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【社会】

ステロイド混入薬、年間1600人超に 横浜の医院 集団提訴へ

被害弁護団の結成を発表する鈴木順弁護士(手前右)と黒田陽子弁護士(同左)=4月28日、横浜市中区で

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 横浜市都筑区の山口医院がステロイド成分を含むアトピー性皮膚炎用の漢方クリームを「ステロイド不使用」として処方した問題で、横浜弁護士会の有志らによる神奈川医療問題弁護団は被害弁護団を結成し、十九、二十日に被害者向けの説明会を横浜市で開く。夏までに損害賠償を求めて院長らを集団提訴する方針。ステロイド入りクリームは、昨年だけで約千六百人に処方されたことも判明し、神奈川県警も捜査に乗り出した。 (山田祐一郎、小沢慧一、橋本誠)

 ステロイドは通常、アトピー性皮膚炎の治療などに用いられるが、急に使用をやめると元の症状が悪化する副作用がある。副作用に悩む人が多く、今回のケースでは「ステロイドを使わずにアトピー治療ができる」という評判に多くの人が飛びついていた。

 「ステロイドを使わないから通っていた。だまされた気持ちでいっぱい」。憤るのは、約一年前から山口医院に通っていた患者の女性会社員(34)だ。同医院をインターネットで見つけた。

 国民生活センターの調査では、山口医院で処方された「漢方クリーム」には、五段階で最も強いステロイドが含まれていた。クリームは保険適用外で五グラム四千円と高価だった。

 この女性によると、医院では漢方アドバイザーの中国人女性のアドバイスを受け、クリームは院長が処方していた。中国人女性による相談は食生活への助言もあり、数カ月先まで予約が埋まる人気ぶりだった。

 被害弁護団によると、患者らの多くは女性タレントのブログやインターネットでの口コミなどを見て受診していた。ある母親は二〇〇六年から最近まで子どもの全身にクリームを塗っていた。子どもの皮膚が荒れ、他の病院でステロイドの副作用の皮膚炎と診断された。子どもは入院した。

 医院の弁護士によると、クリームを処方された患者は昨年だけで、首都圏を中心に全国で約千六百人に上る。医療問題弁護団の四月の電話相談には、神奈川、東京、千葉、埼玉、愛知、静岡などの都県の患者や家族から、二百件以上の相談があった。

 東京都立小児総合医療センターの赤沢晃アレルギー科部長は「ステロイドが入っていない薬を塗って、症状がすぐに良くなることはあり得ない」と話す。「ステロイドは強さや量の調整が難しく、医師の指導なしに使うと症状がぶり返してひどくなったり、目の周りに塗ると緑内障になる恐れもある」。実際、被害弁護団に緑内障のような症状を訴える患者もいるが、医院では患者に「目や口の周りに塗っても問題ない」と説明していた。

 被害弁護団の鈴木順弁護士は「医院側はステロイドが含まれていると疑うべきなのに、十分な根拠がなく使ってきた。医師の信頼を悪用した」と指摘する。

 クリームは漢方アドバイザーの中国人女性が仕入れていた。女性は「北京大学教授」「雲南省名誉市民」などと名乗り、親族分を含めて年間約二千八百万円の報酬を医院から得ていた。女性は医院の弁護士に「ステロイドは中国の工場で混入した」と説明したが、工場の存在は確認できなかった。現在、女性の所在は不明になっている。

 県警は先月、医院を家宅捜索してカルテなどを押収し、分析を始めた。被害弁護団の説明会は横浜市中区の関内ホールで、十九日は午後七時から、二十日は午前九時四十五分から開かれる。問い合わせは神奈川医療問題弁護団=電045(226)9961=へ。

 

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