ドイツ:脱原発…進む石炭依存 電気代1.7倍に
毎日新聞 2014年05月10日 08時49分
◇閣議決定から3年 再生エネ普及、安定送電に影
2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、ドイツが22年までに国内17基の全原発を順次停止する「脱原発」を閣議決定してから、今年6月で3年になる。風力や太陽光発電など再生可能エネルギーの割合は順調に伸びているが、原発停止に伴う電力の供給源確保には不安も残る。温室効果ガスを排出する石炭や褐炭(水分や不純物が多く低品質の石炭)への依存度はむしろ高まっており、電力供給の不安定化など多くの課題も表面化している。
スキー場のような巨大な斜面が視界の果てまで広がる東部ウェルツォウの褐炭露天掘り採掘場。気温4度の早春の寒さが、黒い大地の荒涼感を際立たせる。整地作業を行う重機の横では火が燃やされ、作業員が暖を取っていた。
炭田は旧東独時代の1966年に最初の試掘が行われ、72年に商業採掘が始まった。年間採掘量は2000万トン。採掘場を運営する電力大手バッテンファル社事業所委員会代表のウィルフリート・シュレック氏(58)は「わが社の生産量は90年代前半の水準まで戻った。原発に代わるエネルギー源として、褐炭は最も魅力的になっている」と話す。
ドイツは2013年、総発電量のほぼ4分の1に当たる23.9%を再生エネでまかなった。だが、再生エネは気象条件に左右されやすいため、安定確保が見込める石炭・褐炭への依存も進む。13年の石炭・褐炭の割合は45.2%と3年連続で上昇。褐炭のみを使った電力生産量も13年は1620億キロワット時に上り、91年以来最大となった。
◇削減目標黄信号
だが、石炭・褐炭の活用が進めば、温室効果ガスを90年比で2020年までに40%削減するとの政府目標に黄信号がともる。野党・緑の党や環境団体は石炭・褐炭の削減を求めるが、「45%もの電源を放棄できない。むしろもっと活用すべきだ」(欧州連合エネルギー担当のエッティンガー欧州委員)との意見も根強い。
加えて、天然ガスに頼れない事情も浮上している。ドイツはガス輸入の約4割をロシアに依存するが、ウクライナ危機の影響で今後は対露依存度を下げる方針。このため、石炭・褐炭は「消せない選択肢」(独商工会議所幹部)なのだ。
ドイツの火力発電所は現在、温室効果ガスの排出を抑制する最新技術の導入などに取り組むが、政府は石炭・褐炭を「当面は不可欠」(与党の連立協定書)と位置付けている。