JR江差線:お別れセレモニーに1000人なごり惜しむ

毎日新聞 2014年05月11日 21時58分(最終更新 05月12日 00時35分)

JR江差駅のホームで行われた江差線のお別れセレモニーで花束を受け取る運転士(右手前)らと、カメラを向ける大勢の人たち=北海道江差町で2014年5月11日午後1時12分、手塚耕一郎撮影
JR江差駅のホームで行われた江差線のお別れセレモニーで花束を受け取る運転士(右手前)らと、カメラを向ける大勢の人たち=北海道江差町で2014年5月11日午後1時12分、手塚耕一郎撮影

 北海道南部を走るJR江差線の木古内−江差間(42.1キロ)が11日、最後の運行を終え、1936年の全線開通以来78年の歴史に幕を下ろした。沿線の住民たちは、鉄路とともに歩んできた思い出を振り返りつつ、名残を惜しんだ。

 この日、江差町の江差駅前広場には地元の祭り「姥神(うばがみ)大神宮渡御祭」で使われる山車(やま)の一つ「松宝丸」が飾られた。江戸後期の1845年に建造された和船型の山車で、ニシン漁や北前船の交易でにぎわった往時をしのばせる地域の宝だ。1936年11月10日の江差線の開通時にも展示して祝ったといい、松宝丸保存会会長代行の西川孝平さん(68)は「廃線は寂しいが、思い出を皆さんにつくってもらいたくて飾った」と話した。

 江差駅でのお別れ式典には約1000人が集まった。町内でお好み焼き店を営む池田浩一さん(61)はこの日のにぎわいを見て、「普段からこれくらい人が集まっていたら廃止にならなかったのに」と残念そうに話した。

 午後10時7分、最終列車が定刻より約15分遅れで江差駅に到着すると、地元住民らが「さようなら江差線、ありがとう江差駅」と書かれた横断幕を掲げ、拍手とともに出迎えた。そして、折り返しホームを去っていく回送列車を江差追分を歌いながら送り出した。

 小学1年の時、江差線が開通し一番列車を江差駅で歓迎した思い出があるという同町の無職、辻貞雄さん(84)は「最後の列車にお別れを言いに来た。ご苦労さま」としみじみと語った。【鈴木勝一】

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