「不服審査」が明かした小保方氏の研究実態
理研、再調査せずと発表
田中 深一郎
小保方氏の実験ノートに関しても記載がある。同氏は実験ノートの75ページの記述をもとに、「正しい画像の元データが2012年1月24日に取得された」と主張している。これに対し、審査結果によると、75ページには日付がなく、73ページには「6/28」、76ページには「2/29」もしくは「2/19」と記述されていたという。年号の記載はなかったというが、4ページの間に少なくとも6ヶ月が経過していることになる。
収束見えぬ小保方ショック
上記のような小保方氏の研究実態が事実だとすれば、再調査をせずに不正行為を確定した調査委員会の判断も一概に拙速な幕引きとは言い切れない。とはいえ、いずれにせよ小保方氏の個人的不正では収束しそうにないのが今回の問題だ。
審査結果報告では、小保方氏らがネイチャーへの最初の投稿論文が却下された後、2012年7月に米科学誌サイエンスに類似の論文を投稿した際の経緯も明かされた。論文投稿後、著者らのもとにはサイエンスの査読者から、遺伝情報の実験画像の加工について修正を求めるコメントが送られていたという。
少なくとも当時の共著者らは、ネイチャー論文でも同様の「改ざん」が問題になりうることを認識する立場にあったことになる。理研、発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長らが研究チームに加わったのはその後のことだが、いずれにせよ理研の研究推進体制には、単に研究の複雑化や分業化といった理由では片付けらない欠陥があったとみられる。
自身の論文に対する疑義の責任を取って辞任した理研の石井俊輔・前調査委員長を始め、調査に関わる研究者にも過去の画像切り貼りなどが指摘され始めている。小保方問題が浮き彫りにした理研や研究業界の課題は、その全体像をまだ現していないのかも知れない。