Sunday, May 11, 2014

「未来予測」の大勘違い

まず、下記の絵を見てほしい。






ほとんどの人が「ああ、ipadね。で?」と思うでしょう。
では次に下記の絵を見てもらいましょうか。






どうでしょうか?「あれ、なんかちょっと違うなあ、なんだこれ」と思った?

種明かしをすれば、この二つの絵は、コンピューターサイエンティストのアラン・ケイが1972年に著した論文「「A Personal Computer for Children of All Ages」のなかで、ダイナブックというコンセプトを説明する為に用いたものです。

1972年ですよ。

この種明かしをされて「すごい!40年も前に未来を予測していたんだね!」と思ったそこのあなた!その解釈は完全に間違っています。これはアラン・ケイ自身も言っていることですが、彼は、未来を予測してこれを描いたわけではないのです。

彼がやったのは「こういうものがあったらいいな」と考えて、そのコンセプトを絵にして、それが実際に生み出される様に粘り強く運動したということです。

ここに「予測」と「実現」の逆転が見られます。

ケイがやったのは「未来がどうなるかを考える=フォアキャスト」ではなく、「未来がどうあって欲しいかを決めて、そこから何をするかを考える=バックキャスト」なんです。

コンサルティングファームに居ると、よくクライアントから「未来予測」に関する相談を受けます。未来がどうなりそうでしょうか?その未来に対して、我々はどのように準備するべきでしょうか?というご相談で、もちろんフィーをいただいてレポートを作成することになるわけですが、個人的には実にナンセンスだと思っています。

いまある世界は偶然このように出来上がっているわけではありません。どこかで誰かが行った意思決定の集積によって今の世界の風景は描かれているのです。

それと同じ様に、未来の世界の景色は、いまこの瞬間から未来までのあいだに行われる人々の営みによって決定されることになります。であれば本当に考えなければいけないのは、「未来はどうなりますか?」ではなく「未来をどうしたいか?」でしょう。

アンドロイドの研究で名高い大阪大学の石黒先生は、アラン・ケイと面会した際「ロボットの未来に可能性はあるのでしょうか?」と質問したところ、アラン・ケイから叱責されたそうです。「お前はロボットを研究する立場にある人間だろう。そういう立場にある人間が、そんなことを他人に聞いてどうする。お前自身は、ロボットというものを人類にとってどういうものにしたいと思っているんだ?」と聞き返され、「アタマをガツーンとやられた感じがした」と述懐しています。

これは再度繰り返して言いたいのですが、いまここにある我々が、どのように未来があって欲しいかを考え、それに基づいて行動することで未来の景色は決まる、ということです。予測なんて本当に無意味だと思う。

最後に、アラン・ケイのメッセージを。

"The best way to predict the future is to invent it."
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ



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