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【社会】

立川断層帯 数百年前に地震か 定説覆す

東京都瑞穂町で見つかった立川断層の断層面(点線)=石山達也助教提供

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 東京都と埼玉県にまたがる立川断層帯で数百年前に地震が起きた可能性の高いことが、東京大地震研究所などの調査で分かった。これまでは過去一万三千年は地震が起きていないと考えられてきた。政府の地震調査委員会は地震がほぼ周期的に起きると考え、次の発生が近づいていると予測していたが、しばらく活動しない可能性も出てきた。 (榊原智康)

 立川断層帯で起こる地震は首都直下地震の想定の一つ。防災面での重要性は高いが、宅地開発が進んでいるため掘削などの調査が難しく、過去の地震活動が詳しく分かっていなかった。東京都瑞穂町の狭山神社の敷地内で昨年十二月、長さ六メートル、深さ二〜三メートルの溝を掘ったところ、はっきりとした断層が見つかった。

 放射性炭素を用いてずれた地層の年代を調べたところ、地震が起きたのは十四〜十五世紀以降との結果が得られた。調査した東大地震研の石山達也助教は「鎌倉から室町時代の『中世』に起こったようだ。活断層としては非常に最近。しばらくは活動しないのではないか」と説明する。

 上下方向よりも水平方向のずれが大きく、「横ずれ断層」の可能性が高いという。この地震のほかに、過去一万年以内に少なくとも一回以上の地震があったこともわかった。

 地震調査委の評価によると立川断層帯ではおよそ一万〜一万五千年の間隔で地震が発生。最近は一万三千年以上も起こっていないため、次の発生が近づいていると考え、危険性の高い活断層に分類されている。今回の調査結果は地震調査委に報告され評価を見直すかどうかの検討材料になる。

 立川断層帯をめぐっては昨年、東大地震研が東京都武蔵村山市で大がかりな掘削調査を実施。いったんは活断層が見つかったと発表したが、後に土木工事の跡と分かり、結局は断層を確認できなかった。

◆精査し最終評価必要

 千葉大の宮内崇裕教授(変動地形学)の話 現場で断層を観察した。立川断層帯でこれほどはっきりした断層面が確認されたのは初めてだろう。前の地震から長い年月がたち、次の地震が切迫していると考えられていた。数百年前に地震があったとすれば、一般的に考え、そうすぐには次の地震は起こらないといえる。ただ、断層帯の北部にある名栗断層の詳しい活動は分かっていない。さらに調査して、断層帯全体で最終的に評価する必要がある。

 <立川断層帯> 東京都青梅市から府中市までの立川断層と、埼玉県飯能市の名栗断層からなる。全体の長さは約33キロ。政府の地震調査委員会の評価では、マグニチュード(M)7・4程度の地震を起こす恐れがあると想定。今後30年以内の地震発生確率を0・5〜2%と推定するが、東日本大震災の影響で発生確率が高まったとされる。

 

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