連結納税と自社株買いを組み合わせたスキームで課税逃れをしたとして、東京国税局から約3995億円の申告漏れを指摘された日本IBMの持ち株会社が、課税処分の取り消しを求めた訴訟の判決が9日、東京地裁であった。八木一洋裁判長は「税逃れの意図があったとは認められない」としてIBM側の主張を認め、処分を取り消した。
判決が確定すれば、納め過ぎたことになる法人税約1197億円が還付される。敗訴した国側は「控訴するか検討中」としている。
問題となったのは、自社株売買に伴って一定の税務上の損失を計上する制度と、連結納税制度を組み合わせた取引。
日本IBMの持ち株会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(東京・中央)は、米IBMから購入した日本IBM株(非上場株)の一部を日本IBMに売却し、その際に計約3995億円の巨額損失を計上。その上で2008年から連結納税制度を導入し、日本IBMの黒字とエイ・ピー社の赤字を相殺した。
国側は「エイ・ピー社はペーパーカンパニーで、株売買の条件も経済合理性がない」などとして、こうした取引が税逃れ目的だったと主張。IBM側は「法的に問題ない」と主張していた。
八木裁判長は判決理由で「エイ・ピー社はグループ内で資金を柔軟に移動させるなど、持ち株会社としての一定の機能があった」として、ペーパーカンパニーだったとの国側主張を退けた。
また株の売買条件などについても「不合理、不自然とは言えず、事業目的のない行為をしたとは認められない」と判断。こうした手法を明確に禁じた当時の法規定も見当たらないとして「制度を乱用して税逃れを図ったとまではいえない」と結論付けた。
日本IBMの話 主張が認められた。IBMは納税者としての責務を真剣に受け止めており、ビジネスを行う全ての国で引き続き納税義務を果たしていく。
東京国税局の話 主張が認められなかったのは遺憾。関係機関と控訴するか検討中で、これ以上のコメントは差し控える。
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