こんにちは！佐渡の本間です。
佐渡海峡をはさんで本土と対面する小佐渡の東方・前浜海岸に面する山間（やまあい）の集落が、「赤玉（あかだま）」。戸数５０、人口１５０人。両津港から車で海岸道路を走れば約３０分、河崎から山道を越えれば約４０分の距離にあります。勿論、小木港とも通じています。
赤玉集落についての関心事は、次のとおりです。
�‘�本にここだけしか取れない鉱石がある。それが、赤玉石。
�⊂�佐渡山中の海抜４４０ｍほどの峠に湧水の池である「杉池」（天然記念物）があり、昔から涸れることのない池として信仰の地となっている。
��昔京都から宇京と称する武者が、大金を持って佐渡に来て赤玉に住み着き、庄屋として権勢をふるったとされる。その後一旦は京都へ帰ったが再度当地へ来て住みついた。
１）子孫であると言われる宇京治郎右衛門という人が在住し、宇京家は二ヶ所に墓がある。
２）次の祭事は、その武士が京から持ってきて伝授したと伝えられている。
大獅子、小鹿舞、花笠踊り（この踊りは、河崎の久知（くじ）八幡宮のもの（新潟県の無形民族文化財）と同系統とされる）、おかぐら、大鬼舞（佐渡の鬼太鼓の原型という推説もある）、槍おどり、白刃おどり
a．花笠踊りについて、０６年９月１５日号「佐渡の祭り２：久知八幡宮例祭（河崎）」に記述。その際、久知八幡社の場合 六代の久知の本間地頭の命によって、京都で舞の修行をしてきた者が完成させたとある。
b．大鬼舞について、社前で舞う鬼は一匹で、白毛、白面（口をあけている）で腰部に白黒の太縄を二重にまわし、男の肩に担いだ太鼓を立ったまま別の若衆が叩く。「舞は国仲系のような激しく大きな動きはせず、重厚で古風なおもむきを伝えている。鬼の持つ撥（ばち）が、尺二寸の長撥で先端が太くなっている。昔は、鬼が叩いていたものかもしれない」
�そ戸扈嗣韻凌�仰に係わる行事として、７つほどの講があった。以下は、例。
１）善宝寺講
a．善宝寺講は、江戸後期から始まった。魚の神であることから、６月２７日の祭日には鶴岡市大山の善宝寺に代参を送り、村では浪花節や文弥人形をやって楽しんだ。
善宝寺については、前回「鶴岡と佐渡（その３）」に記述。
b．杉池講
�ヂ爾痢嵋面遏廚箸いγ糞屬�ら平安末期のものとされるたくさんの数の須恵器（すえき）の破片が出土。
以上から今回は、２点に絞ってまとめました。
１．赤玉石
（１）赤玉石とは
�／Ш未糧�しさは日本一と言われ、日本三銘石のひとつとされる。
��鉄分とご石英が高熱と高圧で結合した石（学名は、鉄石英）で、非常に硬く（硬度６．５〜７．０度）、磨くと透明感のある光沢ができる。
��佐渡の、しかも赤玉地区にしか出土しない石（鑑定検査で識別できる）とされる貴重な石。
（２）用途
�仝殿紂μ鐇源�代では、勾玉（まがたま）や管玉など装飾品として使用。
１）佐渡・新穂の「玉造り遺跡」（玉造り場としては、国内最大とされる）からは、赤玉の管玉が多く出土。
２）青森県や九州の古墳からも出土。
��天正１８年（１５９０）真野俊隆が豊臣秀吉に赤玉石（当時の名は、「朱真石」）を献上。
また、江戸時代の初め佐渡奉行によって、江戸城へ献上された赤玉石が今も皇居の「蓮翠の庭石」として飾られているという。
酒田の本間家本邸（資料館になっており、入館は有料）にある佐渡の「赤石」といわれているものも、赤玉石に違いない。
�Ｂ腓�いものは飾り石としての庭石や床飾り、小さいものは鑑賞石・かんざし・カフスボタン・ネクタイピンの装飾品に珍重されている。
�じ鼎�から朱（赤）は魔を払うと言われ、赤玉石は縁起の良い石とされた。
佐渡では、玄関や床の間に家の守り石として飾られてきた。
なお、与謝野晶子や高村光太郎に、赤玉石を取り上げた歌がある。
（３）専門学者による現地調査でのエピソード
昭和２２年７月下旬 地質鉱物学者 上村理学博士（新潟県嘱託）が四人の学生を伴って赤玉石の調査に訪れた。以下は、その時 世話役を勤めた篠原世作氏の記録に基づく。
�仝〆叉，播效罎鯆瓦戮討い�と、はじめは赤玉石がほとんど転石（転がりこんだ石）であったが、切畑の田んぼまで登った処で・・・磁針が活動を始め、博士は大変喜ばれ、ここに大きな鉱脈があるぞと話された。切畑はどこも赤玉石の鉱脈がある。
