物価と暮らし:デフレ→インフレ 原宿と巣鴨でギャップに

毎日新聞 2014年05月12日 09時43分(最終更新 05月12日 10時14分)

 ◇1000円でも吟味、デフレ世代/インフレ世代、高品質を重視

 世界が注目するファッションの街、原宿。休日午後の竹下通りは中学生や高校生、外国人観光客でごった返していた。

 「1回の買い物で買うのは2着ぐらい。1着1000円ぐらいだから、いろいろ買ってもせいぜい4000円だよ」。友人と買い物に来た高校1年生の女子(16)は、ハンガーにかかる服をせわしなく動かし、服選びに余念がない。別の女子大生(19)も「服の買い物は5000円以内。安い服を売る店が増えたでしょ。これで十分」と話す。

 人気の衣料品店「Joli&D」ではブラウスが690円で売られている。客単価は2000円弱。店主の大村繁雄さん(46)は「1000円以下の商品ですら吟味して、何も買わずに店を出る若者も少なくない。安くても本当に欲しいもの以外は買わない」と嘆いた。

 アクセサリーショップ「PARIS KID’S」は、店先に臨時のレジができるほどの盛況ぶり。「カワイイ」系アイテムのイヤリング、指輪、ネックレスが一律324円でお買い得だ。

 同店の運営会社「ジュリア」の直営部マネジャー、木田清隆さん(42)は「原宿は使えるお金が少ない中高生相手の街。竹下通りでは商品の値段が、ここ15年以上、上がっていない」と声をひそめた。「インフレになればどうするかって? 値上げなんてできるわけないよ」

 物心ついた時から物価が下がり続けてきた「デフレ世代」。若者たちの財布のひもは簡単には緩まない。

 原宿からJR山手線で8駅離れた巣鴨駅近くには「おばあちゃんの原宿」として知られる「巣鴨地蔵通り商店街」がある。店頭には、4000円前後のブラウスが並ぶ。価格帯は明らかに「本物の原宿」より高い。

 道行く人にも着飾ったシニア女性が少なくない。東京都内から買い物に来ていた女性(81)は「巣鴨なら2万〜3万円も出せば十分な買い物ができる」と笑顔を見せた。埼玉県から月1〜2回買い物に来るという女性(76)も「巣鴨は安くて良いものがある。気に入った服なら1万円以上出しても惜しくない」と話す。

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