京都・鴨川:ご用心「トビがお弁当さらいます」
毎日新聞 2014年05月10日 13時43分(最終更新 05月10日 14時10分)
◇日本野鳥の会「子供連れ、特に気を付けて」
ピーヒョロロ−−。京都市中心部を流れる鴨川沿いで、観光客や近隣住民らが飛来するトビから食べ物を奪われる被害が相次いでいる。鴨川はカモやサギなど野鳥が多いことで知られるが、トビによる被害は年間数十件に上るとみられ、京都府や日本野鳥の会京都支部は看板を設置したり、餌やりを注意したりするなど対応に躍起になっている。
トビはタカ科の猛禽(もうきん)類で、カラスなどと違い、あまりゴミをあさったりはせず、狙った対象の背後から飛来して獲物を狩る習性がある。
鴨川周辺を管理する府京都土木事務所によると、主に飛来するのは鴨川下流の五条大橋(下京区)付近から上流(賀茂川)の葵橋(上京区)周辺までで、「トビに弁当を奪われた」「トビの群れに子供が怖がっている」などの報告が10年ほど前から増え始めた。3年前には三条大橋付近のベンチでハンバーガーを食べていた学生の背後からトビが飛来し、振り向いた学生の頬がトビの爪で切られる被害があったほか、ほぼ同じ場所でパンを奪われた幼児が驚き転倒したとの報告もあった。
同事務所から委託を受け、鴨川沿いを毎週パトロールしている同支部によると、ほぼ毎回トビに食べ物を奪われたとの声があり、中村桂子事務局長は「年々被害が増えている印象だ」と話す。府は鴨川沿いの遊歩道などに「トビに注意してください」と呼びかける看板を13カ所に設置している。
トビ被害が目立っている背景にあるのが、野鳥への餌やり。同支部は「パンなどを与える人が絶えず、人を恐れなくなったトビが目に付く食べ物を奪うようになった」と分析する。餌やりをやめるよう巡回指導しているが、禁止する条例などはなく、最近は餌をやる外国人観光客も増え徹底が難しい。
鴨川周辺のトビは下鴨神社(左京区)の糺(ただす)の森をねぐらとし、同支部による昨年12月の調査では約100羽を確認。春から夏にかけての繁殖期は子育てのために山間部に移動するトビは多いが、数十羽は生息しているとみられる。
同支部は「川べりで食事する場合、トビが背後から近づく習性をふまえ、壁や生け垣を背にしたり、多人数の場合はトビに気付きやすいよう円形に向かい合って座ったりするなど注意が必要。小さい子供連れの場合は特に気をつけてほしい」と呼びかけている。【礒野健一】