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2014年5月11日 (日)

『ルパン三世 カリオストロの城』リマスター(メモ)

劇場公開中。
http://cagliostro-remaster.jp/

ホントにすばらしい修復です。至福の100分でした。

見慣れた方も初見の方も、ぜひ!

以下、走り書きでメモを。


・おそらく4Kの再スキャン。Blu-rayや金曜ロードショーとは別もの

・フィルム傷修復やパラ消し、ガタツキ、フレーム補正はもちろんのこと、あらゆるセル傷、ゴミ、ホコリ、ハレーションを消してあって、度肝をぬかれた。しかもオープニングのオプチカルを通して粒子が荒れてるのまで直してあって、初めて見る映像っぽくなってて感激。
・セルと背景の素材が保存してあってデジタルで再撮影したみたいな印象。よーく知ってるのにまるで違う、「異次元世界のカリ城」という感じ。
・アバンの「ごくろうさん」「ごくろうさま」の食い違いは放置で、「監督 宮崎駿」と出るカットで次元の脚が草のBOOKの手前に来る撮影ミスは修正してあるので「OK、だいたいそういう方針のリマスターですね」と心構えをチューンしながら見たりして(笑)。
・修復効果がもっとも良く分かるのが、不二子とルパンが城内で会うときの鎧の密着マルチ。ここは傷がテカるのが定番なのに、それがないんでビックリ。
・そこまで直してあるんで逆に目立つのが、おんじ……じゃない園丁のヒゲ。特にジェット機喰いのシークエンスで、口パクするたびにヒゲがAセルからBセルになるので、パカるパカる(笑)。
・じゃあ色がアンタッチャブルか、全部セル画どおりというとそんなことはなくて、背景になじむように彩度が調整されていて、従来のHDマスターが「撮影台を見ているようだ」というぐらい質感がぱっきり分かれていたのと段違い。
・特にルパンがクラリスのもとに忍び込む月光シークエンスに感心。これは実は肌色部分がピンク色に塗られていて、フィルム撮影時に微妙にピンクが抜けて月光色になるという設計だが、従来HDマスターは、どピンクで酔っぱらったみたいな顔色になってた。そこは微妙に抑えてあり、良かった。ただ1カットだけピンクのままだったかもしれないが、気のせいかも(笑)。
・じゃあ彩度を全体に抑えてあるかというとそんなこともなくて、特に小林七郎さん&小林プロの背景は実に見事。旧HDマスターは「画用紙に絵の具」という感じだったのが、ちゃんと映像としての背景になっていて、なおかつ空にも薄いグリーンやパープルが混ぜてあるとか、絶妙な配色が分かって感動にうち震える。地下空洞シークエンスのハーモニーも、こんなに色とりどりだったとは。
・音声の「5.1ch化」については、これもオリジナルを損なわない程度の加工で良かった。はっきり音の定位をいじっていると分かりやすいのは、カーチェイスの左右に振るところや、画面手前からフレームインするときにリアから鳴らしているところかな。
・音を足していると分かるのはハンドグレネードが爆発するところの低域(これは5.1ch化の定番の手法)とか水音の拡がりの音とか。おおむねオリジナル効果音をうまく使っていたような。音楽も拡がりすぎない程度のステレオ感で、全体に気づく人だけ気づけばいい的なストイックな方針は好印象。
・前々から「あれでいいのかな?」と思ってた、司祭ルパンの声のエコーが一瞬消える問題にしても、軽くちょっとだけ残響を足して、どっちにも取れるというか、見慣れてる人が違和感抱かない程度に調整してるんで、だいぶ好きな人がデリケートに調整されているのではないかと、ひたすら感服。
・セル傷やホコリなどを修正するかしないかは微妙な問題だが、「全体にクリアにはなっているものの、ツルツルになってるわけでもない」というこのサジ加減は、良かったのではないか。

とまあ、リマスターについてはこんな感じですが。
あらためて映画そのものに没頭できたのに感謝です。いつも困っている3秒後のセリフ予知とかあんまり出てこなくて驚いたんですが、それは脳が「新しいものを見ている!」というモードだったからでしょうね。その一方で、記憶層が「初めて観たころ」が刺激されたのか、「クラリス王女」とかいう字幕を幻視したり、月光がノーマルになってカゲが取り囲むと「水曜ロードショー カリオストロの城」というロゴが勝手にオーバーラップして困りました(笑)。

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