序盤セレッソの鋭い出足によるプレスに押し込まれる。ボールを奪っても山口蛍の刈取りと、扇原の的確な展開で攻め返される。そのため、両サイドバックが上がれず、攻め返せない。しかし、それでもDFとMFで8人のブロックを作り、修正を繰り返して粘り強く守る。中でも富田と武井の位置取りは絶品だった。さすがに柿谷とフォルランの個人技は持て余し危ない場面を作られるが、鎌田と広大は丁寧に身体を寄せて何とか防ぐ。
そうこう我慢を続けていれば、守備にリズムが出てきて攻撃も円滑になる。サッカーと言う競技は、そのようにできているのだ。
30分以降、ベガルタはウィルソンを軸にした逆襲が奏功し始める。中でも40分の決定機は惜しかった。左オープンで受けたウィルソンが中央に飛び込んだ武藤に強く低く入れたボール、武藤が落とし、フリーで梁が狙ったもの(シュートはGK金鎮鉉の正面を突いてしまった…金鎮鉉はワールドカップ代表に入れなかったんだ、J2時代から散々苦労されてきた男だけにすごく残念だ)。
前節の前半、ヴィッセルに同様に押し込まれて我慢しきれず連続2失点を喫した。しかし、この日は同様の展開に陥りながら、全選手が冷静に我慢を重ねてくれた。おそらく、前節4点を奪えた経験が大きかったのだと思う。悪い時間帯は我慢する事、我慢しているうちに展望が開ける事、昨シーズンまで「やれていた事」を各選手がようやく思い起こしてくれたのだ。
心配していたのは後半立ち上がりだった。柿谷とフォルランを最前線に押し出されると、いかに守備を固めていても崩される心配がある。当然セレッソは、ベガルタのプレスがかかり切らない立ち上がりを狙ってくるに違いない。ACLを含めて厳しい日程を戦っているセレッソは、スタミナ面でも厳しいだろうから、ハーフタイム直後が非常に重要になる。
と、思っていたが、セレッソは漫然と後半に入ってきてくれた。文句を言う筋合いはないのだけれども。
ベガルタがペースをつかんで後半は進む。そして、60分には予定通り?赤嶺を投入。少しずつ、攻勢をとれるようになる。そして、狙い通り赤嶺がフリーで抜け出しループで狙う決定機をつかむ(丁寧にサイドキックで狙い過ぎ、枠を外してしまった)。それでも粘り強くベガルタは戦う。80分には疲労が見えたセレッソ守備陣を突く目的で、武藤に代えて佐々木を投入。これが見事に当たる。富田の好パスを受けた佐々木は右サイド縦突破狙いのフェイントから、中央赤嶺に高精度の低く強いボールを合わせる、これでセレッソDFが赤嶺とウィルソンに引きつけられたところで、赤嶺が右後方から長駆前進してきた梁にラストパス、梁が落ち着いて金鎮鉉を破った。湧き出す速攻が帰ってきたのだ。
終盤、セレッソの無理攻めを冷静にはね返し、タイムアップ。苦しい場面は多かったが、90分間、丁寧な守備を継続、敵に疲れが見えたところで、狙いを定めた逆襲速攻で得点しての勝利。ゲームプラン通り、完璧な勝利だった。
余談。あ、以降は、私はポポビッチ監督の事嫌いなので割り引いて読んでくださいね(この人は、あの見事な戦いを演じた南アフリカでの日本代表を中傷したので、大嫌いなのです)。
野次馬としてはセレッソの監督ポポビッチ氏の采配、言動には多々疑問が残った。
