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「保険金不払いは会社の指示」 東京海上日動社員が提訴

 東京海上日動火災保険で自動車保険金の新たな「不払い」が発覚した問題で、現役社員の男性が元上司や会社に3千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことが分かった。「不払いを会社側から指示され、上司に責任も押しつけられて降格させられた」と主張している。

 訴状などによると、損害保険会社の不払い問題が最初に表面化した2005年、男性は保険金の支払い業務をしていた。当時会社側は男性らに「(追加の)支払い対象事案のリストを絞り込み、極力ゼロにして報告せよ」などと指示したという。不払いが多数あったのに、少なく装うよう強要されたと主張している。

 男性は06年ごろから社内での待遇が悪くなり、10年には降格させられた。納得できないため11年に労働審判を申し立てたところ、「男性が不払い案件の関係書類を捨て、独断で支払い対象外と判断した」とする報告書が上司によってつくられていたことがわかった。上司が不払いを隠した責任を、男性に秘密裏に負わせるものだ、としている。

 東京海上日動では今年2月、最大十数万件にのぼる不払い問題が新たに判明した。永野毅社長は会見で「当時は請求がなければ払わない、という運用で、いわゆる『不払い』にはあたらない」と説明していた。これに対し、訴状では「会社は組織ぐるみで不払いを隠しており、会見内容は虚偽である」と指摘している。

 男性の代理人の菅谷公彦弁護士は「事実関係を明らかにするため、今年3月に提訴に踏み切った」と話している。

 同社は取材に対し「裁判では全面的に争う。現時点ではコメントできない」としている。(杉浦幹治)

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