福祉系の人が読んでおくといい医療周りの本6冊

 そろそろ新卒で入った人も週末に読書するくらいの余裕が出てくる頃かなあということで、福祉系の人が読んでおくといい、または読まなくてもいいから手元においておくといい医療周りの本をまとめます。読む時間が無ければ、病気の人と関わったときにその病気の項目についてだけ読むというのでもいいと思います。

 いつもゲームのことしか書かないくせにお前誰なんだよという感じですが、福祉系の畑の隅っこに足を突っ込んで7年目、うち医療関係法令のあたりに4年目の社畜ですよ、とだけ。

 テーマは2つです。

1 病気のこと
2 制度のこと

1 病気のこと

 病気のことをきちんと知ることはとても大切です。医師の説明がわからない、患者さんの飲んでいる薬がよく分からない、では困ってしまいますね。困るんですよ。わたしは困りました。
 病気や薬が普段の生活にどのように影響するのか。または、普段の生活の中でどのようなことが目印、徴候なのか。知っておくことはとても大切なことです。

 ということで病気に関する本を「仕組みから書いてある」「読みやすい」を目安に選んだらメディカルサイエンスシリーズの回し者みたいになってしまったのですが、次の3冊を手元に持っておくといいです。
 メディカルサイエンスシリーズは、医療系学生だけではなく、一般の人にも向けて書いているそうなので、言葉が平易できちんと一から説明してくれているため、理解がしやすいです。図解シリーズなので、ビジュアルで考えられるのもよいです。

 注意したいのが、たまに妙に病気について知っていると先生に噛み付く人もいるのですけれども、本で知った知識ごときで何年も勉強して修行してきた医師に張り合おうとしないようにしたいところですね。他のところでいくらでも自分の強みを活かせるところはあると思いますよ、それぞれの職種ごとに。

◇よくわかる病理学の基本としくみ

図解入門 よくわかる病理学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ)

図解入門 よくわかる病理学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ)

 前書きに「解剖学や組織学の知識が無くても大丈夫です」と書いてありますが、その通りでした。1章で「病理学とは何か」2章で「総論」3章で「なぜ病気にかかるのか」ときて、4章以降で個別の症状についての解説になります。

 4章以降は病気を大きく分類して、それぞれの分類について「基礎知識」「仕組み」を説明しながら個別の疾患についても言及しています。
 たとえば、4章は次のような構成になっています。カッコ内は言及されている個別の疾患名等です。フルカラーで実際の写真も掲載されており、とてもわかりやすいです。

chapter 4 遺伝子異常と発生発達異常
4-1 遺伝子の基礎知識を整理しよう
4-2 遺伝子異常で病気になるしくみ(フェニルケトン尿症・ファブリー病)
4-3 染色体異常で病気になるしくみ(ダウン症候群)
4-4 先天性疾患と奇形はどこが違う?(先天性風疹症候群・ハンチントン病
4-5 心奇形あれこれ(心室中隔欠損症・ファロー四徴症)

 4章以降の項目は次のとおりです。

chapter4 遺伝子異常と発生発達異常
chapter5 細胞の障害と修復のしくみ
chapter6 物質の処理がうまくいかない「代謝異常」
chapter7 血の巡りが悪くなる「循環障害」
chapter8 ほとんどの病気は「炎症」だ
chapter9 病理診断の主な対称は「腫瘍」

 
 

◇よくわかる精神医学の基本としくみ

 前書きに「chapter1,2はやや難解ですので、chapter 1の最初の4ページとchapter 2の最初の1ページだけ読まれて、残りは飛ばしていただいて結構です」と書いてありますが、1章は脳と身体の話、2章は医学的検査の話です。ここは、前書きにも書いてある通り、飛ばしても、それほど問題なく残りの章を読めると思います。

 4章で「意識と意識障害」について書かれたあと、5章以降は個別の疾患についての仕組みや症状の解説です。
 各章とも、それぞれの疾患の中でも小さく分類し、仕組みや症状について丁寧に解説してあるため、大変役に立つと思います。
 また、今回紹介しているメディカルサイエンスシリーズの中では、一番平易で読みやすいです。

 項目は次の通りです。

chapter5 認知症
chapter6 てんかん
chapter7 統合失調症
chapter8 気分障害
chapter9 神経症性障害
chapter10 睡眠障害

 

