Financial Times

タイの政治危機、経済にじわり打撃

2014.05.12(月)  Financial Times

(2014年5月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

タイのインラック首相が失職、違憲判決で

憲法裁判所の判決を受け、失職したインラック・チナワット氏(中央)〔AFPBB News

タイの政治危機が経済の足を引っ張り、成長率で他の東南アジア諸国に一段と遅れを取りつつある。政権が存続しようがしまいが、さらなる混乱が続くという認識が生まれ、それがタイの回復力を相殺しているからだ。

 タイ市場は8日、裁判所の判決を受けてインラック・チナワット首相が失職した後、じわり下落した。判決は多くの投資家にとって、ダメージはあるが致命的ではない行政の麻痺状態が数カ月続く可能性が高いという感触を強めるものだった。

 アナリストや企業にとってナゾなのは、長引く政情不安や気掛かりな経済指標が、上り調子の企業収益、新興国全般に対する国際的な買い意欲の復活、そしてタイはいつものように何とかやっていくだろうという感覚によって相殺されていることだ。

市場の反応が落ち着いている理由

 東南アジア地域のある外国人投資家は、消費や投資、観光を減退させ、インラック氏の失脚を受けて深刻化する可能性の高い政治闘争にもかかわらず、市場があまりに落ち着いているように見えることに「ショックを受けた」と話していた。

 「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は悪い」。イートン・バンス・マネジメントのグローバル債券部門の共同部長、エリック・スタイン氏はこう話す。「だが、多くの人は『我々はこの映画を前にも見たことがある。なぜ今回は違うのか?』と言っている」

 タイの代表的株価指数は8日に1.7%下げ、バーツは対ドルで0.3%値を下げた。だが、10年物国債の利回りは0.05%低下した。これは、憲法裁判所が7日に職権乱用疑惑でインラック氏を失職させたことに対する落ち着いた反応だった。

 インラック氏の代わりにニワットタムロン・ブンソンパイサーン氏が首相に就いた。同氏は、インラック氏の兄でやはり元首相のタクシン・チナワット氏と近い関係にあり、政府に数十億ドルの負担を負わせ、財政的に深刻な影響を与えているコメの補助金制度を管理する中心人物だ。

 アナリストらは、インラック氏の失脚にほとんど驚きを表さなかった。ドイツ銀行は、裁判所の判決は「尻すぼみの結果」であり、与党タイ貢献党がそのまま政権を担い、中期的なカントリーリスク全体は「基本的に変わらない」とするメモを公表した。

 だが、すべての人がタイの先行きについてそれほど楽観…
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