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【38カ月目の福島はいま】深刻な汚染解消されぬ「小鳥の森」、福島市の除染は?(鈴木博喜)

2014年05月12日

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【部活止められなかった教師の悔恨】
 「これはトチノキですよ」
 一眼レフカメラを手にした男性(66)が教えてくれた。福島市に生まれ育ち、高校教師としての生活を終えたばかり。「これはイカリソウだね」と指さしながらレンズを向ける。しかし、彼には一つの後悔があった。
 原発事故直後の校庭。野球部員たちが土煙をたてながらスライディングの練習に励んでいた。降り注いだ放射性物質が、舞い上がった砂とともに口に入ったであろうことは容易に想像がつく。
 「まずいな、と思いましたよ。私の専門は物理ですから一定の知識はあります。やめさせろと何度も顧問に言おうと思いました。でも言えなかった。その時、私は既に定年後の再雇用講師でしたし、口にできる雰囲気でもなかった…」
 職員室でも、屋外での部活動の実施に疑問を投げかける教師は皆無だった。そこで、授業で生徒たちに呼び掛けた。「お前たちが声をあげろ。自分たちの不利益になることには黙っているな」。
 教壇に立ち始めた70年代、福島第一原発で金属損傷の一つである「応力腐食割れ」が問題となった。独自に資料を作り、授業で生徒たちに原発の危険性を説いた。今回、久しぶりに当時の資料を使って授業を行った。「先生、原発なくなったら電気困っぺ?」。地元で原発事故が起きても、そんな声があった。他の単元もあり、原発事故ばかり取り上げるわけにもいかない。無力感ばかりが募ったという。。
 「あの時、(部活を中止しろと)言えば良かった…」
 躊躇している間に、福島県立医大の副学長に就任した山下俊一氏らが県内を巡り、あっという間に安心感を広めて行った。「あの動きは本当に早かった」。森を覆い始めた新緑を見上げる。大好きな里山。3年前の苦い記憶は、消えることはない。

【「森の除染など無理だと思う」】
 福島市農林整備課によると、小鳥の森ではこれまで、ごく一部分を除いて除染は行われていない。森のスタッフが継続的に空間放射線量を計測しているが、依然として1.0μSv/hを超す。来年3月末までの工期で森林内の除染作業を予定しており、入札を実施中だ。
 昨年は応札者がなかったという。実施業者が決まったら、観察広場からシジュウカラの小径、ネイチャーセンター付近までの森を除染することになる。
 「レンジャーの方々から、除染作業は営巣が終わる7月以降にして欲しいとの要望が届いています。放射能対策アドバイザーである石井慶造教授(東北大)の助言を受けながら進めて行きます。落ち葉などは市内に2カ所あるクリーンセンター(ごみ焼却場)で燃やします。汚染拡散ですか?ええ、大丈夫です。セシウムはバグフィルターできちんと吸着させますから」
 しかし、現実問題として森の除染など可能なのか?チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシでは、除染は行わなかった。
 前出の市職員が打ち明ける。「確かに、森林の除染はできないと思います。無理でしょうね。今回も、あくまで生活圏の森林という位置づけですから。一方で、小鳥の森のファンの方々からは『なぜ市は早く除染を行わないんだ』とお叱りの言葉をいただく。正直、市としても苦しいです」。
 小鳥の森は素晴らしい森だ。親子で歩けば様々な勉強になる。だが、とても子どもたちを連れて行かれる環境にない。職員は「はい、そうですね」とうなずいた。来春も、子どもたちの自然観察は叶いそうにない。

写真説明
(左)市あぶくまクリーンセンター側の入り口では、手元の線量計は0.7μSv/h
(左中)周囲を除染したモニタリングポストの数値は0.3-0.4μSv/hだが、森に一歩、足を踏み入れると0.9μSv/hを超す
(右中)草花の撮影に来ていた元高校教師の男性。原発事故直後の部活動を中止できなかったことを、今も悔いている
(右)森のスタッフが定期的に測定している放射線量は、依然として1.0μSv/hを上回る

(文・写真:鈴木博喜)

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