◇よくわかる薬理学の基本としくみ

よくわかる薬理学の基本としくみ (図解入門 メディカルサイエンスシリーズ)

よくわかる薬理学の基本としくみ (図解入門 メディカルサイエンスシリーズ)

 薬が身体に作用する仕組みについて書いてある本です。1章〜4章までは総論で、5章からは分類ごとの薬の作用について記載されています。
 各章とも、そもそもどういう仕組みで病気になっているのかという説明があってからそれを薬でどのように対応するかという話をするので、ただ漫然と薬の知識を詰め込むよりも深い理解ができます。ただちょっと難しいかもしれません。何度も読めば理解できるかもしれないですが、高校生物や基礎的な教養があるとないとでは結構違うかもしれないです。
 それでも手元において、該当する方と出会ったときに読むというのでも、とても意味があると思うので揃えておきたいです。

 尚、前書きに「厳重な医師の管理かでしか処方されない抗腫瘍薬と抗精神病薬は扱わず」と記載されているように、それらの薬については記載がありません(向精神薬はあります)。

 5章以降の項目は次の通りです。カッコ内は各章の副題です。

chapter5 くすりは内蔵に効く!(自律神経とくすり)
chapter6 心臓を規則正しく力強く(心臓に作用するくすり)
chapter7 血圧を下げましょう(血圧とくすり)
chapter8 お腹の調子を整える(消化器系とくすり)
chapter9 痛みを癒し、熱を下げる(炎症反応とくすり)
chapter10 抗生物質とは?(病原体とくすり)
chapter11 おしっこを出しましょう(おしっことくすり)
chapter12 糖尿病と戦う(糖尿病薬、高脂血症治療薬)
chapter13 咳と痰を抑える(呼吸器とくすり)
chapter14 気分を直しよく眠る(脳とくすり)
chapter15 痛みを取り除く(麻酔薬)
chapter16 くすり屋さんで買えるくすりの話

 

制度のこと

 医療制度のことを知っておくことはとても重要です。
 大きく社会保障全体を知ることと、個別に注意したいポイントを抑えるという2点から次の3冊のラインナップになりました。
 「1 病気のこと」では参考に各書籍の章立てを記載しましたが、制度のことについてはそこはポイントではないと思ったので省きます。

◇はじめての社会保障

はじめての社会保障 第11版 -- 福祉を学ぶ人へ (有斐閣アルマ)

はじめての社会保障 第11版 -- 福祉を学ぶ人へ (有斐閣アルマ)

 福祉系の大学だともしかしたら教科書として使っているところがあるかもしれません。
 平易な語りかけ口調で、日本の社会保障制度について歴史から説明してくれている本です。最初語りかけ口調がイラっときますが、入門書としては良書です。
 現在の制度が「なぜこの形になっているのか」を知ることは、「あるべき支援」(個別のケース云々ではなく、国として目指している方向のこと)を知る上で必ず必要です。「今どうしてこういう不自由な形になってるの」とか「こうした方がいいじゃん」っていう思いがある人にこそ一読して歴史を知ってほしいところです。

 内容としては医療制度だけではないのですが、国民健康保険や労災等のことについて記載されてますので、医療周りの本の紹介に入れます。
 とくに保険医療制度や診療報酬のことについてはきちんと抑えておきたいところです。

図解入門ビジネス 最新医療制度の基本と仕組みがよーくわかる本

 表紙がダサいですが、中身は悪くないです。
 保健医療制度の歴史と概要、医療関係法令についてのざっくりとした説明、診療報酬の仕組みなどは一読しておくといいです。とくに医療関係法令を知らないと適切な支援ができなかったりしますし、診療報酬の仕組みを知らないことは各所でのトラブルの原因になります。

◇医師のための保険診療入門

医師のための保険診療入門〈2014〉

医師のための保険診療入門〈2014〉

 病棟のレジデント向けに書かれた保険診療の解説書です。
 福祉系の仕事をしていると、医師や病院の事務方の人と話すこともあると思いますが、そのときどういう視点で「診療報酬」というものを見ているかを知っている必要があります。

 この本は、医師が保険診療上注意するべき点などが書かれていますが、それはつまり病院として「必ず抑えておきたい部分」ということです。
 レセプト記載のことであれ、処置のことであれ、入院日数のことであれ、「病院の事務方から見て医師が知っておくべきこと」というのは、「患者に要求される部分があるかもしれないこと」であったりします。

 ということで、読むといいです。