自転車は脱クルマの切り札である。子どもから高齢者までみんなが乗れる。温暖化や帰宅困難者の対策になり、健康にも良い。ドライバーの高齢化を考えても、車から自転車への乗りかえを進めた方が安心だ。

 2020年東京五輪に向け、都心に流れ込む車を減らす。自転車で動きやすい街にする。舛添要一知事はそう掲げる。

 ロンドンも遅れていると言われていたが、五輪を機に自転車レーン整備が急速に進んだ。

 東京もこの6年が好機だ。首都から自転車シフトを進めて、全国に広げたい。

 それには事故対策が重要だ。

 交通戦争と呼ばれた高度成長期を思えば、日本の道路はずいぶん安全になった。それでも他の先進国に比べると、事故の死者に占める歩行者と自転車の割合は突出して高い。

 自転車対歩行者の事故の増加も気になる。交通事故全体が10年前の3分の2に減るなかで14%増えている。死亡や障害を負わせる事故を起こして数千万円の賠償判決を受けた例もある。

 自転車は原則として車道の左側を、と法に明記されていても歩道走行はなかなか無くならない。自転車のすぐ横を車が警笛を鳴らして走り去る。そんな車道には怖くて下りにくい。

 まず、自転車が車道を安全に走れる環境を整えよう。何より「弱者優先」の徹底が大切だ。

 日本は道幅が狭いから自転車レーンが広がらない。そう考えがちだが、自転車活用を推進するNPOの小林成基理事長は言う。「それは車優先の染みついたクルマ脳の発想です。なんで道幅が狭くても車の取り分から先に考えるんですか?」

 まず歩く人。次に公共交通と自転車。最後に私有車。道路を使う優先順位を見直そう。

 自転車は、車道を走るもの。ドライバーにそう認識させるために効果的なのは、車道上に色を塗って自転車の通り道を示すことだ。国土交通省などが都内で試みた実験では、歩道走行は大きく減った。

 それでもやはり車道は怖い。そう思う人も多いだろう。

 ただ、自転車と車の事故の大半は交差点で起きている。歩道から突然交差点に出るより、初めから車道を走る方が、車から見えるから安全と言われる。

 中心市街地は車の速度制限をもっと厳しくすべきだし、違法駐輪で歩道をふさがないよう企業や商店街に駐輪場を増やすべきだ。自転車に乗る人も歩行者優先を忘れてはならない。

 強い者勝ちの街を変えるきっかけに五輪がなればいい。