2014年度の経常収支は緩やかながらも黒字幅が拡大する公算が大きい。消費増税前の駆け込み需要で膨らんだ輸入が一服する上に、海外からの配当など所得収支の黒字幅が拡大傾向にあるためだ。ただ燃料輸入が高止まりし、貿易赤字の解消は遠い。経常黒字の厚みが乏しい局面は続くとみられ、財政の健全化とともに投資を呼び込む構造改革が急務になる。
日本の貿易収支は東日本大震災直後の11年度に約2兆2千億円の赤字となった後で膨らみ続け、13年度は10兆円を超えた。貿易赤字が定着したとの見方が強まっている。
背景には生産体制の変化がある。製造業を中心に中期的な成長を見込める新興国に投資の重点を置く企業は多い。震災を機に進んだ世界的な供給網の見直しも日本からの輸出には逆風になった。
こうした流れは円安傾向が定着しても大きく変わっていない。日本からの輸出品は高品質品に特化する例が多く、円安でも現地で価格を引き下げず輸出量は増えない。14年3月期決算で輸出型の企業は好決算が目立ったが、日本全体の輸出量はほぼ横ばいだった。
自動車各社は海外の消費地に近い場所で生産する体制づくりに取り組み、円高修正後も生産を国内に戻す動きはみられない。国内生産の割合が大きい富士重工業は20年度をめどに米国を中心に海外生産比率を現在の23%から4割に高める計画。吉永泰之社長は「輸出をこれ以上増やそうとは思っていない」と話す。
今後の経常黒字を押し上げそうなのは輸入の減少だ。増税前の駆け込みがなくなり、製品輸入が落ち着いて貿易赤字が縮小するとの見方がある。
ミツビシ・モーターズ、セイコーエプソン、吉永泰之、新家義貴、富士重工業、第一生命経済研究所