消費増税による幾分の減少要因はあるものの、金融緩和と円安による株高が富裕層を中心とした購買意欲を刺激し、国内の消費は上向いている。また、海外からの観光客によるインバウンド消費も国内消費を後押ししている。そのような中、ラグジュアリーブランドの好調さが目立つ。2013年に円安による10%前後の値上げがあったにもかかわらず、売り上げは120%以上の伸びを記録したブランドも多い。
特に、人気が目立つのは「ルイヴィトン」「エルメス」「シャネル」などの老舗メゾンである。先日LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)の2014年第1四半期の決算発表があったが、日本での売上は前年同期比132%となった。増税前の駆け込み需要の影響がその要因であるが、市場のニーズは底堅く力強いことを示す結果となった。一方で、ラグジュアリーとマスの間に位置するプレミアム/アッパーセグメントのブランドは勝ち負けの差が目立つ。例えばアパレルなら、国内大手アパレルメーカーが手がける百貨店チャネル向けの高価格帯ブランドではそれが顕著だ。オンワード樫山の23区、組曲のように好調を維持しているブランドもあるが、どちらかというと苦戦しているブランドが多い。
さて本日から全5回にわたり、「輝き続けるブランドの本質」というテーマのもと、長年業績好調を維持しているブランドを取り上げ、その本質と成功の要諦について解説したい。第1回の本日は、冒頭述べたようにラグジュアリーブランドはなぜ強いのかについて取り上げたい。
読者の皆様はプレミアムブランドとラグジュアリーブランドの違いを明確に説明できるだろうか。
マーケティング理論では語れない高級ブランド
価格、歴史、顧客、品質などなど、様々な切り口が頭をよぎったかもしれない。答えは、ブランドの作り方にある。プレミアムブランドでは、基本的に従来のマーケティングの考え方、すなわちSTP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)がブランド戦略の中心にある。セグメンテーションとターゲッティングは文字通りどのように市場を細分化しどのセグメントを狙うか、そして、ポジショニングとは競合に対してどのように差別化するかである。そのためのHow to が一般的に世の中で語られているマーケティング理論である。
一方で、ラグジュアリーブランドは作り方が全く異なる。ブランドの根幹は、あくまでデザイナーやメゾンの世界観であり、極論を言えば顧客も競合もブランドの根っこの部分では意識していない。ラグジュアリーブランドの立ち上げにおいては、そのブランドでしか味わえないオンリーワンの世界観を築くこと、作り手の主観を徹底的に磨き上げることが何よりも重要なのだ。
この定義に基づけば、例えば、日本が誇るデザイナーズブランドの1つ、コム・デ・ギャルソンは立派なラグジュアリーブランドである(ここでは詳細には触れないが厳密には、アパレルのラグジュアリーブランドは、デザイナーの世界観が先行するデザイナーズラグジュアリー(例:ジャン・ポール・ゴルチェ)と、ブランドそのものの世界観やアイコンが先行しデザイナーの創作範囲を規定するメゾン型ラグジュアリー(例:エルメス)に分けられる。コム・デ・ギャルソンは前者である)。