画の冒頭では、全国の子供たち(210,564人)から「ギララ」のネーミングを公募したのがわかりますね。
あらすじは、日本宇宙開発局・富士宇宙センターの宇宙船「アストロボート」が、月から還る途中に謎の発光体と遭遇し、謎の物質を噴霧されてしまいます。地球に帰り着いた宇宙船には、岩石のような発光体が付着しているのが発見されるのですが、実はそれこそがギララに成長する源だったのです。
ギララは地球上のエネルギーを吸収するべく、原子力発電所や水力発電所を破壊しつつ巨大化していきますが、発光岩石の残りカスだった白い物質が全てのエネルギー吸収と放射線を遮断する「ギララニウム」だということが判明し、これによってギララは弱体化するのでした。
しかしこれは、『スーパーマン』におけるクリプトナイトの役割りですね。地球の資源を吸い取りに来るのは、かつての記事「愛すべき史上最高のモンスター/巨大怪獣映画10+1選」で4番目にご紹介した『クロノス』と同じでもあります。色んなエッセンスのイイとこ取りで、お得な作品と言えなくもないかも?
■『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)
またしても「東宝チャンピオンまつり」で公開されたのが、こちらの1本。
高度成長期の日本が直面した、公害問題を敵とした社会風刺的な作品で、制作の前の年に起きた光化学スモッグ事件から着想を得たことでヘドラが生まれたのだそうです。
多数の微生物が寄り集まって出来ているというヘドラの弱点は、ズバリ乾燥。これは人間の科学者によって判明した撃退方法で、電極板と熱線を用るまでは良いのですが、不思議と(?)『ゴジラ』は人間側が用意した作戦を理解しており、人類の知恵のおかげでなんとかヘドラを倒すことができたのでした。
一応は打倒できたヘドラですが、身体から飛び出して逃げた本体を追いかけるため、放射能火炎をジェット噴射のごとく吐きながら空を飛んだ『ゴジラ』...これは人類にとって公害にはならなかったのでしょうか?
ちなみにですが、ヘドラの縦長の目は女性器をモチーフにしているそうです。でも血走った眼がコワい...!!
■『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年)
ドイツから、わざわざナチが広島に運び込んだ「フランケンシュタイン博士の創造した不死の心臓」。これを研究し、不死身の兵士を生み出そうという作戦が行われようとしたその時、アメリカから原子力爆弾が落とされ、その心臓は失われたものと思われていたのですが...。
それから15年後、広島を徘徊する浮浪児がタクシーに轢き逃げされるも、保護され助かったその少年は身長20メートルの巨人に成長するのです。
そう、彼こそが15年前に失われた不死の心臓が人間化したものだったのです。そして同じ時期、秋田県で起こった大地震によって復活したバラゴンが暴れ出し、保護施設から逃げ出し行方不明になっていたフランケンシュタインと戦う...という、想像力豊かなストーリーなんです。
はじめは20世紀フォックス社が『キングコング』とフランケンシュタインを対決させようと企画し、それが東宝に持ち込まれて怪獣映画になったんですって。荒唐無稽かと思われるかもしれませんが、ナイス日米合作って感じです。
■『ガメラ対大悪獣ギロン』(1969年)
謎の宇宙船に乗り込み、辿り着いた第十番惑星テラにて一見優しそうな異星人の女性たちに脳ミソを食われそうになる少年たち。
そして宇宙船を追い、彼らを助けにやってきた『ガメラ』が戦うのは、元祖ナイフヘッドの大悪獣ギロン。ギロンが放つ手裏剣が、『ガメラ』の目の下にブっ刺さったりしながらも、鉄棒で大回転したり「宇宙の果ての怪獣オリンピック」を始めてしまう、コミカルなストーリーがこの映画の大筋です。
しかもこの作品の最後には、ギロンによって真っ二つにされた宇宙船を、『ガメラ』が吐く火炎で溶接・修理してしまったという、恐るべき秘技が炸裂しました。
この時すでに日本語がペラペラなイーデス・ハンソンさんと、コメディアンにして俳優の大村崑さんが出演されているのも、この映画の大きな見所かと思います。
近藤巡査という役名だったため、映画の中でも「コンちゃん」と呼ばれた大村さんでしたが、英語の吹き替えでも「コンちゃん」と呼ばれるも、外国人にはワケが解らず「コーンジョブ(とうもろこしの仕事)」と間違った聴き取られ方をしてしまったのがザンネンなところです。
以上、「io9」が選んだ「史上最も珍妙なSF怪獣映画9選」はいかがでしたでしょうか?
子供ウケを狙いすぎるがゆえに、今となっては有り得ないほど失笑モノの演出(失礼)があったり、結構ブっ飛んだキャラ設定だったりと、当時のご苦労が色々と伺える映画ばかりでしたね。
とはいえ改めて観ると、どれもが素晴らしいエンターテイメント性を持った名作揃いです。それに、こうした歴史があって『クローバー・フィールド』や『パシフィック・リム』といった現代のSF怪獣映画に引き継がれて行ったのも事実です。
ここには掲載されずとも、皆さんがお好きな怪獣映画の取り分け珍妙なシーンなどご存知でしたら、ぜひとも教えてくださいね!
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