消滅可能性:原発誘致した17自治体 12が人口維持困難

毎日新聞 2014年05月08日 22時06分(最終更新 05月09日 05時34分)

津波被害で更地と化した町中心部。復興を目指すが、現状では宅地の確保もままならない=宮城県女川町女川浜で2014年5月8日午後6時33分、近藤綾加撮影
津波被害で更地と化した町中心部。復興を目指すが、現状では宅地の確保もままならない=宮城県女川町女川浜で2014年5月8日午後6時33分、近藤綾加撮影

 原発を誘致した自治体の多くが「消滅可能性」の危機にある、と指摘された。日本創成会議・人口減少問題検討分科会が8日発表した「2040年人口推計結果」。原発が立地する17自治体(福島県内を除く)のうち約7割の12自治体は、人口維持が困難になるという。誘致に伴う電源3法交付金や雇用増などを通じ、バラ色の未来を夢見た自治体には今、閉塞(へいそく)感が漂う。

 東京電力柏崎刈羽原発を誘致した新潟県柏崎市は、「消滅可能性」の定義にあてはまる。人口再生産の中核となる20〜30代の女性は約8900人から4400人弱に減ると推計された。

 地域振興を目指し、同市議会と、隣接する刈羽村の村議会が誘致を決議したのは1969年。78年に1号機が着工され、97年に最新の7号機が運転を始めた。再稼働の見通しは立っていないが、総出力は世界最大を誇る。

 しかし、人口増は一時的にすぎなかった。市によると、原発建設工事などで95年までは転入者が転出者を上回ったが、工事がほぼ終わった96年以降は転出者が上回っている。市議会の佐藤敏彦副議長(62)は「原発は人口減少の防止にほとんど機能していない」と分析する。原発関連の仕事をする人には就職先になっても、大学や専門学校で市外に出た若者の多くが戻ってこないためだ。「全国どこでも住めるのに、なぜ原発のある場所に、との思いもあると思う」

 今回の人口推計について、市企画政策課の担当者は「従来以上に厳しい内容だ。新卒者の市内就職支援や子育て支援などに力を入れ、若い女性の流出を抑えたい」と話した。

 東北電力女川原発が立地する宮城県女川(おながわ)町には、東日本大震災の影響も重くのしかかる。

 三陸沖の豊かな漁場を持つ水産業に加え、84年に営業運転を始めた原発は関連企業の雇用を生み、国などの交付金がまちづくりにも寄与してきた。それでも少子高齢化が進み、町の人口は95年から2010年までの15年間で約3000人減の約1万人に落ち込んだ。大震災が追い打ちをかけ、震災からの3年間で人口はさらに約2700人減った。

 平地のほとんどが浸水し、住宅再建のための宅地の確保すら難しいのが現状。町の担当者は「新たな転入者を受け入れるためにも、まずは防災集団移転地の造成を一日も早く完了し、町を復興させたい」と説明するのがやっとだ。

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