国民投票法:改憲機運、下火に 解釈変更で

毎日新聞 2014年05月10日 00時14分(最終更新 05月10日 00時25分)

 首相は当初、まず96条を改正し、改憲原案の発議要件を衆参各院の「3分の2」の賛成から「過半数」に下げようとしたが、有識者らから「裏口入学」などと批判され、公明党も慎重だったため、現在は事実上棚上げしている。自民党は12年の衆院選と昨年の参院選で大勝したとはいえ、公明党やほかの野党の協力なしには両院とも3分の2には達しない。

 首相が集団的自衛権の行使を憲法解釈変更で可能にしようとしているのも、現状では9条改正が難しいとみているためだ。

 ◇「大人」の範囲定まらず

 国民投票法改正案は付則で、公職選挙法が定める選挙権年齢や、民法の成人年齢の引き下げなどを検討することを明記した。共産、社民両党を除く与野党8党(参院の新党改革を含む)はプロジェクトチームを設置し、まず2年以内の公選法改正を議論するが、長年続いた「大人」の考え方を根本から変える議論だけに、着地点は見えていない。

 選挙権年齢が引き下げられると、各自治体の選挙管理委員会は18〜19歳の住民を新たに選挙人名簿に登録し、高校3年生から選挙で投票が可能になる。その場合、投票の判断力を養うには学校での政治教育の充実が不可欠で、20歳未満の選挙運動には「周知も含めかなり時間が必要」(公明党の北側一雄党副代表)との指摘もある。自民党内では従来の家族観を踏まえ、民法や少年法の改正に慎重論も根強い。

 国民投票年齢だけが4年後に18歳へ引き下げられた場合、自治体が保有する選挙人名簿と別に、18〜19歳を加えた国民投票のための名簿を作るなど行政側の負担が増える。法律によって権利を行使できる年齢がまちまちでは、社会的な混乱も避けられない。【笈田直樹】

最新写真特集