�⊃�池を源として流れる中川の流域にしか赤玉石がないというのが、事実と一致。
１）杉池は何億年か前の火山の噴火口の跡。
２）噴火した時の溶岩が火熱のために数年間流れて長面一帯を埋め、その後河川の変更により、扇状地を造りさらに海に流れ込んだ。
３）赤玉石となるには、良質な鉄石英という鉱物が多量に含まれた赤土が集積して長年のうちに石となる。
４）調査目的は、ある種の工業用加工のために赤玉地内の石と相川鉱山の廃石を対象とし、どちらが工業用に最適であるか見究めるものであった。結果として、相川の石が粘度と量の面から工業用の玉として最適であり、それを使用することになった。
赤玉村民は、発掘による土地の荒廃や所有権問題などが起こる混乱を免れ、それで安堵（あんど）したという。
２．杉池とその周辺
（１）植物
１）この湧き水は、地下を通って北側のひょうたん池（幅３５ｍ・長さ８５ｍ・水深４〜１１ｍ）に通じている。
２）春はヤブツバキ、初夏はミズバショウ、秋は紅葉で四季に応じて、その彩を変える。
�⊆�辺は落葉樹林で、面積は約５ｈａの原生林に近い自然林となっている。杉池周辺には、３００種ほどの植物があるといわれる。
１）１９７１年８月１日に佐渡園芸研究会主催の花木探訪会に新潟大学理学部の石沢進氏が同日に同定された樹木は３９種。アカメタイヤ、コナラ、イヌシデ、ヤマトアオダモ、ツタウルシ等々。
２）石沢氏は、草木類５６種、しだ類９種を同定。その中には、ミズバショウがある。
��指定樹木等
１）杉池の広葉樹約３００本は、昭和４０年（１９６５）天然記念物に指定。
２）コナラ林は、昭和５３年（１９７８）新潟県の特定植物群落に指定。
３）赤玉部落は独自の文化財保存委員会をもち、国見山のイチイの巨木（高さ１５ｍ・幹廻り１．９５ｍ）を昭和４５年（１９７０）保護の対象に定めた。
（２）動物
�．肇�について、昭和２０年代には里に来たことはなかったが、３０年から４０年代にかけて群れで村山の谷間や水田にくるようになり、秋から冬にかけては人家の近くでも見かけたという。その頃は、貴重な鳥という情報を知らず、保護するどころか稲田を荒らす害鳥として誰もが敬遠したとされる。
�△劼腓Δ燭鹵咾砲録郵�的に放流したヒブナやマブナ、サンショウウオ、ヤマアカガエル、ニホンヒゲナガミジンコがおり、元池ではサド・サンショウウオ、ヤマアカガエル、モリアオガエルなど。
３．まとめ
佐渡の一集落の赤玉とはいえ、古代から赤玉石を通じて青森から九州にまで係わりがあることには驚いた。少なくても江戸時代 赤玉では江差（北海道）と交易があった。
島であるということは、他地域と孤立する一面はあるが、大昔や昔であれば文物の交流という面では、海岸であれば海流や風の自然の力を利用して遠い地域と直結し、むしろ交流・交易は自由活発。陸つなぎであれば、近隣は別として物資を運ぶ大変な労力（船のように２４期間運航とはいかない）や縄張り等で他人や他国を許可なく勝手に通ることはできない。出来ても、通行料や税を取られる。
それだけでなく、佐渡における地頭 久知本間家の統治領域や鬼太鼓（オンデコ）や花笠踊りなど芸能の起源で、いろいろと考えさせられることが出てきた。
（資料：『両津市誌 町村篇上』昭和５７年発行、『赤玉部落誌』平成７年発行）
以上
《追記》０７年８月７日
�＿郎蠅粒ご瀑始�から山手へ入り、久知八幡宮や久知川ダムを通り抜けると杉池公園があった。河崎から赤玉までの道路はすべて舗装されている。交通量・人の気配はほとんどない。道路の両脇は、山の中腹までは原生林が続いた。峠付近の高度が高い所で、密集した草木の隙間からヤマユリの花が顔を覗かせていた。
�⊃�池周辺は、鬱蒼（うｊっそう）としている。森林浴を浴びる感じである。池面には、蓮の葉が畔（ほとり）近くに群生。ひょうたん池も見たが、期待したミズバショウは、時期（７月上旬）が遅かったせいか見られなかった。
恐れ入りますが、こちらの記事で掲載しておられる写真画像について、お問合せしたいことがございますので、下記のメール送信フォームよりご一報頂けますでしょうか。
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