「不服審査」が明かした小保方氏の研究実態

理研、再調査せずと発表

田中 深一郎

 理化学研究所は8日、STAP細胞の論文疑義を巡って研究ユニットリーダーの小保方晴子氏から受けていた不服申し立てに関し、再調査をしないと発表した。同日付で小保方氏らの処分を検討する懲戒委員会を設置し、英科学誌ネイチャーに掲載した論文の取り下げを勧告した。

 理研は現在、STAP細胞の有無について科学的な検証を開始している。だが、その結果を待つことなく、小保方氏の不正行為を認定した3月末の最終調査報告が確定することになる。調査委員会は、小保方氏の不服申し立てに対して逐一反論する詳細な審査結果報告を用意し、「再調査は不要」と断じた。

 「不服申し立てがなされた以上、ご本人(小保方氏)がわかるように細かく書くべきだと考えた」。理研の渡部惇・調査委員長は8日の記者会見でこう説明した。

 今回、調査委員会が公表した審査結果は21ページと最終調査報告の2倍の分量があり、ヒアリングに対する小保方氏の回答や、同氏の研究の状況について踏み込んで記載した。その内容からは、小保方氏の研究の実態と、調査委員に対する苦しい釈明の様子が伝わってくる。

小保方氏の不服申し立てを退けた理研の渡部惇・調査委員長は「検証実験を待つまでもない」と話した

「画像が見つからない」 

 例えば、実験条件が全く異なる博士論文の画像がネイチャー論文に使われていたと指摘される点。最終報告では「捏造」と認定されたが、小保方氏は「単純ミスであり、真正な画像データが存在する」と反論していた。

 小保方氏は調査委員会に対し、「2月中旬に1枚1枚写真をチェックしていたら、(論文に使用した写真が)近々のデータのどこを見ても見つからず、これはおかしいということに気がついた。しかも、それがアセンブルした(組み合わせた)状態だったのでなかなか見つからなかった。学生時代のデータまでさかのぼって探したら、博士課程の時の実験のフォルダーでその写真が見つかった。いつ間違えたかも分からない」と話したという。

 さらに、「パワーポイントで上書きしてFigure(図)を作り続けていた」「3枚か6枚か分からないが、まとまった写真をアセンブルした状態でネイチャー誌のFigureも作ったと思う」「論文投稿時にはアセンブルした状態のまま使用し、その後、画像の入れ替えをした」との説明もあった。調査委員会は、「(こうした状況では)誤ったデータを使用する恐れがあることは当然想定される。確認をしないのであれば悪意がある」と指摘した。

著者プロフィール

田中 深一郎
田中 深一郎
日経ビジネス記者
日経新聞科学技術部、証券部を経て、2012年4月より日経ビジネス記者。
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