実際、セレッソの攻撃は恐ろしかった。前半、南野の狡猾なクロスからのフォルランの振り向きざまの一発。フォルランがベガルタの浅いラインの裏を突き、関がペナルティエリア外で見事に胸でブロックしたこぼれ球を、柿谷が狙ったシュートは鎌田が見事にカバー。柿谷の突破を武井がたまらずファウル止めたFK、フォルランのバーを叩く優雅なシュート。後半も、序盤に扇谷の低く強いフィードからのフォルランの一撃。酒本の好クロスに南野の飛び込み。柿谷がスワーブして上げたクロスをフォルランがヘッドで狙い関が好セーブで防ぐ(この場面など、守備側から見れば「どうやって防いだらよいのだ!」と嘆きたくなる美しい連係だった)。いずれも、ベガルタが組織的にしっかりと守っているにもかかわらず、柿谷、フォルラン、南野らの個人能力で崩されかけたもの。技巧と判断に優れた選手達の即興による攻撃は、本当に恐ろしかった。
しかし、ポポビッチ氏の采配には疑問が多かった。前半からベガルタが粘り強い組織守備を機能させているにもかかわらず、やり方を変えてこなかった事だ。特に上記した後半立ち上がり無策だったのは不思議だった。さらに交代策も疑問山積。サイドに開かせても機能しないアーリアを右サイドに起用した事そのものが不思議だった。アーリアと言う選手は、他の選手を活かすプレイを得意とはせず、自らが提供された場所で好プレイを展開するのが持ち味、「いかに、柿谷、フォルランに点を取らせるか」と言うテーマのセレッソでの働き場は中々難しいのだが。交代策も不思議、いやらしい持ち出しと菅井に対する忠実なマークで貢献していた南野の交代も、持ち味や使い所がわかりづらいミッチ・ニコルスの投入も謎だった、楽になったベガルタサポータとしては文句を言う筋合いはないけれど。しかし、一番驚いたのは、ベガルタの得点直後に柿谷を外した事、いや正直嬉しかったですけれども。
さらに呆れたのは、試合終了後のインタビュー。「ワールドカップ代表候補選手に集中が欠けていた、自クラブで成果を出しての代表のはず」と、選手批判を行ったのだ。私の見るところ、セレッソの代表候補選手、柿谷、蛍、南野、いずれもよくやっていたと思う。むしろ問題は、彼らを存分に活かせず、我が軍のペースにはまりながら、何の修正もしなかった監督にあったのだが。まあ、いいや。ACL、頑張ってください。
ベガルタは完全に立ち直った。
敵のペースを許す難しい時間帯も、粘り強く我慢できるようになった。今日のベガルタの3ラインは、柿谷と扇原に散々揺さぶられても、冷静さを失わなかった。サッカーは我慢なのだ。
そして、敵の僅かな隙を突いて、的確な逆襲速攻も仕掛けられるようになった。前節、ウィルソン、太田、武藤が得点したが、今節はとうとう大黒柱の梁勇基が美しい得点を決めてくれた。
勝ち点もそこそこ積み上がってきた。無理に勝ち点3を狙いに行き、墓穴を掘る事ももうないだろう。いくら押し込まれても、苦しくても、これからは、「点を取られなければ勝ち点1は獲得できる」と言うスタンスで戦う事ができる。
浅いバックラインと、関の連係も確立されつつある。上記したフォルランが抜け出した場面の関の飛び出しは中々のものだった。フォルランの執拗なシュートも関は冷静に処理してくれた。我々は、小柄だが役に立つゴールキーパを獲得しつつあるのだ。
負傷者多数と言っても、交代策も間口が広い。今日は角田が出場停止だったが、武井のボランチは完全に機能した。赤嶺をベンチに置き体力に配慮しても、その間武藤が相応につなげるようにもなった。終盤、佐々木を投入し決勝点の起点とする事にも成功した。後は、二見、山本、マグリンティ、藤村、そして八反田らを、いかに戦力化するかだ。
次節は王者サンフレッチェをユアテックに迎える。元々相性のあまりよくないサンフレッチェだが、幸い先方はACL遠征直後で疲労しているはず。今日のような粘り強い戦いで、是が非でも勝ち点3を獲得するのだ。
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