2020年東京五輪の主会場となる国立競技場(東京都新宿区)の建て替え計画に対し、建築家の伊東豊雄さん(72)が12日、現競技場の改修案を発表した。現在の建て替え案には問題があり、「今となっては改修案がベスト」と話す一方で、実際に改修することになっても、自身が設計することはないとしている。

 改修の可能性を示した案は、現在のスタンドの一部を削った上で2段または3段の観客席を増設して約8万人の収容人員を確保。陸上トラックも9レーンに作り替える。工事費は建て替え案の「半分程度で済むのではないか」としている。

 伊東さんは12年、建て替えのためのデザイン競技に参加。最終11候補にまで残ったが、最終的にはザハ・ハディドさんの案が選ばれた。その後、「プロセスに市民誰もが参加できる」とされておりながら、一般への情報開示が少ない現状に不信感を抱いたことや、ハディド案に建設費や遮音、規模の点で問題があることから、改修の可能性を探ったという。

 伊東さんは「せんだいメディアテーク」などの作品で知られ、建築のノーベル賞とも呼ばれるプリツカー賞などを受けている。(編集委員・大西若人)