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2009.05.1(金)  
vol.65 「坂本龍一さん。そして、平田オリザさん。」 


 先日、坂本龍一さんにお会いしました。また、1月30日には東京で平田オリザさんの講演をお聞きしました。彼らのお話は、私の言いたいことに共通します。ご紹介しましょう。
 音楽家の坂本龍一さんとは、4月19日Kitara大ホールでの彼のコンサートの前にお会いしました。坂本さんは音楽活動とともに地球環境保全活動に取り組んでおられます。「モア・トゥリーズ」という活動の中心。「もっと木を」と呼びかけ、森林整備、森林施業の活性化を図り、カーボンオフセット(二酸化炭素を森林により吸収)を目指します。この日の翌日には下川、美幌、足寄、滝上の各町と森づくりの調印を行うということでした。札幌も白旗山の市有林がこの活動に加わっていければと思います。
 坂本さんが昨年9月にグリーンランドに行き氷河が溶け落ちる現状を見てこられ、私も昨年1月グリーンランドで同じ体験をしてきたこともあり、坂本さんが地球環境の危機的状況を何とかしなければという気持ちがよく伝わってきました。坂本さんはニューヨークを活動の本拠地として長いそうですが、そろそろ日本に帰りたいようなお話も伝え聞きますので、それだったら、札幌ですよ、北海道ですよと、強くお勧めしました。特に「芸術の森」近辺に住まわれるのはいかがかと提案し、今度ご案内することを約束しました。
 札幌は、芸術文化創造と地球環境保全を市の施策の根幹としています。行ってみたいまち、住んでみたいまち、住みよいまちとしてどんな調査でも最高部類に位置づけられます。どうすればこのような評価を保ち続けることができるのでしょうか。
 平田オリザさんが答えてくれています。劇作家・演出家・阪大教授の平田オリザさんには、札幌市が文化庁長官表彰を受賞した際の記念講演会でお会いし、そのときのお話も素敵でしたが、より端的にこの問題に関して述べておられるのをインターネットで見つけました。長野商工会議所での平田さんの講演です。
「今の若者がUターンを決める基準は、ふるさとに仕事があるか否かでなく、ふるさとに生きがいがあるか否かです。若者が生きがいを見いだせる自治体はどんどん元気になっています。反対に、工業団地と住宅地を作れば若者が帰ってくると未だ信じて疑わない自治体は、スパイラル状に衰退しています。
 大事なことは住むことに誇りをもてるまち、帰りたくなるまちづくりです。その核となるのは、文化や芸術を育む土壌だと私は思います。私が教えた学生も、文化政策に熱心なまちの出身者は、すすんでふるさとに帰っています。このまちならば、新しいタイプの成功パターンも認められると、彼らが期待するからです。まちの最終的な競争力は文化によって決定するということです。
 また、生まれ故郷だから地方に帰るという時代ではありません。自分のふるさとに生きがいを見出せなければ、若者は別の地方で暮らします。今や住民が自治体を選ぶ時代です。したがって、文化政策に限らず、子どもを育てやすい環境づくり、自然環境の保全などに力を入れる自治体とそうでない自治体とでは、今後二十年で競争力に圧倒的な差が生まれるはずです。」
 世界的な経済不況の今だからこそ、噛み締めたい言葉だと思います。






 
   
 
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