バスジャック:「事件起こして育ての親に…」45歳男逮捕

毎日新聞 2014年05月12日 10時29分(最終更新 05月12日 13時15分)

バスの乗客の立ち会いのもとで行われた実況見分=宮崎県えびの市のえびの署で2014年5月12日午前4時33分、山下恭二撮影
バスの乗客の立ち会いのもとで行われた実況見分=宮崎県えびの市のえびの署で2014年5月12日午前4時33分、山下恭二撮影

 ◇監禁容疑、「生きていてもしょうがない」のメモも

 11日夜に宮崎交通(本社・宮崎市)の宮崎駅発西都城駅行きの特急路線バスが男に乗っ取られた事件で、県警は通報から約3時間後の12日午前1時ごろ、えびの市の駐車場で乗客らを人質にして車内に立てこもったとして、住所・職業不詳、佐藤成一容疑者(45)を監禁容疑で現行犯逮捕した。乗員乗客にけがはなかった。

 県警によると、佐藤容疑者は「えびのに育ての親のような人がいるが、事件を起こさないと会えないと思った。自暴自棄で死ぬにしても最後に話をしたかった」と供述。「生きていてもしょうがない」という趣旨の記載があるメモも所持していたという。所持金はなかった。

 また、11日午前、県内の警察署に「どうすれば逮捕されるか」と一方的に尋ねる電話があり、佐藤容疑者がかけたとみられるという。

 県警によると、バスは宮崎駅を11日午後9時に出発し、その数分後、佐藤容疑者が宮崎市中心部の「山形屋前停留所」でジーパンに白シャツ姿で乗車した。走行中にはさみ(全長約20センチ)を持ち、運転手に「バスをジャックする。乗客は前に移動しろ」と指示。「えびのに向かえ」と告げた。

 その時点で佐藤容疑者以外に運転手1人と乗客9人が乗っていたが、宮崎自動車道の日向高崎パーキングエリア(PA)と高崎東バス停で23〜74歳の女性計5人と10歳の少年1人が解放され、残った乗員乗客は計4人となった。解放された女性客が午後10時過ぎに110番した。捜査車両が宮崎道でバスを見つけて追尾。バスは予定の地点でも高速を出ずに走り続け、えびのインターチェンジ(IC)から降りた。

 午後11時18分に、同IC近くにあるコンビニエンスストアのセブンイレブンの駐車場に停車。駆け付けた捜査員が説得にあたったところ、佐藤容疑者は育ての親に「会いたい」と要求した。その後、運転手がトイレに行くため降車してきたところで、捜査員が乗降口付近にいた佐藤容疑者を確保した。抵抗することはなかったという。佐藤容疑者は愛知県に本籍があり、県警は家族関係なども調べる方針。【中村清雅、菅野蘭】

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