日本は世界有数の火山国である。そこに原発を抱えるリスクを、改めて熟考すべきときだ。

 九州電力が再稼働をめざす川内(せんだい)原発(鹿児島県)の審査で、周辺火山の噴火の影響がクローズアップされている。

 昨年できた新規制基準に基づき、原子力規制委員会が噴火の影響や対策の有効性を検討している。原発の安全性を火山との関係で本格的にチェックするのは、実はこれが初めてだ。

 福島第一原発の事故で、津波対策の遅れが大きな反省材料になった。津波に限ったことではない。事故の深刻さを踏まえれば、噴火やテロなど従来軽視されてきたリスクも真剣に考えるのは当然である。

 新基準は160キロ以内の火山の検討を求めており、九電は39の火山の影響を評価した。その結果、桜島の火山灰が敷地に最大15センチ積もる想定で対策をとれば十分とした。火山灰の重みで送電線が切れた時に備えて非常用発電機の燃料を備蓄したり、換気設備や非常用発電機のフィルターの目詰まりに掃除や交換で対処したりするという。

 しかし、数ミリの降灰で人や物の移動が難しくなる恐れが指摘される。対策は実際に機能するだろうか。原子炉を冷やす水の取り込みに支障が出れば、たちまち原発は危険な状態に陥る。

 こうした中規模の噴火の影響は、現実的な脅威として十分に検討されなければならない。

 頻度が低い破局的噴火のリスクは、判断がさらに難しい。

 高温の火山噴出物が火山ガスと一体となって広がる火砕流が半径100キロ以上も流れ、破滅的な被害を出す。川内原発の周辺には破局的噴火で山が陥没したカルデラ地形が複数ある。

 九電は、カルデラをまとめて破局的噴火が約6万~9万年間隔で起こっていると評価。「最新の破局的噴火からあまり時間がたっていないので、原発が運用される数十年のうちに次の破局的噴火に見舞われる可能性は十分低い。予兆を継続的に監視すれば大丈夫」と主張する。

 これに対し火山学者らは「こうした噴火間隔の推測には疑問がある」「予兆が観測できるか分からない」と反論する。

 破局的噴火で壊滅的打撃を受けるのは原発だけではない。だが、原発が破壊されれば放射性物質は世界にまき散らされ続ける。川内に限らず、日本の多くの原発に共通する難題だ。

 噴火の影響評価手法は世界的にも確立していない。規制委には火山噴火をめぐる人知の限界も含めて、国民にわかりやすく説明する責任がある。