安倍政権が法人税減税を進めようと躍起だが、財務省やその息のかかった自民税調は「代替財源」の確保を条件に議論を加速させている。租税特別措置を抜本的に見直すとか、繰越欠損金の制度を見直すなどの案が出ているが、果たしてどうするのが正しいのか。
そもそも法人税減税は、小泉政権や民主党政権時代から再三政策課題としていわれていることだが、なかなか「財務省の壁」をやぶれないという経緯がある。
たとえば経済界が法人税減税の理由として「国際競争力の確保」を主張、法人税率引き下げの代替措置として消費税増税を唱えてきたが、これはまさに財務省の思うつぼである。財務省としては法人税減税というエサを経済界の目の前につるしておけば、経済界が勝手に消費税増税の運動をしてくれる・・・・・・という形で利用されてきたわけだ。
本来であれば、法人税減税のための正しいロジックとは「二重課税の排除」となる。
これはノーベル経済学賞受賞者のフリードマン教授が主張しているもので、法人は個人の集合体であるため、個人ベースで完全に課税が行われれば、法人税自体が不要となる。その上で、法人の利益は、株主配当、役員報酬、従業員給与と内部留保になるため、前3者については、株主、役員、従業員の所得税で課税。内部留保は、企業価値の高まりになるので、株主の資産増となって資産税で課税する。いずれにしても、法人段階の法人税で課税することはないというロジックである。
しかし、現実の税務執行では、個人の所得・資産は十分に捕捉できないため、やむを得ず法人課税をしている。各国で法人税の減税をしているのは、個人の所得・資産の捕捉が十分になった=二重課税の排除の結果なのである。
この意味で、日本の法人税率が高いのは、納税者番号が先進国の中では徹底しておらず、個人の資産・所得把握が不十分な結果ともいえる。この観点から見ると、納税者番号の導入や国税庁と社会保険料徴収機関を統合する歳入庁を作ることが先決といえる。言うまでもなく、これらは税制の問題ではなく、それ以前の税の執行の問題である。
日本では、納税者番号制はやっと取りかかったばかりだが、歳入庁は手つかずで個人の所得捕捉ができていない。これらを先進国並みに整備した上で、二重課税排除の観点から法人税減税をすべきなのだ。
浅尾慶一郎・みんなの党代表がしばしば国会で質問してきたが、歳入庁がないことによる社会保険料の徴収漏れは「年間10兆円」にものぼるという。政府の答弁はそんなに大きくないというものだが、「徴収漏れ」については否定できていない。ましてそれを改善するために、欧米先進国や旧共産圏の東欧諸国でも当たり前に設けられている歳入庁を作らない理由はない。納税者番号制や歳入庁による代替財源は10兆円以上なので、大幅な法人税減税ができるはずなのだが。
民主党はかつてマニフェストに歳入庁設置を掲げていたが、政権をとると財務省からの横やりなのか、まったく手をつけずに終わってしまった。財務省は、国税庁を政界工作やマスコミ工作に使っていると噂されており、国税庁に対する影響力が低下する歳入庁は絶対反対のようだ。
安倍政権にしても財務省を崩せないと、租税特別措置や繰越欠損金の見直しに手を付けるだけで、せいぜい3兆円程度のシャビーな法人税減税に終わってしまうだろう。
『週刊現代』2014年5月10・17日号より
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